X-48話 目星の場所

 いつもと変わらない朝が俺とコルルを迎えくれていた。集落から命からがら逃げ延びた人たちが協力して作ってくれる簡素ではあるが朝食にありつく。


食材なども全て森の中から調達したもので、芳醇な味の深みなどは出るはずがないのだが、彼らが料理に込めてくれる感情の味が舌を通じて脳を震わせる。


 相変わらず元気な子供たちが朝食の時も、誰がコルルの膝下を占有するのかを競ってご飯なんてそっちのけで争っていた。皆んな顔は真剣だ。本気でそこを独り占めしようと躍起になっている。俺はそれを横目で見ながら、さっさとご飯を胃の中に落とし込むと、調理をしてくれた人たちに礼を言ってから颯爽とテントの中に戻った。


コルルに一言かけようかとも思ったのだが、忙しそうにしているのでそれはやめることにした。だって、これが最後の子供たちと戯れる1日だと知ったら彼女はより悲しむことになるだろうから。


 正直な話をすれば、もっと詳しくカーブス医師の話を聞きたかったが、それはユウシから止められていた。その人の名前を出せば、自分以上に敵対視される可能性もある上に、命の保証ができないからだと。


どうやら、彼は彼なりに自分に実験を施した博士の命を奪った人を探していたみたいで、その正体がまだつかめていない事が気にかかっているらしい。もし、俺が尋ねた人が実験に携わっていた人であったら、その人から命を狙われるかもしれないと。


 そんなこともあって、彼に関する情報は特に仕入れることができずにいた。しかし、ユウシはを禁止してはいなかった。つまり、俺が誰の目にも触れることなくこの集落に訪れた時一番燃焼が激しかった医療場。


もしかしたら、あそこにいけば何かしらの彼に関する手がかりが見つかるのではないのだろうかと、少し前から目星をつけていた。とは言っても、確証はないので今回も一人で行動するのだが。


もしものためにを考えて、俺はユウシ達が眠っている間にここと医療場を行き来する道を何度も実際に往復することで頭と身体両方に叩き込んでいた。実際、この二つの場所は距離的にそこまで離れていない。お互い徒歩5分圏内といったところだ。


「でも、やっぱり黙って行動するのはまたコルルに心配をかけるよな〜」


 俺はテントから足を踏み出したところでそう考え直すと、そこら辺に落ちていた丈夫そうな葉を一枚手に取り、行き先だけ記すとそのまま歩みを進めていった。

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