第81話 学校での光の違和感

 今日は金曜日である。

 現在は昼時、授業後には任務とあり、健流はなんとなく気が高ぶっていた。


「さぁ〜!ご飯よご飯!!」


 別のクラスから灯里が来る。

 健流や姫乃、光や充は既に健流達の席付近に机を動かし集まっている。

 健流はなんとなく光を見る。

 光は笑顔で姫乃や灯里と話をしていた。


「(・・・姫乃達が言うほどおかしいようには見えねぇが・・・)」


 そんな風に健流が思っていると、充が顔を寄せてきた。

 充は小声で話しかけてくる。


「なぁ・・・最近、光おかしくねぇか?なんとなくピリピリしてるっていうか・・・」

「・・・充もそう思うのか?俺はそこまで気付けないんだが、姫乃や灯里もそう言ってるんだよな・・・」

「如月さん達もか。なんだろうな。旅行で何かあったのか?」

「いや・・・特には無かった筈、なんだがなぁ・・・」

「・・・なんか気づいた事あったら教えてくれ。フォローしてやる。」

「おう。俺も気づいた事があったら教えるよ。勿論力にもなる。」

「ああ。」

「男二人で何コソコソしてるの?」


 二人で小声で話していると、光が二人に気づいてそう話しかけてきた。

 健流は内心焦ったが、充が、


「いや、三人とも仲が良いなって思ってな!」

「(!ナイス充!!)ああ、そうそう!本当にな!!」


 充は上手くフォローした、少なくとも健流にはそう思えた。

 しかし、光は一瞬顔が強張った。

 だが、それもすぐに元に戻った。


「それはそうよ。だって友達だもん!」


 光はそう答えた。

 既に、違和感は消えている。

 だが、正面からそれを見た健流も流石におかしい事に気がつく。


「(ん?なんだ?何かあるのか?そんな感じは見えなかったが・・・)」


 どうも、姫乃や灯里、充が言うように、どうも光の様子がおかしいようだ。

 

「(何か困っているなら力になってやりてぇが・・・。)」


 すぐに理由を聞き出せそうなら対応しただろうが、今日は放課後に任務もある。

 

「(とりあえず今日は放課後に任務もあるし、明日・・・もしくは明後日かな。もう少ししたら夏休みにも入るし、みんなで遊びにでも行けば、なんとかなるだろう。)」


 後々、健流は後悔する事になる。

 何故、この時にしっかりと話し合わなかったのかと。

 異変を察知した際に放置してしまったのかと。

 

 なぜなら、この日をさかいに変化が出てしまうのだ。

 好ましくない変化が。




 放課後。

 光は自宅に帰宅中である。


「(良かった・・・今日も普通に出来た・・・)」


 光は安堵していた。

 最近、日に日に姫乃や灯里と話をするのに痛みを伴うようになっていた。

 何より、観察していて思ったことは、やはり健流達三人には何か大きな繋がりがあるように感じられたのだ。

 そして、それが絆になっている事も。


 その絆を感じれば感じるほどに辛くなる。

 そんな風にトボトボと歩いていると、


 prrrrrrrrrrr!


 光の電話が鳴る。

 表示されているのは「お姉さん」となっている。

 光の顔が笑顔になる。


 光の感情を全て肯定してくれるこのお姉さん。 

 今の光にとっては心の拠り所になりつつあった。


 しかし、光は気づいていない。

 それほどの相手にも関わらず、何故未だに名前すら知らないのかを。

 知らないことに違和感を覚えていない事が、どれだけ不自然なのかを。


「はい!光です!!」

『あら、元気ね光ちゃん。今日は予定通りで大丈夫かしら?』

「はい。帰ったら電車に乗って待ち合わせ場所に向かいます。ところで、今日は何を見せてくれるんです?」

『そうねぇ・・・サプライズって事で、内緒にしておくわね。でも、きっと気にいるわよ?』

「そうですか・・・わかりました!!」

『うふふ・・・気をつけて来てね?』

「はい!」


 通話を終える光。

 

「(何をみせてくれるのかな?楽しみだなぁ〜!!)」


 光の足取りは軽くなった。

 急いで自宅に向かい、待ち合わせ場所に向かう。 


 この先目撃すること、それは光の人生をガラっと変えることになるのを知らずに・・・

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