第342話 雪解けシーズン到来
目のやり場に困ることがなくなったので、遠慮なくお風呂場でファビエンヌとじゃれ合うことができるようになった。
パチャパチャとお湯をかけ合って遊んでいるとすぐにお風呂の終了時間になった。
水着を着ているので、一緒にお風呂から上がっても大丈夫。これは思ったよりも良いな。どうしてもっと早く気がつかなかったんだ。
「楽しかったですわ。また一緒にお風呂に入りましょうね」
「そうだね。今度はロザリアとミラも誘ってみようかな」
ついたて越しに話す。このついたては正式な物として設置するようにお父様にお願いしよう。何なら脱衣所を二つに区切っても良いかも知れない。
サロンに行くと、そこではお母様が待っていた。
ネロから冷たい物を受け取り、水着の感想を聞かせる。
「お母様、水着は予定通りの性能を発揮しましたよ。安心して身につけてもらっても大丈夫です」
「そうなのね。着心地はどうだったのかしら?」
「最初はちょっとだけ違和感がありますが、すぐに慣れますわ。それに胸がピッタリと固定されているので、安心して動けます」
ファビエンヌが力を込めてそう付け加えた。お湯をかけ合ったときには二人ではしゃいだもんね。胸はブルンブルン揺れていたけど、ポロリとなる心配はなかった。その点でも、ファビエンヌは水着のことを評価しているようである。
「それなら安心ね~。水着を着てお風呂に入るのが楽しみだわ」
ルンルン気分のお母様に挨拶をして、今度はダニエラお義姉様がいるサロンへと向かった。そこには都合良くミーカお義姉様の姿もあった。
「ダニエラお義姉様、ミーカお義姉様、お話があるのですが、時間はよろしいですか?」
「何かしら?」
二人にかくかくしかじかと話すと、すぐに食いついてくれた。ファビエンヌからも追加の情報を聞いている。そして最終的には三人で仲良く話していた。それぞれ血はつながっていないが、立派な三姉妹である。
「お義姉様たちにも水着を作りたいと思っているので、あとでで良いので、体の寸法を教えてもらえませんか?」
「もちろん良いわよ。ここで測る?」
「いや、私が測るのではなくて、使用人に測ってもらいたいのですが」
それを聞いたダニエラお義姉様がなぜか膨らんでいる。なぜと思っていると、ミーカお義姉様も膨れていた。どうしてこうなった。なぜ俺に測らせようとするのか。
「さすがに私がお義姉様たちを測定すると、お兄様たちに怒られると思いますよ」
「そうかしら? それならアレクに測ってもらおうかな」
「それじゃ私はカイン君に……」
ごめんね、アレックスお兄様、カインお兄様。俺はちゃんと使用人に測ってもらうようにって言ったからね。
ネロが俺の部屋から持って来てくれたデザイン画を元に、どの水着が良いかを聞いた。二人はそろってビキニタイプの水着を選んだ。
これは……胸元が大変なことになりそうだぞ。
「分かりました。寸法が届き次第、制作に取りかかります」
苦笑いをしながらその場を去った。これからロザリアと使用人たちの水着を作らないといけない。忙しいのだ。
部屋に戻って水着を作っていると、さっそくお義姉様たちの寸法が届けられた。結果、「お義姉様たちもヤバイ」ということが判明した。分かっていたけど。
これはもう、ハイネ辺境伯家のお家芸だな。胸の大きい子が好き。間違いない。
それから数日後、家族全員分の水着が完成した。もちろん、お風呂に入るときに補佐する使用人たちの水着も作ってある。
こちらは共有できるように、伸縮性の高い糸を使って、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズで作った。
ロザリアと男性陣は喜んでくれた。もしかすると、「余計なことしやがって」と怒られるかなと思ったが、そんなことはなかった。みんな目のやり場に困っていたようだ。
じっくり見るわけにもいかず、かと言って、無視するわけにもいかず。俺と同じく板挟みになっていたようである。
お風呂に入るときに水着を着用するようになってから、家族と一緒にお風呂に入る機会が格段に増えた。ダニエラお義姉様もニッコリである。もちろん、お父様とお母様とも一緒にお風呂に入るようになった。
ファビエンヌもハイネ辺境伯家の人たちとつながりが強くなったし、一緒にお風呂に入るのは絆を強くするのに大きな役割を果たすことになった。
一般大衆向けには売り出さないが、貴族向けに水着を売り出すことを検討中だ。良い感じのクモの糸さえ見つかれば大丈夫だろう。
雪解けシーズンがやって来た。
それまでの間は魔法薬を作ったり、文具を作ったり、魔道具を作ったりと忙しく過ごした。
素材も底が尽きそうだったので、これで一安心できそうだ。
職人たちの腕に問題なし。春になれば、さらに追加で何人か人を増やすことを計画しているようだ。雪が溶ければ、商人たちの動きがさらに活発になると思っている。
それはアレックスお兄様たちも同じようで、冬の間の売れ行きを見ながら頭を悩ませているようだった。
「カインお兄様とミーカお義姉様は学園に戻るのですよね?」
「そうなるな」
「寂しくなります。そうだ! ユリウスちゃんも一緒に戻るのはどうかしら?」
「いや、さすがにそれは無理があるのでは?」
目を輝かせてこちらを見てきたミーカお義姉様の耳と尻尾が垂れ下がったように見えた。まさか本気でそんなこと思ってないよね? カインお兄様の方を見ると、ちょっとガッカリしていた。おい。
お父様とお母様は思わず苦笑いだ。だがしかし、ガッカリしているのはカインお兄様とミーカお義姉様だけではなかった。ダニエラお義姉様もガッカリとしているようだった。
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