二度の逃亡


 アリエス視点


 「本当に一般人だったのだろうな」


 後ろを振り返っても、尾けられている様子はない。高い戦闘技術と珍しい魔法を使うことから、今の今まで疑っていたが本当に偶々私を見つけ助けてくれた冒険者だったらしい。


「助けてくれたことに対する、十分な謝礼は置いてきた。彼とのことを考えるのはもう止めよう」


 そうしなければ、嫌な記憶を思い出してしまいそうだ。

 私は思考を無理矢理変え、これからのことを考える。向かう場所は昼までいた迷宮。私の目指す高みに登り詰めるためには、あそこでまた修行をするしかない。

 が、お父様とゲースァ公爵が放った騎士達のせいで、現在迷宮の出入り口は封鎖されている。これをどう突破するか?闇に紛れて、不意を突き入るか。正面突破か。それとも何か別の策を講じるか。

 ……思いつかないな。私も姿を隠す魔法が使えれば簡単に解決するのだが。

 

『あの魔法は光魔法の応用だ。光が自分に当たらないよう捻じ曲げている』


「光魔法は一応使えるが、光を捻じ曲げるとはどうやるのだ?確か、『蜃気楼』だったか」


 ルヴァン殿が使っていた魔法をどうにか出来ないかと、うる覚えの呪文を唱えるが魔力を消費した感覚がない。どうやら、何かが足りていないようだ。

 

「夜で光が少ないから発動しない?なら、自分で必要な光を集めて『蜃気楼』、いや駄目だ。鍵は光の量ではないのか?であるならば、光を捻じ曲げる方だな。だが、捻じ曲げるといってもどういう風に捻じ曲げればいいのだ?」


 右に、それとも左?上か下か。何処に光を捻じ曲げればいいのか私には分からない。.....いや、待てよ。そもそも光が当たらないことが重要なのではないか?私に光が当たらなければ。


「『蜃気楼』出来たのか?」


 光が私の体を通り抜けるの思い浮かべ、唱えると魔力が減ったのを感じた。だが、視線を自分の身体に向けるがいつも通り身体がはっきり見えている。


「確認のために誰かの前に出てみるしかない。見えてたら気絶させれば問題ないだろう」


 私は何処かに手頃な相手はいないかと周囲を見渡す。

すると、丁度道端に寝転んでいる男を見つけた。近づいてみるとかなり酒臭い。どうやら飲み過ぎて、帰る途中に寝てしまったようだ。これなら、私が見えていても王女だと判断するのは難しいだろう。私はこの男で試すことに決めた。


「起きろ。こんな場所で寝ていると身ぐるみを剝がされるぞ」


 そう言って、私は男の身体を揺らし起こす。


「…。ぅんん、なんだ?今、気持ちよく寝れてるんだ。邪魔するんじゃねよ。ふごぉ~」


 が、男はまだ寝たりないのか横になって再び寝てしまった。が、しかし起きてもらわなければ困るので私は身体を揺らし続ける。


「...っ.....ッツ!しつけえなぁ!?誰だ俺を起こそうとしてるのは!」


 そのかいあってか、男は大声を上げこちらを向いた。


「あっ?誰もいねぇじゃねか。もしかして、幽霊でもいるのか?」


 男は私が目の前にいるのにも関わらず私の姿が見えていないようで、辺りを不思議そうに見渡す。この反応を見るにどうやら、魔法はきちんと発動しているようだ。

 確認したいことが住んだので私は、この場を立ち去ろうとすると男がスンスンッと鼻を鳴らした。


「女の匂いがする。スンスンッ、この匂いは銀髪で巨乳のクール系美少女の匂い!スンッ、しかも、処女どこだ‼?何処にいる?この俺様が処女を優しく奪ってやるぜ。スンスンッ、そっちだな」

「ひぃーーーーー!こっちに来るなぁぁ~変態!!!!」

「ぐぼぉあ!?ッッ!」


 匂いを辿ってこちらに向かってくる姿が、あまりの気持ち悪さに思わず全力でビンタし、近くの壁に吹き飛ばしてしまう。

 

(やってしまった)


私の力は一般人よりも遥かに強い。全力でビンタすれば骨が折れて死んでしまう。


 「大丈夫か?」


  吹き飛んだ男の元に少し近づき、安否を尋ねる。


「そこだなぁーーー!」

「ヒイィー何で起き上がるんだーーー!」

「おんなぁーーーーーーー!」


 男は私の声に反応し、奇声を上げながらこちらに四足歩行で向かって来て、私はあまりの気持ち悪さに全力疾走でその場から逃亡。

 迷宮の中へと駆け込むのだった。


 

 


 




 




 

 

 


 



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