閑話 姫乃の気持ち side姫乃
まったく!灯里め!あんな風にまっすぐぶつかって行くなんて!
あの後、教室で誤魔化すのがどれだけ大変だったか・・・健流が。
私には誰も直接聞きには来ないしね。
しかし、これがあの子の長所なのかもしれない。
ひねくれ者の私には出来ないことだ。
健流が好き・・・か。
私はどうなんだろう・・・好きか嫌いかで言えば、間違いなく好きだ。
でも、これが恋愛的な好きかどうかと言えば・・・正直わからない。
健流といると、心地良いし、誰にも渡したくないという気持ちがある。
独占欲?とかいう奴かしら?
そういえば、カラオケでも瀬川くん聞かれたっけ・・・
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「わかった。単刀直入に聞く。如月さんは、大和の事好きか?」
瀬川くんはそう聞いてきた。
好き・・・か・・・
「わかりません。私は恋愛的に人を好きになった事がありませんので。」
「そうか・・・じゃあ、大和といるとどう思う?」
「・・・それは、どうしても答えないといけない事なのでしょうか?」
「無理強いは出来ない・・・けど、出来れば教えて欲しい。」
「そうですね・・・」
何故この時正直に教えてしまったのか、今でもわからない。
「健流くんと一緒にいると、暖かくなります。とても。私には今までそういう人はいませんした・・・だから、手放したくありません。渡しません・・・誰にも。」
「そうか・・・」
それきり、瀬川くんは厳しい顔をして黙ってしまった。
私は、どういう顔を選べば良いかわからず、いつもの笑顔のままだった。
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結局、なんであんな事を聞いてきたかはわからない。
けど、瀬川くんが私を好きだという感じはしなかった。
あれは多分・・・光さんの為に聞いたのでは無いかと思う。
光さん、か・・・。
光さんは間違いなく健流の事が好きだ。
それは、恋愛感情がよくわからない私でもわかる。
あの娘は、健流と話をしている時、とても嬉しそうだ。
笑顔も輝いている。
全身で好意を押し出している。
健流は気づいていなさそうだけど。
でも・・・やっぱり、そんな光さんにも、健流を渡したくないという思いもある。
あれほどの一途な思いを前にしても、引く気にはならない。
これは、私には珍しいことだ。
今まで、執着があったのは、両親の敵討ち位だったのに。
それが・・・自分の気持ちがわからないまま、純粋な思いに張り合う・・・自分で言っていても信じられないわね。
灯里もそうだ。
あの娘は、何故か私をライバル視した。
光さんじゃなくて私・・・何故だろうか。
あの娘は、おそらく光さんの気持ちにも気づいているはず・・・にも関わらず、私をライバル視する・・・そこに、私の気持ちを知る鍵があるような気がする。
あの娘に生まれた異能・・・健流から聞いた事から判断するに、あの娘の勘の良さを、更に向上させた先にあるものに感じる。
という事は、今の私の健流への態度が、恋愛として何か感じる事があるという事ではないか。
いずれにしろ、私は健流をあの娘にも渡す気は無い。
無いけど・・・あれだけ真っ直ぐ気持ちをぶつけられたら、健流だってどう考えるかわからない。
もし、健流が灯里を好きだって言ったらどうしよう・・・
これは、光さんでも同じことだろう。
健流は、おそらく性格的に、正面から来る相手の方が好ましく思うだろうから・・・私には分が悪いかもしれない・・・分が悪い?
なんで、私は彼女らの思いを自分と比べてしまうのだろう?
まだ、好きだと確定したわけではない・・・筈なのに。
私はどうしたら良いんだろう・・・
なんとなくまずい気がする。
私も、それなりに勘が良い方だ。
このままにしておくと危険な気がする。
私が私の気持ちに気づく事・・・何かきっかけがあれば良いけど・・・
でも、もし私が自分の気持ちに気づいた時、私はどうするんだろうか・・・
・・・健流はそれを知ったらどうするんだろうか・・・
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