第28話 ちょっと姫乃さん?

 食事後、姫乃はシャワーを浴びに浴室に行く。


「・・・覗かないでよ?」

「やらねーよ!俺をなんだと思ってるんだ!」

「羊の皮を被った狼。」

「・・・そんな真似するかよ。なんなら、異能を使って見えないようにすればいいんじゃねぇか?」

「ん〜・・・いいや。」

「・・・自分で言うのもなんだが、男を信用しすぎじゃねぇか?」

「いいえ違うわ。男は信用してない。健流を信用してるのよ。」

「・・・ありがとよ。」


 そう言って離れる姫乃。

 健流は落ち着かなかった。

 だけど、信用を裏切ることは絶対に出来ない。

 だから、ベッドに転がり、スマホでネット記事でも読もうと思い、スマホに手を伸ばす。

 すると、そこには、新しく入れ直したLINに、通知が来ていた。

 表示するとそれは黒瀬光からだった。

 内容は「今暇〜?」というもの。

 

「(一時間前か・・・)」


 健流はすぐに「ああ。今、暇になった。」と返す。

 すぐさま既読になり、「遅いよ!電話しようと思ったのに、隣の部屋にいる妹にうるさいって言われるからできないじゃん!」と返って来た。

 健流は、苦笑しながら、「悪い。ちょっとバイトでな。」と送り返す。

 それから、少しの間やりとりしていると、ガチャッとドアが開く音が聞こえた。


「は〜さっぱりした!」

「おう、出たか・・・ってお前!なんだその格好は!?」


 健流は、なんの気なしに姫乃の方を見ると、姫乃は、バスタオル一枚で浴室から出てきたのだ!


「何って・・・お風呂上がりじゃない。」


 しれっとなんでも無いことのように言う姫乃。

 その表情は、入浴後という事もあり、火照った肌、濡れた髪、全てが健流の中にある男を刺激するものだった。

 色気にあふれた姿に、見惚れそうになる健流。

 だが、ぶんぶんと顔を振って、気を鎮めようとする。

 そして、姫乃を諭そうと口を開いた。


「そりゃわかってるっての!俺が言いたいのは、男がいるんだから、もうちょっと考えろって事だ!!」

「健流だから良いじゃない。」


 しかし、姫乃は当たり前という顔をしており、まったく浴室に戻ろうとしない。

 それどころか・・・


「なんでだ!?良いわけねーだろ!」

「何よ・・・見たくないの?」


 そう言って、妖艶に笑いながらバスタオルの結び目に手をかける姫乃。


「ま、ま、待て!お、お、落ち着け!・・・要求はなんだ!?話し合いに応じる余地はあるはずた!」


 健流は狼狽し、自分でも意味の分からない事を言った。

 

「ほら・・・健流・・・こっち見て?」


 姫乃は妖艶な表情で、ゆっくりと結び目を解いて行く。

 健流は顔を逸し、必死に叫んだ。


「おい!こらっ!もっと自分を大事にしねーか!」

「健流なら・・・良いよ?」


 ふぁさっとバスタオルが落ちる音がした。

 健流はギュッと目を閉じ、見ないようにする。

 しかし、段々と姫乃が近づいて来る音が聞こえる。


「健流・・・目を・・・開けて?」


 そう言って姫乃は健流の耳にふ〜っと息を吐く。


「ひぐっ!?」


 健流はビクッとして思わず目を開けそうになるも、なんとか耐えた。


「ねぇ・・・私の・・・見るの・・・嫌?」


 悲しそうな姫乃の声が聞こえる。

 健流はその声を聞き・・・覚悟を決め、少しづつ目を開けていく。

 するとそこには・・・ホットパンツとチューブトップの姫乃がいた。


「あはははははっ!ひっかかった!そんな簡単に見せるわけないでしょ!」

「・・・こんにゃろう・・・」


 お腹を抑えて大笑いする姫乃。

 健流はやられぱなしで腹が立ち、反撃しようと意を決したその時。


「きゃっ!?」


 バスタオルを踏みつけ足を滑らした姫乃がひっくり返った。


「おい!だいじょうぶ・・・か・・・」

「イタタタ・・・」


 健流の目の前には、チューブトップがめくれ上がり、大股を開いて倒れた姫乃がいた。

 健流の視界に、ピンク色のブラとホットパンツの隙間から見えるショーツが飛び込んでくる。

 あまりの衝撃に呆然としてしまう健流。


「(あ・・・やっぱりピンク好きなんだ・・・)」


 エレン博士から入手した情報を思い浮かべ、現実逃避を始めた。

 姫乃は、転んだ衝撃もおさまり、目を開け健流を見る。


「あ〜あ、からかい過ぎてバチが当たった・・・て、どうしたの健流?」

「・・・ピンク・・・」

「・・・?ピンク・・・って!?どこ見てるの!!」


 バチン!!

 

「・・・ちょっと理不尽すぎねーか?」


 健流の頬に見事な紅葉が出来ていた。


「・・・良い思いできたんだから良いでしょ!スケベ!!」


 そうこうしてうちに、夜も更けたので、お互い就寝する事にした。

 しかし、事件はまだ終わらない。

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