ユナさんとデート 前


 ルヴァン視点


 冒険者ギルドに入ると、この時間は人がはけて殆ど人がおらず早朝と同じくらい静かだ。

 ユナさんのところに向かおうとすると、彼女の方がこちらに気付き駆け寄ってきた。


「ルヴァンさん良かった!遅かったからので何かあったのかと思いましたよ」


 そう言って、全身を触り傷がないか確認するユナさん。その姿から本当に心配をかけたのだと俺は反省した。


「すまん。少し人に物を教えてたら遅くなった」

「もう、ルヴァンさんがお節介なのは知ってますけど程々にしてくださいよ。待つ側は不安になるんですから」

「…分かった。出来るだけ言った時間に帰るようにする」

「約束ですよ?」

「あぁ、約束する」

「はい、よろしい。これで話は終わりです。おかえりなさい、ルヴァンさん」


俺から手を離し、暖かな笑みを浮かべユナさんは俺を出迎えた。それに対し、俺も表情を崩しクシャッとした笑みを返す。


 「ただいま、ユナさん」


  そうして、俺達はカウンターへと二人で並んで歩いて行った。

 その途中で、スンッと軽くユナさんが鼻を鳴らすと急に怪訝な表現を浮かべた。


 「何だかルヴァンさんから女の匂いが微かにするんですけど…気のせいですか?」

「…気のせいだ」


 目から心なしか光が無くなったユナさんに詰め寄られ、俺は出来るだけ平静を装い誤魔化す。

 嘘です。バリバリ女の匂いです。何でわかるんだよ、怖すぎるだろユナさん。


 「ふぅーん。そうですか?」


 ユナさんは俺の回答が気に食わなかったのか、つまらなさそうな顔をして急に腕を絡めてきた。おぱーいを当てる感じで、ギュッと。強く。


「ちょっ、何で腕を絡める」

「何となくです♪ほら、行きますよ」

「おわっ、待てって!ユナさん!人があんまりいないとはいえ、人がいるからこれは不味いって」


突然のことに俺は赤面し、慌ててユナさんに止めるよう頼む。

 早く止めないとファンクラブに俺が殺される!


「大丈夫です。私気にしませんから」


が、それは満面の笑みでバッサリと切り捨てられた。


「そっちが、気にしなくてもこっちは気にするんだよーーー!」

「そんなことは知りませーん」

「NOoooーーーーー!」


 嫌だー!俺は死にたくない!まだ、俺は彼女を作ってないんだぞ!童貞を卒業してねぇんだぞ!俺を地獄へ引き摺り込むなぁーーー!

 子供のように離してくれと駄々をこねる俺。それを聖母のような優しい笑みを浮かべ引っ張るユナさん。そんな、俺達を見て他の冒険者や受付嬢が「「てぇてぇ」」、「「くそっ、焦れったいな(わね)…俺(私)嫌らしい雰囲気にしてきます」」等と言っていたことを俺は知らない。


 ◇


 「…マジで疲れた」


自宅に戻った俺は、すぐ防具と服を脱ぎ捨て汗を流すとベッドに倒れ込んだ。

 今日はイベントがあり過ぎだ。空腹のアリエス王女と再会し、食べ物を毎日持っていく依頼を結び解体を教えた。そして、冒険者ギルドではユナさんに何故か弄ばれ、心身共に疲弊している。このまま泥沼のように眠ってしまいたい。

 だが、俺はユナさんと夕食を食べに行く約束をしている。流石にそれを破ってしまうのは今度こそヤバい。また、あの笑顔でユナさんは俺の指を一本一本「反省してますか〜?」と言いながら折ってくるに違いない。


「…目覚まし時計でもが有れば」


 あれさえあればぐっすり眠れるのだが、生憎そんな便利なものはこの世界にはない。朝と昼と夕方に教会が鐘を鳴らすくらいだ。そんなもので、起きれるほど俺の眠りは浅くない。一度寝たらグッスリである。何度もしつこいくらい鳴らなければ、俺は起きれないだろう。


「助けて、トラエモーン」

「う゛っふ゛っふ゛っふ゛ー、しょうがないなぁ?ルヴァンくんはーてっれってってー♪魔石を使った目覚まし時計ー」


 ドンッ!


  誰もいないと思ってふざけたのに、まさか返事が返ってくると思わずベッドから転がり落ちる。


「のわぁっ!?びっくりした。何でお前がいるんだよ!」

「トラエモーン!という…ワードを発動キーに転移してきた。…いぇい!」


 そして、身体を起こし声のした方向を向くと、そこには俺の友人である黒髪ロングの無表情ロリ巨乳美少女のリュディがピースをしていた。




 


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