第一章 勉強会Ⅱ
勉強会が始まって一時間とちょっとが過ぎた。
そろそろ皆の集中力も切れてきている頃だろう。
「ちょっと俺、飲み物取ってくるわ」
「おー、サンキュー」
そう言うと新太はリビングに行きペットボトルとコップを取り出す。
先ほどは取り乱してしまったが、なんてことはない。二人きりというわけでもないし、ましてや友達と一緒。何も焦る必要などない。
「よし」
新太は一呼吸置き、店内に戻る。
「オレンジジュースでよか――」
「へぇ、新太のクラスメイトかぁ、え?新太幹部になったの?」
「聞いてないんですか?」
「あの子、何も言わないからー」
そこには、何故か新太の母が自分の友達と楽しそうに談笑している姿があった。
「マザアアアァァァ!?」
「ん?あ、これ皆で食べてねー」
新太を気にも留めずに母は炒飯を皆にふるまう。
「おい無視かよ、てか何でここにいるんだよ!」
「新太、酷いっ!そんな子に育てた覚えはありません!」
「そうだそうだー」「そんな言い方ないだろ」「良いじゃん」「死ね」
グッ、既に懐柔されているだと?あとどさくさに紛れて誰か死ねって言わなかった?
「いただきます、ん!おいしいー」
早速食べてるし……。
「ん、‥‥‥おいしい。これ凄くおいしいです」
珍しい、普段は落ち着いている雪奈も興奮気味である。
皆、胃袋を完全掌握されている。さすが、定食屋を営んでるだけはあるか‥‥‥。
「ありがとね。ん?あなた‥‥‥」
「はい?」
「ああ、ごめんね?気にしないで」
「?」
母が一瞬、雪奈を見て何かを言いかけて止めた。
「それよりも、アンタ。こんなに可愛い子達侍らせて」
「はべっ‥‥‥らせてねえよ!てか、もういいだろ?帰れよ……」
「えー」
「何だよその不満そうな顔‥‥‥」
う、鬱陶しい‥‥‥。
「じゃ、皆勉強頑張ってねー」
新太はそのまま母を部屋まで連れ戻した。
「で、何でここにいるんだよ……、今日出かけてるんじゃないのかよ」
「いやー、新太が友達呼んで勉強するって言うから、戻ってきちゃった。てへっ」
てへ、じゃねえよ。四十過ぎてきっついな。
「はぁ、まあご飯はありがとう。ご飯は」
念を押して嫌味を言っておこう。母はそんな新太を意に介せず話を続ける。
「ところで、あの中に彼女はいるのかしら?」
ちっ、本命はそっちか。てか何で自分に彼女がいることを知っている?新太は疑問に思う。
「おい、何で知ってんだよ?」
「え?お姉ちゃんから聞いたけど」
何であいつが知ってるんだ?……あ、そういえばポロっと言ったような‥‥‥。
「で、いるの?あ、もしかして……雪奈ちゃん?」
「は?いや、違うけど‥‥‥。てか、なんで名前?」
新太が見ていた限り名前を伝えた様子はないし、名前を呼んだ様子も見れなかった。
では、なぜ名前を知っている?
「あれ?違ったの?なんだ、運命かと思ったのに……」
「いや、ちょっと待って!どういう事だよ、運命?てか、なんで雪奈の名前知ってんだよ」
「え、だってあの子、新太と同じ小学校だったでしょ?だからてっきり‥‥‥」
「は?今なんて言った?」
「え?だから、雪奈ちゃんとアンタ、同じ小学校だったのよ」
「……はい?」
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