裁判官を目指していた大学生が異世界へ転生した。ごくごく平凡な田舎民の息子として育った彼だったが、しかし。家業の手伝いとバイトと魔法訓練をこなしながらこの世界の法律知識を学び続けて——ついに異世界の裁判官となる!
というわけで、こちらは異世界ジャンルの新たな切り口、異世界裁判ものとなります。
ネタの斬新さに加え、それを最大限に生かす世界観の細密さと物語の見せ方に目を奪われました! 魔法があり、魔物がいて、法整備が行き届いていない世界。その様がちょっとした説明や会話から透かし見えるのですよね。しかも色濃く。
そんな理不尽だらけの状況で、主人公は裁判のための証拠集めをして推察、真実をひとつひとつ確定していきます。この刑事物さながらに「詰めていく」展開あってこそ、関わる者たちのドラマは風情を醸し出しますし、明らかとされる真実は輝いて、掲げられる法の正義を一層鮮やかに浮き彫るのです。
けして甘くはない読後感まで含めて、ぜひ味わっていただきたい一作です。
(「創意と工夫」4選/文=高橋 剛)