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スピードが落ちない。
「くそ!」
『どうする? どうする?』
「どうもこうもない。ブレーキが利かないんだから、方向を変えて月面着陸する!」
あきらは機体の方向を変えるべくして舵を切ろうとしたが、すでに機体はカタパルト内へ突入寸前だった。
「くそ!チューブ!!」
『アイサー。緊急通信! 緊急通信!』
チューブは月面基地へとむけて呼びかけ始めた。その間にも船はスピードがほとんど落ちないまま、カタパルト内へと突入していく。
『エラー発生。ただちにカタパルト内の避難を!』
聞き覚えのない声に反応してカタパルト内でなにやら作業していた人たちが慌てて避難していく。
船は避難する人たちにぶつかる寸前の壁に激突し、壁とぶつかり摩擦を起こしながら、ドッグへと向かって突き進んでいった。
『これより、緊急突入します。ドッグ内も避難を』
チューブの声に反応して逃げてくれることを願う。ドッグへつながる扉をぶち破ったときに船がそこにないことを祈るしかなかった。
「とまれ、とまれ!」
あきらは必死にブレーキをかける。
しかし、止まらない。
壁から火花が散る。振動が機体のなかへと響き渡る。
あきらの体が前方へと引きずられるように傾き、装置に腹部が当たる。
『うわわわわ』
あきらのようにベルトで固定されていないチューブは、壁のいたるところに体をぶつけていく。
そんなこと気にしている余裕はない。
『早坂あきら! どうなっているの?』
コントロールルームからの通信が入ってぃるが応答できる状況ではない。
『避難と応急対応』
あきらの代わりにチューブが簡潔に答えた。それだけでも十分だったのだろう。
『いまから、衝撃打破の網を噴出させます。そこへ船を……』
「わかった!」
通信が切れると同時に両側から網が一気に憤出された。そのまま、船はその中へと突入する。船の勢いは弱まったもののそれだけでは足りずに、網を引きちぎってドッグ内へと滑り込む。
「ぶつかるな!」
とっさにエンジンを切ると、目の前にあった船にぶつかる寸前で止まった。
「とっ……止まった……」
あきらはほっと胸をなでおろした。
『こらああああああ!』
ホッとする間もなく、船の通信モニターが強制的に開き、血相を変えた女性の姿が映し出された。その怒声にあきらの体がビクリとする。
『なにしているのよ! あなたは!』
鬼の形相に思わず苦笑した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
少し休憩します。
次回は9月4日更新予定
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