第67話 その後の顛末

 週末だった事もあり、翌日は日曜日。

 しかし、三人は本部に顔を出す。


 昨日はあの後、簡単な報告をして、すぐに自宅に帰ったが、今日はその詳細が語られる事になっていた。


 本部に着き、アンジェリカの執務室に向かう。

 部屋の中には、今日はアンジェリカとクリミアだけだった。


 まずは、クリミアから顛末が語られた。


 それは、


・ 前田については、事が事だけに、幽閉されており、いずれ記憶を奪われ、異能を使えなくしてから外に出される事になること。

・ 前田の精神はかなり不安定になっており、現在はガタガタと震えるのみで、まともに話は出来ないこと。

・ 人事の見直しがなされ、今後の押収品の管理はより厳しくされること。

・ 姫乃の仇の一人である『硬化』のベンジャミンは、尋問後幽閉されること。


というものだった。


 三人に異論は無かった。

 既に、姫乃は仇討ちの呪縛からは解放されており、それを聞いてもなんとも思わなくなっていた。


 もっとも、前田の措置と、ベンジャミンの措置は表向きそうなっているというだけだ。

 実際には、尋問後に消される事になる。

 本当の事を言わないのは、未成年である3人を気遣っての事だった。


 もっとも、姫乃は薄々感づいている。

 世の中、綺麗事だけでは無いのだ。


 そうして、今度は3人の方の詳細が語られた。

 そこで、問題になったのは・・・


「赤いオーラと大和くんの精神の変質・・・か。」


 アンジェリカがそう呟く。

 

「聞こえたんだ・・・殺せ、滅ぼせってな・・・なぁ?俺はこのままエデンで戦って良いのか?意識が無かったとはいえ、人殺しまでしちまったし・・・」


 そうアンジェリカに問いかける健流。

 その表情は苦渋に満ちたものだった。


 そんな健流の両肩に手が乗せられる。

 姫乃と灯里だ。


「大丈夫よ健流。私だって綺麗な手じゃ無いし、何かあったら私が止めてあげるから。」

「健流、それはあたしも同じよ。そんな顔しないでよ。」

「・・・すまん。ありがとう二人共。」


 そんな姫乃と灯里に苦笑する健流。

 そしてアンジェリカも微笑み、


「二人の言う通りだ。君が気にする必要は無い。彼らは人の命なんてなんとも思っていない無頼漢の集まりなんだ。君が手を下さなければ、もっと多くの命が失われていた可能性が高い。だから、そう気に病まないでほしい。もし、どうしても気になるなら、それ以上の命を助けられるようにすればいいさ。それが贖罪となる筈だ。」


そう言った。


「・・・ありがとう、ございます。」


 健流は目を瞑ってそう言った。


「にしても、赤いオーラと声・・・か・・・こちらでも調べておくよ。」

「お願いします。」


 アンジェリカの言葉に頭を下げる健流。


 そうして、話は突然の乱入者についてとなった。


「報告した通り、助けてくれたのは廻里桜花っていう人だ。名前に覚えはあるか?姫乃に確認したけど、エデンにはいないって聞いたが・・・一応、俺の知り合いで、灯里の従姉妹なんだが・・・」

「廻里桜花さん・・・か。いや、そんな人は組織にはいないよ。他の組織でも、それほどの人であれば把握できている。というか・・・う〜ん・・・」


 アンジェリカとクリミアはそれを聞いて悩んでいた。

 三人は不思議そうにしている。

 そして、二人は結論を出した。

 お互いに頷き合い、アンジェリカが口を開く。


「正直に言おう。知ってはいる。だが、私達からは語れない。もし、どうしても知りたいのであれば、本人から聞いて欲しい。ここが妥協点だ。」


 アンジェリカはそう語った。

 そして、


「後、大丈夫だと思うけど、決して敵対してはいけないよ?これは絶対守って欲しい。」

 

 そう繋げる。

 三人は顔を見合わせ、お互いに頷いた。

 アンジェリカがこれほど口を固くする以上、コレ以上は自ら確かめるしかない。 


「さて、それでは、三人は少し休暇を与えようかな。」

「休暇ですか?」


 アンジェリカは空気を変えるように、そんな事を言った。

 姫乃が聞き返す。


「ああ、今回のお詫びという訳では無いが、今度の3連休にでも、旅行に行ってくると良い。エデンが保有する温泉旅館があるからね。費用はこちらで持つから、気にしないで良いよ。なんなら、友人を誘って貰ってもいい。手続きはこちらでしておくよ。」

「温泉・・・かぁ。そういや俺、行った事ねーな。」

「あたしは、家族ではあるけど・・・健流と行くのは初めてね。混浴も出来るんですか?」

「おい!お前何いってんだ!?」


 アンジェリカにとんでもない事を聞く灯里に、健流がつっこむ。

 しかし、アンジェリカは、笑いながら、


「そこは、民宿の様になっていてね。貸し切りにするから、したければすれば良いさ。」


そんな事を言った。


「わーい!やったー!!」

「いやいやいや!駄目でしょうそんなの!何言ってんすか!!」

「混浴・・・健流と!?どうしよう・・・でも・・・よし!決めたわ!健流!一緒に入るわよ!」

「姫乃まで何言ってんだ!?」


 喜ぶ灯里、気合を入れている姫乃、そして一人困惑する健流。

 そして、この温泉旅行計画は、後日、光と充にも話がなされた。

 残念ながら、充は部活の関係で参加できなかったが、光は食いつくように参加を決めた。


 そして、この旅行でとんでもない事態を招くことになる事を、健流はまだ知らない・・・



**********************************

これで四章メインは終わりです。

後はいつも通り閑話をいくつか挟んで5章が始まります。


次章は息抜きの章となると思います。

ちょっとした不穏はあるかもですが・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る