蛇足(不読推奨)

太平洋決戦~あり得たかもしれない戦い~

蛇足その一 第五艦隊

 【注意】本編とは別の世界線のお話です。

 ※米国との講和交渉が不調に終わり、そのままズルズルと日米戦争が続いたという想定です。

 ※読まれる方は、本編とは異なる「パラレル世界の出来事」だとでも思っておくんなせい。

 ※繰り返しますが、無理に読まんでもいいです。





 昭和一七年に英国を講和という名の降伏に追い込み、昭和一八年にはドイツと共同でソ連を叩き潰した。

 だが、連合国陣営にはまだ大物が残っていた。

 世界最強にして最大の覇権国家アメリカ。

 その米国は巨大な国力をフル稼働させ、第五艦隊という一大機動艦隊を編成していた。



 第五艦隊


 第一群

 「エセックス」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「イントレピッド」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「インデペンデンス」(F6F二四、TBF九)

 「プリンストン」(F6F二四、TBF九)

 「ベロー・ウッド」(F6F二四、TBF九)

 軽巡二、駆逐艦一二


 第二群

 「フランクリン」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「タイコンデロガ」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「カウペンス」(F6F二四、TBF九)

 「モンテレー」(F6F二四、TBF九)

 軽巡二、駆逐艦一二


 第三群

 「ランドルフ」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「バンカー・ヒル」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「ラングレー」(F6F二四、TBF九)

 「カボット」(F6F二四、TBF九)

 軽巡二、駆逐艦一二


 第四群

 「ハンコック」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「ベニントン」(F6F四〇、SB2C三六、TBF二四)

 「バターン」(F6F二四、TBF九)

 「サン・ジャシント」(F6F二四、TBF九)

 軽巡二、駆逐艦一二


 第五群

 戦艦「アイオワ」「ニュージャージー」「サウスダコタ」「インディアナ」「マサチューセッツ」「アラバマ」

 軽巡八、駆逐艦三二



 主力となる空母は「エセックス」級が八隻に「インデペンデンス」級が九隻。

 大小一七隻の空母の搭載機数は一一〇〇機にのぼる。

 これら空母に搭載されている機体も戦闘機と急降下爆撃機、それに雷撃機はすべて新鋭機で固められている。

 水上打撃艦艇も充実していた。

 四隻の「サウスダコタ」級に加え二隻の「アイオワ」級といった最新鋭戦艦が「大和」と「武蔵」、それに「信濃」の三姉妹を討ち取るべく参陣している。

 一七隻の空母と六隻の戦艦をエスコートするのは一六隻の巡洋艦と八〇隻の駆逐艦であり、それらのほとんどが「クリーブランド」級や「フレッチャー」級といった開戦後に就役した最新鋭艦だ。

 これらが西海岸に向けて進撃を続ける連合艦隊を迎え撃つ。


 だが、これだけの戦力を集めてなお米海軍は大西洋の防備を疎かにはしていない。

 敵であるドイツ海軍やイタリア海軍は大西洋を押し渡るほどの戦力こそないものの、それでもドイツの戦艦「ティルピッツ」やイタリアの「ヴィットリオ・ヴェネト」級戦艦は侮れない相手だし、これに英国から接収した三隻の「キング・ジョージV」級が加わるから新鋭戦艦の数だけでいえば日本艦隊を上回る。

 空母もドイツの「グラーフ・ツェッペリン」やイタリアの「アキラ」、それに英国で建造を継続したうえで召し上げた改「イラストリアス」級の二隻がある。


 これらに対抗すべく、大西洋艦隊は「ノースカロライナ」と「ワシントン」の二隻の新鋭戦艦に加え日本との戦いで生き残ったすべての旧式戦艦、さらに巡洋戦艦と呼んで差し支えない「アラスカ」級大型巡洋艦を配備している。

 巡洋艦こそ旧式のものが多いが、一方でそれらのほとんどは条約型の重巡洋艦だから個艦の戦力に不安は無かった。

 空母も開戦からの生き残りの「ワスプ」と「レンジャー」、それに護衛空母の中では最有力の「サンガモン」級四隻がある。


 東海岸の備えは大西洋艦隊に任せ、第五艦隊は西海岸住民の期待を背に進路を西に向ける。

 その米海軍は日本との戦いにおいて三つの誤算があった。

 「大和」型戦艦の巨大さに幻惑され、日本海軍がすでに航空主兵に移行していたのにもかかわらず、相変わらず大艦巨砲主義をそのドクトリンとしているのだと思い込んでいたこと。

 さらに、零戦の強さと、それに奮龍という無線誘導兵器の存在。


 それでも、零戦と奮龍に対してはすでに対策は出来ていた。

 奮龍の周波数はすでにこちらの知るところであり、零戦には最新鋭のF6Fヘルキャットをぶつけることでこれに十分対処できる。

 零戦は強い機体だが、それでも最高速度が六〇〇キロに及ばないことが分かっている。

 その零戦も六四型が新たに配備されつつあるというが、おそらくは金星発動機の出力強化版を備えたマイナーチェンジバージョンだろう。

 それら機体を運用する空母も日本海軍はすでに「翔鶴」型四、五、六番艦を就役させているから正規空母が一五隻のはずだった。

 その搭載機数は第五艦隊と同等かあるいはわずかに勝る程度と見込まれるが、その質においては最新鋭機で固めた米側に利がある。

 これまで一方的に蹂躙されるばかりだった米艦隊がついに日本艦隊と同等の戦力を持つに至ったのだ。

 第五艦隊の将兵らはそう考えた。

 しかし、それは大きな勘違いだった。

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