第39話 オアフ島攻撃
第一航空艦隊ならびに第二航空艦隊の二個機動部隊からなる第一機動艦隊は九隻の空母を基幹とし、護衛に五隻の戦艦と一二隻の巡洋艦、それに三二隻の駆逐艦からなる堂々たる艦隊だった。
このうち「大和」と「武蔵」、それに「信濃」の三隻の戦艦、さらに「妙高」と「羽黒」、それに「足柄」と「那智」の四隻の重巡は水上打撃艦艇の充実を図るためにそれぞれ第一艦隊と第二艦隊から臨時編入されている。
また、フィリピン攻略作戦に一定の目処がついたことで、同作戦に参加していた「比叡」と「霧島」もまた第二航空艦隊に加わっていた。
指揮はマーシャル沖海戦と同様、一航艦は古賀長官が、二航艦は小沢長官がこれにあたり、古賀長官は「翔鶴」を、小沢長官は「赤城」をそれぞれ旗艦に定めていた。
また、太平洋艦隊が壊滅したことで、各空母ともに対艦攻撃を任務とする攻撃機は一個中隊のみとし、逆に戦闘機隊は大幅に増強されている。
第一機動艦隊
第一航空艦隊
「翔鶴」(零戦八四、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「瑞鶴」(零戦八四、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「神鶴」(零戦八四、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「蒼龍」(零戦四八、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「飛龍」(零戦四八、一式艦攻一二、一式艦偵六)
戦艦「大和」「武蔵」「信濃」
重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」
軽巡「矢矧」
駆逐艦「初風」「雪風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「嵐」「萩風」「舞風」「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」
第二航空艦隊
「赤城」(零戦六〇、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「加賀」(零戦六〇、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「隼鷹」(零戦四八、一式艦攻一二、一式艦偵六)
「飛鷹」(零戦四八、一式艦攻一二、一式艦偵六)
戦艦「比叡」「霧島」
重巡「妙高」「羽黒」「足柄」「那智」「利根」「筑摩」
軽巡「酒匂」
駆逐艦「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」「陽炎」「不知火」「霞」「霰」「朝潮」「大潮」「満潮」「荒潮」「朝雲」「山雲」「夏雲」「峰雲」
一九四二年二月一日、攻撃発起点に到達した第一機動艦隊は米国に宛てた攻撃予告通り、在オアフ島航空戦力を撃滅すべく第一次攻撃隊を発進させた。
第一次攻撃隊は一航艦からは五航戦の空母「翔鶴」と「瑞鶴」、それに「神鶴」からそれぞれ四八機、二航戦の「蒼龍」と「飛龍」からそれぞれ二四機の合わせて一九二機。
二航艦からは一航戦の「赤城」と「加賀」、それに三航戦の「隼鷹」と「飛鷹」からそれぞれ二四機の九六機。
合わせて二八八機のそれらは、すべて戦闘機で固められていた。
さらに各空母から一機ずつの合わせて九機の一式艦偵が前路哨戒や誘導、それに空戦指揮にあたる。
合計二九七機からなる第一次攻撃隊は艦隊上空で編隊を整えると南東方面に向けて進撃を開始した。
また、万一の敵艦隊出現に備え、三六機の一式艦偵が周辺海域を索敵。
敵艦隊が発見された場合は待機している六〇機の零戦と一〇八機の一式艦攻がこれに対応する。
「日本機群探知、機数およそ三〇〇 大編隊です!」
日本軍の攻撃を予期し、あらかじめ配置についていた最も腕の立つベテランオペレーターが日本機群の現在位置や的針、それに的速を告げる。
「連中、ファイタースイープは無しに、いきなり全力攻撃を仕掛けてきやがったか。
よし、上空警戒中のすべての戦闘機隊を敵編隊にぶつけろ。地上待機中の機体もすべて出せ」
空戦指揮官は一切の迷いもなく全戦闘機隊に迎撃を命じる。
マーシャル沖海戦では日本の空母部隊は最初に戦闘機だけで編成されたファイタースイープ部隊を投入、然る後に本命の戦爆連合が攻撃を仕掛けるというスタイルをとった。
だが、今回は三〇〇機だから、まず間違いなく戦爆連合の部隊なのだろう。
だから、空戦指揮官はまずは上空警戒中の戦闘機隊によって日本側の護衛戦闘機隊を引き剥がし、緊急発進した戦闘機隊に敵爆撃機隊を叩かせるつもりだった。
一方、友軍爆撃機隊は攻撃に出さず、ひとまず空中退避させる。
マーシャル沖海戦では二〇〇機を超える友軍艦上機隊がほぼ同数の日本の戦闘機にインターセプトされ壊滅的な打撃を被ったという。
米陸軍が誇るB17は防御力に優れた機体ではあるが、それでも戦闘機の護衛無しで日本艦隊にぶつけるのは無謀だと判断されていた。
日本の戦闘機は米軍自慢のブローニング一二・七ミリ機銃を遥かにしのぐ破壊力を持つ、おそらくは二〇ミリクラスのそれを持っていることが分かっていたからだ。
いささか無念ではあるが戦闘機の数に限りがある以上、今は攻撃よりも防御に徹するべきだった。
オアフ島の防空については通常であれば、三〇〇機の戦闘機のうち、一〇〇機が上空警戒、一〇〇機が即応待機、残り一〇〇機が整備補給というローテションだが、今朝に限っては日本機の来襲が濃厚だったことから一〇〇機が上空警戒で二〇〇機が即時待機の状態としていた。
オアフ島の飛行場群の離発着能力や管制能力がいかに優れていても、常時三〇〇機の戦闘機を空に上げておくのはやはり無理があった。
空戦指揮官の命令によって地上にあった二〇〇機の戦闘機は次々に発進し、さらにその後を追って七〇機ほどのSBDドーントレス急降下爆撃機もまた滑走路に向かいつつある。
「先行の戦闘機隊、まもなく日本側編隊と接触!」
レーダーオペレーターのわずかに緊張と興奮を含んだ、それでいてよく通る声が指揮所内に響く。
場の空気が一気に緊張の度を深める。
オアフ島をめぐる一連の戦いがついに開始されたのだ。
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