第11話 変わらない

林檎の王様 とっても笑顔


餅に感謝を述べていた




「お前が紙の魔女を紹介してくれたおかげで、この国は大変潤った。お主の白い体も、改めて見れば美しい、すまないことをした。お前にも褒美を授けねば」




林檎の王様 とっても笑顔


口は回る 白い餅を褒めたくる




黙って聞くは 怒りの餅


話の見切りを見極めて


鋭い眼差し 王様向けて


「褒美はいらない。代わりに色を、もうもう増やすな」


悲しみ 強張り 声を上げる




ぽかんと わからぬ 林檎の王様


餅は 落ち着き


「これ以上、色を増やすのはやめてほしい」


言葉をしめる




困った わからぬ 林檎の王様


「はて。何故そのようなことを言う」


ピンとこないは 林檎の王様




「林檎の王様、あなたは間違っている。色を知れと言ったのは確かにボクだ。だけどボクは赤も好き。美しい色は豊富な色彩ではなく、個々の色との組み合わせ。これでは色の良い部分まで潰してしまう。これ以上は国はずたぼろ壊れるだろう」




林檎の王様 抑えられない 我が怒り


わなわな わなわな 向かっ腹


自分の顔 しわくちゃ めちゃくちゃ しまくって


外に向かって指差した




「やはり生意気なやつだった。早くこの国から出て行ってしまえ」


「だけど、このままでは、この国は壊れてしまう。紙も心を病んでしまう」


「黙れ!」




怒りの声は 城中響き


餅はびくりと 縮まった




「生意気な餅だ、お前だけは愛せない。色を知れと言ったり、捨てろと言ったり、あべこべだと気が付かないのか。この国のルールはたったひとつ。すべての色を愛しなさい。お主を今では食べられぬ。二度と私の目の前に、姿を現すではないぞ。分かったか!」




餅は涙のひとつも出ずに


ただただ悲しくうなだれた




林檎の王様 ご立腹


そのままどこかに行ってしまう




餅は言われるがままに城を出て


そのまま国をあとにした




もうもう どうしようもない


もうもう どうしようもない




* * * * *




とぼとぼ家に帰った餅は


自分の白い体を見るやいなや


そこらにあった食紅をつけて


体を赤色にしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

林檎の王様と真っ赤な国 世一杏奈 @Thanks_KM

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ