第50話 洞窟探索をする僕
パディラックの洞窟は森の奥地にあり、普段、人はほとんどこない場所のようだ。
パディラックの洞窟から流れ出る川をたどることで洞窟には難なく辿り着くことができた。洞窟の中は夏なのに肌寒いくらいの気温で洞窟の中から冷気が噴き出してくるのを感じる。
「結構広い洞窟だな! これなら問題なく斧を振れそうだ! 灯りはチェイスに任せるぞ! 早速冒険と行くか!」
光魔法で光源を作り僕たちの前を照らす。洞窟に入ってすぐの場所で既に三股に道が分かれているのが確認できた。
(オッ・サンどの道が正解か分かる? )
(左はすぐに行き止まりになるから右か真ん中だな。正しい道を進めば右と真ん中の道は途中で合流するが道の途中で更にいくつにも分かれているからな……方向感覚を保っていないと洞窟の中をぐるぐると歩き回ることになりそうだぞ。右の道が広いしそっちに行くか)
オッ・サンの指示に従い右の道を選んで進んでいく。その後も右に左にと進んでいったところでオッ・サンが警告を発した。
(前方から何かがやってくるぞ! 地面や壁を這うように動いているな……トカゲ型の魔獣だと思うが気を付けろ!)
前方からは全身真っ黒のトカゲがやってくるのが視認できた。動きはさほど早くはないが、体調2メートルほどある大型のトカゲだ。
「黒小竜か。本体の動きは鈍いが、舌がかなり伸びるし速いから気を付けろ。あと、たまにブレスもどきを吐くからな」
「竜って、あのトカゲ、ドラゴンなのですか!?」
「いや、トカゲだ! ブレスもどきを吐くから竜って呼ばれているだけだ。さっさとやるぞ!」
ロックが黒小竜に向かって斧で攻撃を仕掛けるが、黒小竜の舌でロックの振る斧の軌道を変え避けるため思うように攻撃が当たらない。ロックの攻撃を反らすとは黒小竜の舌はかなりの攻撃力を持っているようだ。
ロックが攻めあぐねているため黒小竜の足元を土魔法で陥没させ援護する。
体勢を崩した黒小竜の頭にロックの斧が直撃し、黒小竜の頭は真っ二つに割れ動かなくなってしまった。
「援護助かったぞ! 動きは鈍いと思っていたが予想以上に早かったな! 舌の威力も想像以上だ! この洞窟の魔獣は期待できるかもな!」
その後もコウモリやネズミの魔獣などが出てきたが、やはり他の場所に比べてこの洞窟の魔獣は一段上の力を持っているようだ。ロックもなかなか斧が当たらずに苦戦している。
「まだ先は長そうですし、今日はこのあたりで休みましょうか。お腹も減ったし黒小竜を料理して食べてみましょう」
「それもそうだな。少し早いが昼飯にするか!」
黒小竜の背側や足などは筋肉質であるが、腹側には程よく脂肪がついていてなかなか美味しそうである。他の爬虫類系の魔獣と同様に黒小竜の肉には筋も少なく、臭みもほぼない。これならば塩で味付けするだけで美味しく頂けそうである。
切り分けた肉に串を挿し火に当てる。しばらくすると肉の表面から脂がしみだしてきた。
「この洞窟の黒子竜はよほどいいものを食っているみたいだな! 油の匂いがたまらんぞ!」
「エサが豊富にあるのでしょうね。洞窟内のあちこちに流れている水の栄養が豊富なのかもしれませんね」
(栄養素も豊富かもしれんが、魔力もかなり含んでいるようだな。洞窟の奥に行くにしたがって魔力濃度も高くなっているようだぞ)
(洞窟の奥に何かあるのかな? 魔力濃度が高いところには強い魔獣もいるはずだし、神魚バムートも本当にいるかもね)
食事を終わらせて更に洞窟の奥へと進んでいく。やはり洞窟の奥に進むほど魔力濃度が濃くなっていくようだ。
(天然の洞窟かと思っていたが、どうやら人口の洞窟のようだな。どの通路も一定の高さと幅が最低限確保されているし、洞窟の構造も侵入者の方向感覚を惑わすように作っているとしか思えんぞ)
(誰かが作った洞窟ってことなら隠された財宝とかも期待できるんじゃない!? )
(本当に何かあるかもな。しかし、そうであればこれより先は罠にも気を付けて進む必要があるぞ)
「ロックさん、もしかしたらこの洞窟は人工的に作られたものかもしれません。罠が仕掛けられているかもしれませんので進行速度を緩めてゆっくり行きましょう」
「罠くらい俺が見極めてやるから気にするな! 罠を見つけるにはコツがあるんだ! 何か見つけたら教えてやるよ!」
筋肉バカだと思っていたが意外となんでもできる人だ。ちょっと尊敬してしまう。
しばらく進むとロックが床を指さした。
「早速あったぞ! 多分地面にスイッチみたいなものが仕掛けられているぞ!」
地面を見渡すがどこにあるか全くわからない。
(全く分からないけどオッ・サンには分かる? )
(だめだ。正直全くわからん)
「全く分からないのですが……」
「実際に見せた方が早いな! 地面を踏むと横の壁から何かが飛び出てくる仕掛けだろうな! 多分このあたりだろ! 行くぞ!」
ロックが自分の斧で地面を軽くたたいた瞬間壁から炎が噴き出してきた。
「ほらな! 気付かずに踏んでいたら丸焦げだったぞ!」
「かなり殺傷力のありそうな罠ですね……それより罠を見つける方法は全然分からないのですが……」
確かにロックが斧でたたいた部分にスイッチらしきものがあるのが見えるが土が被せられていては全く分からないと思うのだが……
「地面だけを見ていても気付くのは難しいだろうな! 今回の罠に気が付くポイントは炎が噴き出したところだ! 大体の罠には魔石が使われているんだが、魔石とスイッチを結ぶ導線が必ず伸びている! 魔石は魔力を空気中から少しずつ蓄える性質もあるが、導線などを付けると少しずつだが魔力を吐き出す性質もあるんだ! つまり魔力の乱れがある場所を探せばその周辺にスイッチもあるって原理だ! 罠が発動しても当たらなければ意味がないからスイッチの場所がどのあたりにあるかは少し考えればわかるだろ!? もちろん偽装されている場合もあるからあとは慣れだな!」
(なるほど……魔力の乱れがあるところに罠があるのか。確かにそれが分かればスイッチの場所についても大体の見当がつくな。魔石を使わない罠があったらあっさりかかってしまいそうだが……)
「万が一魔石を使わない罠があった場合はどうするのですか?」
「運が悪かったと諦めるしかない! まあ、魔石を使わない罠などそうそうないし、あったとしても殺傷力が弱めの罠か大規模な仕掛けで分かりやすいものばかりだからそれほど気にする必要はないと思うぞ!」
(確かにこの世界にはほとんど機械仕掛けはないからな……それほど気にする必要はないのか? )
その後も洞窟の奥に行くほど罠が多くなっていくが全て魔石を使った罠で難なく回避することができた。洞窟の奥地に着くころにはオッ・サンもだいぶコツがわかったようでほとんどの罠を発見できるようになっていた。ちなみに僕は魔力を見ることができないのでオッ・サン頼みであるが……
「あそこから光が漏れ出ていますね……いかにも怪しいのですが……あれも罠ですかね?」
「いや、多分あそこが目的地の地底湖だ! 溢れる魔力の一部が光になっているんだろ!」
光の漏れだす方向に向かいしばらく向かうと広い空間につながっていた。洞窟内だというのに昼のように明るいだけでなく、地面には草や木が生え、魔獣があちらこちらに確認できる。
「めちゃくちゃ広いな! 下手な町よりよっぽど広いぞ! これだけでも大発見だ!」
「地底世界って感じですね……あっちにある湖が地底湖ですかね? 湖の近くに建物っぽいものもありません!?」
洞窟からの道は地底正解の崖の上につながっていたようで、奥の方まで見渡すことができる。地底世界の半分ほどは湖でそのほとりにいくつかの建物が立っているように見えるのだ。
「確かにそれっぽいな! 行ってみるか!」
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