続 プロローグ
???視点
「「「「ぐもぉぉーーー!」」」」
「遅い!」
少女は依然として豚のモンスターオークの群れとの戦いに明け暮れていた。
自身が持つ持ち前のスピードを生かし、オーク達の間を擦り抜き、すれ違いざまに足を切り動きを封じる。
急ブレーキからの反転。
オーク達が痛みにのたうち回っている隙を見逃さず一閃。複数体の首を刈る。
大量の血を身体に浴びるが視界が邪魔されていなければ、問題はない。少女は血を拭うことなく戦闘を続ける。
オークメイジから放たれた火球を目視してから、私は大きく後ろに飛び躱す。
先程狩ったオーク達でジェネラルやメイジ以外のオークは屠った。
これで、先程から魔法を放ってきている邪魔なオークメイジ始末できる。
そんな、少女の考えを感じ取ったのかジェネラルがメイジを守るように立ちはだかる。
「ぶまぁーーーー!」
「それは悪手だ」
だが、それは少女の目論見通り。群れの長であるオークジェネラルが前に出たことで、後方にいるメイジ達は巻き込むことを恐れ魔法が打てなくなっている。
つまり、今は純粋な一対一。
オークジェネラルの一撃は破壊力こそ凄まじいが、鎧を着ているせいか動きが鈍重だ。そのため、速度でかく乱する戦闘スタイルの少女にとって躱すことは容易である。
ジェネラルの攻撃をギリギリのところで回避し、懐に飛び込み心臓めがけて剣を突き刺す。
ジェネラルは少しの間痙攣した後、地面に伏した。
オークメイジ達は自分達の長が死んだのを見て、パニックに陥りバラバラに逃走し始める。
が、少女はそんなことを許すはずもなく全ての首を刎ね戦いは終わった。
剣についた血を払い納めると、少女の脳内にレベルアップのファンファーレが響いた。その回数は一度。
つまり、レベルが一上がったのだ。
だが、この程度では少女は満足出来ない。
自分よりも、早く強くなっていた人を知っているから。
「足りない。もっともっともっともっともっともっともっともっと!倒さなければ。凡人の私はそうしなければ足りないのだ!」
取り憑かれたように少女はそう呟くと、フラフラとした足取りで次の獲物を探し始めるのだった。
◇
ルヴァン視点
「今日はやけに静かだな」
先程討伐し終えたオークジェネラルを解体しながら、気配察知をしているのだが生きているモンスターの気配を全く感じない。
普段なら、どんな場所にいようと何か生きているモンスターの気配が引っかかるのだが今日はそれがない。
そのせいで、今回の狙いであるオークジェネラルを見つけるのに一時間半も掛かってしまったのだ。
「オーク肉が高騰しているのを知った同業者が狩りまくってんのかね?」
実はこう言ったことは珍しくはない。とある素材が高騰するとそれを求めて、冒険者がその素材を持つモンスターが出現する階層に集中し、今のようにモンスターが居なくなることはある。
が、この迷宮にはオークが出る階層はもっと浅い場所にもある幾つかあり、ジェネラルやメイジなど上位種が群れとなって襲ってくるこの階層は狩りに向いていない。
そう考えると、素材欲しさで狩りをしているという線は薄い気がする。
だとすると、他に思いつくのはレベル上げか。ここは遭遇率もそこそこ高く、必ず群れで現れるため経験値効率はかなりいい。レベルを上げるに適している場所と言えるだろう。
ただ─
「するんなら、せめて今日じゃない方が有難かったなあ。全然オークの群れ見つかんねぇし」
─素材が高騰しているタイミングでして欲しくなかった。
これじゃあ普段よりも稼げない。
(他の階層で狙うか)
ピキピキッ。
そう思ったタイミングで、壁が割れ始め強大な気配を感じた。
「おっ、ラッキー。ボス部屋行く手間省けたな」
俺は背中から剣を抜き壁の方を見る。
相対する壁の中から現れたのは肌色のオークではなく、黒色の四メル近くもある巨大なオーク。
勘のいい人なら分かるだろう。
今目の前にいる、モンスターはオークメイジやジェネラルではない。
オークキング。
本来なら70階層にあるボス部屋の守護者として配置されており、この階層には本来現れないはずのモンスターだ。
だが、何事にも
理由は原作でも明かされていなかったが、この世界の学者は迷宮は大きな生き物で、自分の体内を乱す者を排除するため守護者を生み出していると考えている。が、偶に何もない時に現れることがあるため、その説があってるかどうかは未だ証明されていない。この世界が持つ永遠の謎の一つである。
「さぁ、かかってこいよ。正々堂々と相手してやる……とかいうと思ったか?…バーカ。冒険者が正々堂々戦うわけねぇねぇだろ」
横薙ぎ一閃。壁から這い出ようとしていたオークキングの間抜けな顔が宙を舞い、地面へと崩れ落ちた。
出来るだけ楽にモンスター倒す。それが、冒険者になってすぐに教えられる心構え。そして、モンスターが産まれる時は無防備なため、可能ならそこを狙えと口酸っぱく教えられる。だから、産まれるのを懇切丁寧に出てくるまで待つ奴なんていないのだ。
「本当についてるなぁ。これなら、早く終わりそうだ」
棚からぼた餅。降って沸いた幸福を噛み締めながら、俺は素材を迅速に剥ぎ取るのだった。
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