第104話 魔女の困惑
「な、何が起きてるの!?」
「師匠!?これってなんですか!?」
「くっ!十三!母上を守りなさい!」
「わかっている!ティアも近くに!!」
「光!俺から離れるな!!」
突然、魔女達の拠点である異界の周囲に
困惑する5人。
特に、魔女はこれまでこのような事態になった事が無かった為、困惑度合いは大きかった。
「(何!?今までこんな事は無かったのに・・・まさか、管理者が介入したのかしら!?でも、『あの方』からは何も・・・)」
魔女が焦りつつも思考していると、その空間に声が響き渡った。
その声は、若い男の声のように聞こえた。
ーーーーーマリア、聞こえているか?ーーーーー
「何この声!?」
「母上!?」
この声、これは魔女に協力する『あの方』と呼ばれる存在だった。
「あなた達!黙ってなさい!!聞こえていますわよ!?これは一体何が!?」
ーーーーーわからない。突然、その空間がハックされた!ーーーーー
ーーーーー何か大きな力が干渉したようだ!管理者ではない!ーーーーー
ーーーーー監視している管理者に動きは無い!原因不明だ!!ーーーーー
その焦る声に魔女は驚愕する。
「(管理者では無いですって!?にも関わらず干渉する力・・・まさかイレギュラーにこの場所がバレたの!?不味い!!)」
魔女は焦りを押さえつつ、それでも思考を回す。
その表情は、普段の余裕のある表情とはかけ離れたものだった。
「ケントゥム様!身を隠して下さいまし!イレギュラーにこの異界が把握された可能性があります!!わたくし達は現界に移動します!わたくしからの連絡をお待ち下さい!!」
ーーーーーわかった。ならばマリアよ。予定通りにするのだーーーーー
ーーーーーイレギュラーを排除してくれーーーーー
「ええ、ええ!わかっておりますとも!作戦通りに致します!!ご無事で!!」
ーーーーー頼むーーーーー
その声を最後に男の声は消えた。
魔女は急いで指示を出す。
「あなた達!聞いていたわね!?すぐに現界に移動するわよ!くっ!もう少し光ちゃん達の仕上げには時間がかかったというのに!!」
魔女は爪を噛みながらも移動の術式を構築する。
その間にも、空間はどんどんひび割れていく。
「(・・・急がなければ!もし、空間崩壊に巻き込まれたら、良くてどことも知らない世界に飛ばされ、悪ければ一生空間の隙間を漂うことになる!焦るな!焦るなわたくし!)」
既に、自分たちがいる場所の床以外は崩れ落ち、虚無が広がっていた。
そして、床にまで罅が入った時、魔女の移動術式が完成し、間一髪で現界に移動できた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
目標物を大まかにしか設定せずに移動したため、現在の場所はわからない。
どこかの山頂のようだ。
だが、遠目に見える建造物等で、日本である事は間違い無さそうだった。
「おのれ・・・イレギュラーめ・・・よくもこのわたくしにこのような無様な真似をさらさせたな・・・」
魔女は悔しげに表情を
数分そうしていたが、ふと冷静に考えた。
「待って・・・イレギュラーと決めつけたけれど・・・絶対にそうとは言えないわね・・・極めて可能性が高いというだけで・・・それに、イレギュラーであれば、単独で異界に乗り込んできても殲滅出来る力がある筈・・・であれば違う?でも・・・」
魔女は思考を回し始めた。
しかし、どれだけ考えても答えは出ない。
ティア、光、渋谷、充も魔女の方針を待つ。
「・・・取り敢えず、どれだけ考えても情報は少なすぎるわね。わたくし達に出来ることから始めましょう。」
表情をいつもの様に戻し、その場の全員を見回す。
「すこし早まったけれど、予定通りまずはエデンを潰しましょう。これよりエデンを襲撃するわ。準備はいいかしら?」
他の四人は頷いた。
「(・・・イレギュラーの危険性は変わらないけれど、こちらには対イレギュラー用の策もある。最悪わたくしだけでも逃げ切ればいいだけ・・・奴らは光ちゃん達の回収を優先する筈だし・・・勝算はまだまだこちらが上よ。その為にティアちゃんと『剣豪』ちゃんをこちら側に引きずり込んだのだから・・・)」
魔女はブツブツ言いながらそれでも思考を止めない。
それは、予定外の事が起きた事による焦りの為だった。
「(・・・出来れば今回の作戦を見合わせたいところではあるけれど・・・異界崩壊の原因が分からない以上、行動はスピーディに行かなければ後手に回ってしまう。もし、今回の件でイレギュラーが関係無かった場合、相手はそれに類する戦力を持っている事になる・・・早めに潰さなければ、手に負えなくなる。やはりここは襲撃の一手が最善ね。)」
不安を押し殺して前を向く魔女。
その行動が吉と出るのか凶と出るのか・・・今はまだわからない。
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これで第七章本編は終了、閑話を2つ挟んで第八章となります。
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