第44話ひとりぼっちのダイ

清々しい朝だーー

なぜヤッた次の日の朝はこうも満たされた気持ちになれるのだろう。


僕はベッドから降りた。

マイさんはまだ眠っている。

昨日の疲れが残っているのだろう。

それにしても、昨日のマイさんは凄かった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「マイさん、前に約束しましたよね? 僕は絶対にマイさんのこと襲わないって。だから、僕を襲って貰えますか?」


「ちょっと、わたし初めてなのよ!?」


「約束は命より重いんですよね?」


ーーニチャア


昨日の夜、僕は当初マグロ男になった。

全裸でベッドに横になるだけ。

手を頭の後ろにおいてマイさんを下から眺める。

マイさんは悔しがっている。

マグロ男って、初代仮面ライダーの敵キャラみたいだ。


『出たな! 怪人マグロ男!』


ーーその後処女のマイさんにリードして貰い、僕たちは繋がった。

さすがに最後は下から突いてあげたのだが。

初めは戸惑っていたマイさんも、スイッチが入ると本能のまま僕にむさぼりついてきた。

もともと強い体のマイさんは、初めての痛みなど気にせず、快楽に溺れていた。

僕は遂に童貞(仮)を卒業出来た。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「これで僕も仮免ライダー卒業かな? おっと、僕はライドされる側だった。」

はっきり言って、処女に騎乗させるなど鬼畜の諸行だろう。

などと考えながら僕は松風の様子を見に行った。


「ブブルルル……(ご主人……何であなたからメスの匂いがするのかしら?)」

今日の松風は不機嫌そうだ。

最近出番が減っていたからだろうか。


「ごめんな松風、最近忙しくてなかなか構ってあげれなくて。今日は朝からブラッシングしてあげよう。」


「ブブル、ブブルルル!(ご主人……あなた、あのメスと交尾したわね? わたしというメスがありながら! サイテー!!)」


ドガン!!


僕は松風に突進されて吹きとばされた。

あばら骨が何本か折れる感覚があった。


「つつつ……ど、どうした松風、落ち着きなよ。」


「ブブル!(もうしらない! 私たち別れましょっ! さよならっ!!)」

松風は風のように走り去って行った。


「ま、待ってくれ! 松風! マツカゼーッ!!」

僕は痛みで追う事が出来ない。


「ヒヒーン!!(ぐすっ……もっと強く、もっと美しくなって絶対にご主人のこと見返してやるんだから!)」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


その一月後、王都では魔法学校の入試があった。

そこに史上初の馬の合格者が出たのは、また別の話……


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


僕とマイさんは松風に逃げられたあと、時間が無いので急いでエイオンに帰った。

領都からの帰りは松風がいなかったため、乗り合い馬車を利用した。

もちろんマイさんが金を払った。



ーー帰ってから二週間が経った。


今はマイさんの部屋の中にいる。


「どこ行っちまったんだよ。松風……」

僕は松風の捜索依頼を出し、自らも毎日探しに出ている。


「逃げたものはしかたないでしょ? くよくよしない!」


ーー基本マイさんは淡泊だ。

性病が治った日に僕たちはアダルティな関係になった。

僕はてっきり甘々な感じになると思っていたのだが、マイさんはいつも通りに接してくる。

またヤらしてくれると思っていたが、僕がマイさんのベッドに入ろうとするとグーパンされた。

どうやらマイさんと交わした襲わないって約束は継続中らしい。

僕はマイさんに襲われるのを待つしかない。


「マイさん、僕のムスコを慰めて下さい。」

マイさんとの距離を詰める。




「いやよ!」

本気で嫌そうな顔をされた。


「どうしてですか? 僕はこんなにもマイさんの事を思っているのに……」

マイさんの事を考えるだけで下半身が反応してしまう。


「わたしの事を思うなら、近寄らないで!」


「そんなぁ……」

エイオンに帰って来てからずっとマイさんは体調が優れないらしく機嫌が悪い。

生理が近いのだろうか。

仕方ないので僕は松風の捜索に出た。



「お腹の子に何かあったらどうするのよ……」



その日の夜ーー


今日も松風を見つけられず、部屋に帰るとマイさんはいなくなっていた。

ベッドの上には一通の手紙が置いてある。


『体調が優れないので実家に里帰りします。部屋の今月分の月謝は払ってありますが、すみ続けるかどうかはダイが決めて下さい。 ハーマイオニー』

どうやら僕はマイさんにフラれたようだ。


なんでだよ……


死ぬ時手を握ってくれるって約束はどうするんだよ……死ぬより重いんじゃないのかよ?

僕はその晩一睡も出来ずに朝を迎えた。

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