『ラブソング:多田くんは恋をしない ED』 バレンタインデーは、誰に何をあげてもいい日なんですよね?

 バレンタイン当日、はやせは例のごとく唱子先輩の家へ招かれた。


「月並みですが、チョコレートですわ。受け取ってくださいませ」


 唱子先輩と優歌先輩から、チョコをもらう。といっても市販のものだが。


「ありがとうございます。オレからもどうぞ」


 お返しに、はやせもお返しに包みを渡す。


「ご丁寧に。ありがとうございます」

「わあ、クッキーだ。ありがとー」


 透明な包みを、赤いリボンでラッピングしている。中身は、小さなクッキーだ。


「バレンタインデーは、誰に何をあげてもいい日なんですよね?」

「そうなんですわよ。よくご存知ですね?」

「リンから聞きました。な?」


 はやせが、隣りにいるリンに話しかける。


「大切な人なら、男も女も関係ない」


 メイド服姿で、リンはサムズアップをした。


「しかも手作りだよー。すごいねー」

「はやせと二人で作った」

「うわー。いいカレシさんだぁ」


 心からうれしそうに、優歌先輩が包みを抱きしめる。


「次回から二人きりになりますが、よろしくて?」

「オレたちで、部を盛り上げていきます」

「たのもしいですわ」


 その後、リンが特製の料理を振る舞って、はやせも手伝った。


「はやせ。わたし、楽しい」

「オレも楽しいよ。これからもよろしくな」


 はやせが伝えると、リンがうれしそうに笑う。


「でも、二人はいなくなる」

「寂しいよな。でも、それは受け入れていこう。いなくなるわけじゃないんだ。学校に行けば、また会えるじゃん」

「うん……」

「オレが、そばにいるから」


 手をつなぎ、はやせを安心させる。


「ありがと。ありが、と」


 鼻をすすりながら、リンがはやせに抱きついた。


 同時に、はやせの涙腺も決壊し始める。


「ねえ唱子さん。こういうとき、どういう音楽流せばいいかな?」

「もちろん、『多田くんは恋をしない』の『ラブソング』ですわ! 主人、公バージョ、ンとか、いか、がで、しょうか……」


 いつもはクールビューティな唱子先輩も、うつむいたままだった。


 優歌さんは、本当に『ラブソング』を流し始める。


 みんなの鳴き声を、隠すかのように。


 しばらくして、リンは泣きつかれて眠ってしまった。


「じゃ、おぶって帰ります」


 リンを背負って、はやせは部屋を出る。


「ここからは、お二人でしっぽりとなさってくださいな」

「また学校でねー」


 今度こそ、二人とはお別れだ。


「あの、先輩方、お元気で」


 二人は黙礼して、ドアを締める。


 リンの家までの道のりで、リンが目を覚ます。


「しまった。二人にちゃんとお別れ言ってない」

「いいじゃん。また会えるんだから」


 アニソンを愛している限り、二人にはまた会える。


(おしまい)

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マイナーアニソン友の会 season2 ~カバーソング友の会~ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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