恋愛コンクルージョン
第一話
泉がそろそろ奥谷に告白してる頃なんじゃないかと思っていたのだけれど、ウチが思っているよりも泉は早く告白をしたようだ。あと一時間くらい奥谷は帰ってこないんじゃないかなって思っていたんだけれど、ウチの予想よりも早く奥谷が帰ってきたのは不思議な感じがした。
「いつにも増して暗い顔してるけどなんか嫌な事でもあったのかい?」
「いや、別にそう言うわけでもないけどさ。河野はなんだかいい事でもあったのか?」
「ウチは大体良い事しかないけどさ。奥谷もそろそろ恋人作ろうとかって思わないの?」
「俺はそういうのあんまり興味無いから。河野の彼氏ってどんなやつなのか見た事ないけど、この辺に住んでるの?」
「お、もしかしてウチの事に興味あるのかな。でもね、奥谷には教えてあげないよ。つか、泉にも紹介してないのに奥谷に教えるわけないっしょ」
「なんだ。お前らって仲いいとは思ってたけどそんな関係だったんだな。意外だよ」
「女子にはいろいろあるって事さ。でも、そんな事より奥谷が元気無さそうな感じなのがウチは気になるんだけどな。もしかして、また不良に絡まれたりしたわけ?」
「そんなわけないだろ。俺はもう絡まれないようにあんな奴らは徹底的に無視することにしたからさ」
「なんだよ情けないね。それにしてもさ、今日は朝から泉が上機嫌だったんだけど理由って知ってる?」
「いや、そういうのは知らないな」
「そうなんだ。そういうやり取りとかはしてないわけ?」
「あんまりしてないかも。それってさ、俺よりも河野たちの方が聞いてたりするんじゃないの?」
「実は聞いてるんだよね。奥谷をからかってみただけだよ」
「そういうのは良くないと思うよ」
「まあね。奥谷が一人で帰ってきてるって事は、泉にとっていい返事はもらえなかったって事だよね?」
「そういう事だな」
「もったいないな。奥谷と泉だったら学校中から祝福されそうな気がするのにな。もしかして、受験の事を考えて振ったとかじゃないよね?」
「多少はそれもあるかもしれないけど、そういう事じゃないんだよな。俺は宮崎の気持ちに答えることが出来ないってだけの話だよ」
「それって、愛莉の事も関係しているわけ?」
「え、なんで?」
「え、ってそんなに驚くかね。図星って顔してるけど、当たってる?」
「いや、どうしてそこで山口の名前が出てくるのかなって思っただけなんだけど」
「何となくね。普通だったら泉を振るなんておかしな話だとは思うけどさ、ここ数か月の奥谷の様子を見てたら普通に気づくよね。たぶん、気付いていないのって泉くらいじゃないかな」
「マジかよ。それってさ、山口も気付いてたりするのかな?」
「そりゃ気付くでしょ。あんだけ熱い視線を送られていたら誰だって気付くって。きっと泉は奥谷の事しか見てなかったから気が付いていなかっただけで、奥谷の視線の先を見てたら誰だってピンとくるよ。暇があれば奥谷って愛莉の事を見てるんだもんね」
「うわ、さりげないつもりだったのにバレバレだったのかよ。なんか恥ずかしいな」
「その事で聞きたいことがあるんだけどさ、奥谷って愛莉のどこを好きになったの?」
「どこって、やっぱり性格かな。俺は自分の意見をはっきり言えない方なんだけどさ、山口ってなんでも自分の意見を押し通すだろ。それってかっこいいなって思ったのが最初かな。って、なんで俺が河野に教えないといけないんだよ。そんな事はどうでもいいだろ」
「ウチが奥谷の好きな人を知ったところで何の興味も無いから気にしなくていいよ。他にはどんなところが好きか言ってみろって」
「いや、もう言わない。どうせ皆に言うだろ。そんなに簡単に教えたりはしないから」
「なんだよ。教える代わりに見返りを求めるとか男のくせに小さいやつだな。って言っても、ウチが奥谷にあげれる物なんてなんにも無いんだけどな。そうだ、ウチが奥谷にパンツ見せてあげるってのはどう?」
「それはおかしいだろ。恋人いるのに他の男にパンツを見せるとかおかしいって」
「そっか、奥谷にとってはウチのパンツなんて何の価値もないただの布切れって事なんだね。ちょっと女子としてショックを受けてしまったわ」
「いや、そういう意味じゃなくて。そういうのは好きな人にだけ見せればいいんじゃないかなって事だよ」
「ええ、別に減るもんじゃないんだからいいんだけどな。もしかして、パンツよりブラの方が興味あったりする?」
「だから、そういうのは好きな人にだけ見せとけって。それより、なんで河野が俺の家の前で待ってたんだよ?」
「なんでって、泉の告白の結果が気になったからに決まってるじゃない」
「それだったら宮崎の方に行けよ」
「バカだな。そんなことしてもしも失敗してたらどうやって慰めたらいいのさ。ウチはそんなに優しい言葉はかけられないんだからね。ってか、本当に奥谷が振るとは思わなかったな。奥谷って肝心なところで押しに弱そうだから流されちゃうんじゃないかなって思ってたのに、意外と芯はしっかりしてるんだね」
「どういう意味だよそれは。だってさ、こういうのってハッキリさせといた方が相手にとってもいいだろ。変に期待を持たせるよりもいいと思うぜ」
「それはあるかもね。小さいときは泣き虫だったのにいつの間にか立派に成長しちゃってさ」
「小さい時って、いつの話だよ」
「あ、やっぱり覚えてないわけだ。この前話した時もよそよそしかったし、なんか距離を感じたんだよな」
「え、そんなに前から知り合いだったっけ?」
「もう、ウチと奥谷と愛莉って同じ病院で産まれた仲じゃないのさ」
「いやいや、それを言ったら俺らの学年はほとんどのやつが一緒になるだろ」
「ま、それはそうなんだけどね。産まれた時の記憶なんて何にも覚えてないけどさ。でも、小さいときに奥谷を見ていたってのは本当だからね」
「俺は全く記憶に無いんだけど」
「それはそうだよ。だって、ウチが家の中からこっそり見てただけだからね。泣き虫信ちゃん」
「そういうのやめろって。嘘かホントかわかりにくいだろ」
「ま、見てたってのは本当だけどね。嘘じゃないんだよ。そうだ、そろそろ泉も落ち着いたころだと思うし、ちょっと様子を見てくるね。誰かさんに振られて落ち込んでいるだろうからね」
「その言い方も良くないと思うぞ。俺が言うような事じゃないとは思うけど、宮崎の事を頼むな」
「そう思うんなら付き合ってあげればいいのに」
「それはそうなんだが、俺もけじめをつけたいって気持ちもあるからな」
「そっか、まあ、奥谷らしいって言えばそうなのかもしれないね。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
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