7
月を飛び立ってから、船は順調に地球へと向かっていた。窓から外を見れば、別の船が通り過ぎていき、月基地以外の宇宙衛星などの開発が行われている姿が見える。同業者らしき人がせっせとデブリ回収に勤しみ、見慣れた船が漂っていた。
それを眺めていると、宇宙というのは、意外と平和なのかもしれないとさえも思える。ただ、時間だけが緩やかに流れていく。
「あれはなにかしら?」
綾香の視線はふいに漂っていた大型のデブリへと注がれた。半壊した旅客機らしき機体のようだ。
「どれどれ……」
彼女の言葉に大上が乗り出すように窓の外を見た。そんなに大きく見えるわけではないが、確かにそれが船だということがわかる。
「昔、事故って、放棄されたのかしら?」
「おそらく手が回らないのだろう。幸い、あれは軌道上にあるからな。危険はないだろう」
そういいながら、眺めていると、その放置状態にされていた船の影からなにかが光るのが見えた。
「なにか光った?」
それを見たのは綾香だけではないらしい。綾香が声を出す前に誰かが声を上げた。それにつられて、客たちがなんだろうと窓の外へ注目する。
また光った。
ひとつではない。
光は徐々に増えていき、その距離が自分たちに近づいてくるのが見えた瞬間、船に衝撃が走る。
ドーン
外壁に何かがぶつかり、船内が激しく揺れる。そのせいで体が前方へと傾きシートベルトに締め付けられて綾香の体に痛みが走る。
「きゃあああああ!」
ドーン
バーン
シートベルトをしていなかった乗客たちはそのままシートから離れて宙を舞う。ただふわふわと浮いているだけのものもいるが、反動で壁に激突するものもいた。
さっきまであったはずの重力が消え、方向性を失った人間たち同士がぶつかり合う様子も見受けられた。
船内は騒然となり悲鳴があがる。
何が起こっているのだろうかと再び窓の外を見る。眩い光が視線を遮ったかと思った瞬間に綾香の意識は途切れた。
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