ユナさんとデート
ルヴァン視点
「……んあぁ〜〜っ!めっちゃ明るい。何でだ?」
暗かった視界が急に眩しくなったことで、俺は目を覚まし身体を起こす。
「……やっべ、もしかして寝過ごしたか!?」
ユナさんとのデートの約束を破ってしまうなんて、それは流石に不味い。
俺は反射的に、カーテンに手を掛け開く。すると、窓の外は暗く待ち行く人達が数多く見えた。
それを見たことで、俺の頭がパニックしどうしてこんなに部屋が明るいのかと辺りを見渡すと、枕元に光っている時計を見つけた。
こんなの持っていたっけなと、手に取りぼやける思考の中思い出す。するの、これはリュディから貰った目覚まし時計だったことを思い出した。
「ふぅ…マジで焦った〜〜。完全に寝過ごしたかと思ったわ」
これで約束に遅れないで済みそうだと、俺は安堵の息を溢し時計を枕元に戻す。
すると、そこで針が動き時計の発光が終わり部屋が一気に暗くなった。
俺はその中、軽く伸びをし立ち上がると身だしなみを整えるため一旦洗面台へと向かう。
歯を磨きながら、服を脱ぎ洗濯カゴにぶち込む。
そして、俺の家で一番綺麗な黒のズボンと白のシャツを棚から取り出し着替えた。
その後、うがいをして歯の汚れを吐き出し髪を整える。
だが、鏡に映る自分を見ると前世の友人にダサいと言われた時と同じ格好そのままで、これは不味いんじゃないかと思い、緑色の魔石が付いたペンダントと青のベストを追加した。
これで、少しはマシになったのではないだろうか?知らんけど。
そして、改めて気付く。
やっぱ、外套って偉大だわ。あれ着てるだけでそれっぽい見た目になるのヤバいだろ。異世界最強ファッションアイテムじゃん。それに、女の子が襲われて上に被せるとかいうクソカッコいいことにも使える。チート過ぎるだろ。
が、しかし、そんなチートアイテムだが残念なことに今日は着ていけない。
理由は簡単。デートだからである。
普段は仕事の付き合いの飲みだが、今回はプライベートで名目はデートである。
いつも通りの服装をして行っても雰囲気が出ないし、相手からデートに行ってもオシャレしないつまらない男だと思われてしまう。その結果は皆さん容易に想像出来るだろう。
そう、この男駄目だわ、と判断されいつの間にか専属受付嬢がユナさんから別の受付嬢に変わり、話しかけても無視される。物理的にも心理的にも遠のいてしまうのだ。
「それだけは駄目だ」
だから、俺はこの日だけは封印する。長年連れ添った相棒を置いて、一人で俺は戦地に赴くしかない。不安で仕方ないが、彼女を作るためだ。致し方ない。
「行ってくる」
椅子に掛けられている相棒に、一時の別れを告げると俺は家を出た。
◇
「ルヴァンさん、御免なさい!仕事が少し長引いて遅れてしまいました」
集合時間から、約十分くらい経ったところでユナさんが慌てた様子でやって来た。
ユナさんの服装は、いつものギルド制服ではなく、白のふんわりとした大きめのシャツと黒と赤のサスペンダースカートに黒のニーソと大人の色気と可愛さが混ざっていて可愛らしかった。
「全然待ってないから、大丈夫だ」
サスペンダーによって強調されている、ご立派なお胸様から目を逸らし俺はお決まりのセリフを吐く。
「本当ですか?」
「あぁ、服を何着て行くか迷ってさ。俺も少し時間に遅れた」
「……そうですか、なら良かったです」
俺の言葉を聞いてユナさんは少し目を見開いた後、次に頬をほんのり染めて嬉しそうにはにかんだ。
その様子を見るに、先程の解答は間違いなかったのだと俺は内心で安堵した。
が、そんな俺を嘲笑うかのように直ぐ問題にぶつかった。
「「……………」」
無言になったのだ。その理由は分かっている。俺が単にここからどう動けばいいのか分からないのである。そして、ユナさんはエスコートされるのを待ってる。だから、この沈黙を破るのは俺じゃなければいけないのだが、その会話の切り出し二つで大いに悩んでいた。
1.「取り敢えず、店に行こうぜ」
2.「その服装似合ってる」
服を褒めるタイミングっていつだーーーー!!?
今褒めるべきか?それとも、歩きながら談笑中に言うべきか?どっちだ!?誰か教えてくれーーー!
何もかも恋愛初心者のそんな俺の悲痛な心に叫びに応える者が当然居るはずもなく、無言の時間が過ぎていき選択の時を刻一刻と迫られる。
そして、思考を限界まで加速させ頭がショートした俺が出した結論は二つのうちのどれかではなく、別のもの。
「えっ?」
俺は突然のことに困惑しているユナさんの手を引っ張り店へと向かう。
これは相手に振り解かれてたら多大なダメージを喰らう握手だが、この選択をした理由は一つ。
これなら会話が無くても店に移動できるから。それだけだ。
(恋愛経験皆無の俺にこの状況で話を振るなんて無理だ!)
そんことを考えながら、俺は無言でユナさんの手を引き店まで連れて行った。
その間に、ユナさんが俺の手を強く握りしめていたことに気付かぬまま。
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