第47話 遺物回収(1)

 健流と灯里はサポートスタッフの運転する車で、岐阜県の山中に向かっている。

 その最中に、詳細が記載されたレポートに目を通した所、どうも最近になって発見された洞窟内から、オーパーツが発見されたとの事だった。


 オーパーツその物については、すでにエデンが買い上げているとの事で、輸送の手続き中であったが、前回輸送を試みた所、襲撃に遭い、オーパーツそのものは守り通したが、本部までの搬送には至らなかったようだ。

 

 襲撃したのは、犯罪異能組織である『ギガンテス』で、撃退はしたものの、まだ諦めていない可能性が高い。

 今回の任務は、輸送の護衛任務だった。


 概ね1時間30分程かけて移動し、健流達は現在、仮設の拠点にいる。


「これがオーパーツ・・・」


 灯里が食い入るように見つめている物、それは一見は古ぼけた鏡のようなものだった。

 しかし、今わかっている範囲でも、この鏡が未来を移すものである事は判明しているようだった。


 これから本部搬送後、詳しく調査がなされる。


「さて、それじゃ、本部まで戻るか。襲撃が無ければ良いが・・・」

「ねぇ、これを運ぶだけなら後日でも良かったんじゃないの?手がたりなさそうだったけど。」


 灯里の疑問に対して、健流はため息をつく。


「お前ちゃんとレポート読んだのか?書いてあっただろ?」

「え?・・・そうだっけ?」

「はぁ・・・ここだここ。『前回襲撃に遭った際に、敵の捕虜を尋問した結果、次の襲撃は5日と判明。よって、搬送には安全を考慮し、3日が良いのではないかと思慮される。』てな。」

「あ、ホントだ。」

「だから、ずらせねーんだよ。ただ、このレポートを読む限り、おそらく敵も見張りを立てているだろうから、襲撃そのものがある可能性は捨てきれないって書いてある。だから、気を抜くんじゃねーぞ?」

「わかってるわよ。あたしが油断するわけないじゃない!」

「どうだかな。それじゃ行くか。」


 健流たちは、山を下り、国道41号線に出て、ひたすら南下する。

 組織のあるビルまで1時間30分、襲撃があるとすれば・・・人気の無い山中を移動中だろう。


 そして、30分程経過した所で、突然灯里が声を上げた。


「車を止めて!来る!!」


 その声で車を急停止させるドライバー。

 すると、前方の道路上で爆煙が上がった。


 すぐさま健流と灯里は車から飛び出る。

 

 前方には武装した者達10名程が道を塞いでいた。


「お出ましか。灯里!やるぞ!」

「うん!」


 灯里は、組織から与えられた刀を腰に据える。

 この刀は、逆刃刀であり、通常の物よりも頑丈に出来ていた。

 灯里がむやみに命を奪わないように、上昇部が配慮したものであった。


 襲撃者は無言で銃を構える。

 健流たちは一気に駆け出す。


 すぐに銃弾が飛んで来るが、灯里は天啓眼を発動させ、銃弾を躱し、接近していく。

 健流は強化を発動。

 今の健流であれば、銃弾を食らっても致命傷にはならないが、それ以前に、目で追えるので、ギリギリ躱せる。

 健流もまた、少しづつ近寄って行った。

 

 最初に接近したのは灯里だ。

 

「廻里流剣術 旋風!」


 身体を前に倒していき、地面スレスレで一歩踏み出し加速する。

 そして、その勢いのままに抜刀し、居合の要領で、敵を横薙ぎにした。

 そして、返す刀でそのすぐ横にいた敵の銃を斬り飛ばす。


「廻里流剣術 双蛇!」


 拘束の横薙ぎ二連。

 ヘルメット越しに頭部に二発衝撃をくらい、、敵は崩れ落ちた。


 敵が灯里に狙いを定める。


「こっちにもいるぜ!おらぁっ!!」


 健流は強化状態で飛び込んでいき、そのまま敵の顔面を殴りつけた。

 敵は後方に一回転して地面に倒れ込む。


「もういっちょ!」


 健流はそのまま回転して、回し蹴りをその直近にいた敵の胴体に放つ。

 もろに胴体にヒットし、敵はくの字に身体を折り曲げながら倒れ伏した。


 その健流の背中に、ナイフが迫る!


「やらせない!廻里流剣術 鎧通し!」


 相手に体ごと突っ込み突きに全体重を乗せ、鎧すら通す突きを打つ。

 相手のボディアーマーを破損させ、そのまま鮮血が飛び散る。

 刃先が敵の腹に刺さったのだ。


「悪いけど手加減しないわよ!はぁっ!」


 そのまま刀を戻しながら唐竹割を放ち頭を打ち据えた。


「わりぃ!」

「もっと周りに気を配りなさい!隙が多い!」


 健流に比べると、灯里の動きはかなり洗練されており、複数の敵からの攻撃もなんなく躱し、対応する灯里。

 

「(流石は天才だぜ・・・負けてられねぇ!)」


 健流は気合を入れ直し、すぐそばの敵をボディブローからのフックで沈める。

 

 数分後、道を塞いでいた敵は全て排除する事が出来た。


「これで終わりか・・・あっけないな・・・」


 健流がそう言って、車に戻ろうとした所、灯里が叫んだ。

 

「馬鹿!油断するな!まだ終わってない!!」


 そう言って健流を突き飛ばす灯里。

 すると、先程まで健流が立っていた所をかすめるように、火線が走った。

 

「なんだ!?」


 火線が来た方向を見ると、そこには男が立っていた。


「・・・よもやこうも容易に倒されるとは・・・嘆かわしい。」

「てめぇ!何もんだ!!」

「俺は『ギガンテス』所属の『業火』の斯波しば。」

「同じく『ギガンテス』所属『幻惑』のオリバー。」


 男の背後から、更に金髪の外国人が出て来た。


「・・・あいにくと、俺にはお前らみたいな二つ名はねぇ。だから名乗るとしたら『エデン』の大和だ。」

「あたしも同じよ。『エデン』の灯里よ。」

「貴様らのようなガキしかおらんとは・・・『エデン』も底が知れる。」

「なに・・・そうでもねぇさ。なんせお前らは今から、そのガキ二人に負けるんだからな。」

「ほざけ・・・この業火と幻惑、これでも『ギガンテス』の戦闘特化部隊の人間、貴様らのようなガキに負ける道理は無い。」

「はっ!やってみなくちゃわかんねぇだろうがぁ!!」

 

 健流は業火に向かって駆け出す。


「幻惑はあたしが相手よ!」


 灯里も幻惑に向かって飛び出した。


 こうして健流たちの戦いの火蓋が切って落とされた。

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