初めての解体 1

ルヴァン視点


「迷宮潜るんだったら衣食住について考えてから行けよ。使えもしない金と武器だけ持ってきても意味ねえだろ。迷宮舐めてんのか?」

「うぅ、言葉もない。ルヴァン殿の言う通りだ」


俺から向けられる馬鹿を見るような目に耐えられなかったのか、アリエス王女は顔を真っ赤に染め端で身体を小さくする。


 「で、この先どうするんだ?帰るか?それじゃあ、またさっきみたいなことになるぞ」


 俺はそんな彼女の姿に溜息を吐くと、どうするのか尋ねた。


「ルヴァン殿が毎日食事を持ってくるというのは?」

「今のお前じゃ、報酬何も用意できねぇだろ?却下。面倒い」

「きのうの夜白金貨三枚払ったのだから、報酬は充分ではないか?」


 縋るような目でこちらを見てくるアリエス王女。


「あれは、アンタを助けた報酬だ。今回のとは別だ。命があって、まだ連れ戻されていない。アリエス王女にとって最高の状況を提供したんだ。文句があるとは言わせねぇぞ?」

「むぅ〜」


 だが、俺はそんな顔しても無意味だと切り捨てる。

 まさか払えると思っていなかったので昨日は驚いたが、下手したら首が吹き飛んでるような危ない橋を渡ったんだ。報酬としては白金貨三枚は妥当だろう。後、毎日飯を買って五十階層くらいまで行かなきゃ行けないとか休みねぇじゃねぇか。ブラック企業じゃん。嫌に決まってるわ。

 

「昨日わざと、隠し部屋の場所を教えたんだ。そこを寝床にして、モンスターを解体して食えよ。そうすりゃ、望むまで修行が出来るだろ?」

「…ルヴァン殿は意地悪だな。それが出来ないから、私は貴方を頼ろうとしてるのだぞ?戦場には出たが、私はモンスターの解体など一度もしたことがない。出来るわけないだろう。私はこれでも王女だぞ」

「そこで、王族アピールされても知らんがな。勉強する機会は作ろうと思えば作れたろ。それは、お前の怠慢だ。俺のせいにすんな」

「グッ…」


 何か反論をしようとアリエス王女は口を開いたが、そこから新たな言葉が出ることはなくパクパクと口を動かすだけで終わった。


「はぁ〜〜」


 そして、俺が何を言っても頷かないと悟ったのだろう。分かりやすいほどに肩を落とし落胆した。

 

(勢いだけで動くから、そうなるんだよ)


 俺は別にその姿を見て申し訳ないとか全く思わない。それが、たとえ美少女だろうと。知り合ってすぐの奴のために無償で動くほど俺は優しくない。

それに簡単に報酬を渡すことが出来るのに、気付かない馬鹿の相手など俺はしたくないのだ。


 「じゃ、俺は帰るぞ。頑張って生きてくれ。それは最後の餞別だ。噛み締めて食うんだな」


俺は袋の中に入っている残り二つのサンドイッチを姫様に放り投げる。


「うわっと、っと、と、待ってくれ。ルヴァン殿。貴方しか頼れる人は居ないのだ。行かないでくれ」


それを落とさないよう拾い、アリエス王女は行かせるかと俺の外套を掴む。


「そんなこと言われても知らん。対価のない施しが一番俺は嫌いなんだ」

「対価を支払えば良いのだろう!ちょっと待ってくれ今考える。…剣や鎧は修行をするためには必須だ、渡すなんてことは出来ない。となれば必然的に渡せるものは、身体しか。それは駄目だ。それをするくらいなら私は自殺を選ぶ」

「そうか。じゃあ、そういうのは俺の見えないところでしてくれ」

「ちょぉぉーい!待て。王女が死ぬのだぞ。そこは止めるだろう普通。国が荒れるぞ!」

「もう十分荒れてるんで」

「そうだったあー。分かった思いついたぞ!私が倒したモンスターの素材を貴方に渡そう。それをルヴァン殿が売れば対価としては十分なはずだ!」


 (ようやく気付いたか)


これなら問題ないだろうと自信満々な表情のアリエス王女。俺はそんな彼女に対して再度呆れた視線を投げる。

 まぁ、基本的に人に尽くされる生活をしていたからすぐに思い付かないのも仕方ないが、それにしても遅すぎる。そんなんだから、他のヒロイン達に教えられた変なアピールをして自滅すんだよ。


「それなら受けてやる。が、死体だけ持ってこられても困る。今から解体の仕方を教えてやるよ。ついて来い」

「ちょっと待ってくれ!ルヴァン殿。サンドイッチが!私の大事な食料を入れる袋を!それか、食べてからにしてくれ!」


 俺は外套を掴んだままのアリエス王女を引き摺り、モンスターを倒すため安全地帯から出た。







 


 

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