2章 暗黙の出国

第5話 異世界<未来

 俺の名前は木下健太、16歳の高校生だ!・・・って言いたいが、4年前にこの異世界に迷い込んでしまった様で、家に帰る事なく4年が過ぎてしまった。絶対か〜ちゃん、怒ってるだろうな・・・早く帰りたい・・・


 この異世界は3つの国に分かれているらしい。俺達人間がいる国ピカトーレンの他、ラマ国とバドーム帝国があるらしい。それぞれの国でまた様々な種族がいると聞くが、3カ国仲が悪いらしく、いつ戦争になってもおかしくないみたいだ。


 その3カ国共通で使用されているのがバピラ語という言葉だ。俺がこの異世界に来た時、猫とピクシーが喋っていた言葉がバピラ語という事でもある。そんな言葉も、このピカトーレンにある教養場''マーズ"で教わった。日本で言う学校みたいな場所だ。ここにきて4年も経てば嫌でも覚える事が出来た。


 そんな俺も、親を失った子供施設"シュール"に住んでいる。他にも親を持たない奴らが5人いるから、俺とシュケルのじじいを入れて7人で暮らしている。どんな奴らと暮らしているかは・・・少しずつ話していこうと思う。





 シュールの施設の朝は早い。毎朝6時には全員起きている。朝起きるとシュケルの手伝いが始まる。しかしこの世界には時計はなく、流回矢るえしと言う時計より不便な、この異世界の時計が存在する。簡単に言うと、針が1本のみで、ぐるっと4周すると1日が終わる。つまり、1周で6時間なのだ。


 そんな流回矢るえしが1周すると・・・


ガンガンガンガン!!


「朝じゃ!さあみんな!起きるんだ!!」


 鉄の棒と鉄の棒を叩き合わせ、無理にでも起こそうとするシュケル。毎日毎日寝不足でも必ず起きなければならない。


「クォラ!健太!リョウ!さっさと起きろ!!リサはもう朝食当番の準備をしておるぞ!」


 健太とリョウは朝が弱い常習犯になっていた。なかなか起きず、シュケルは毎朝苦労をしていた。


 リョウは、両親を戦争で失い、シュケルが引き取った。このシュールの施設に7年住んでいるウルフ族である。眠たいながらもリョウは起き上がり、朝の掃除に取り掛かる。


 しかし健太は・・・


「ZZZZZZ・・・ムニャムニャ」


「いい加減にしろ!マーズに遅刻しても知らんぞ!!」


「ん〜〜〜毎朝毎朝うるさいなぁぁぁぁあああ〜〜〜あ〜よく寝た〜〜」

 健太は閉じる目蓋まぶたを指で無理矢理開かせる。

が、そんな事をしても、眠たい時は眠たいのだ。


「じじい、今日はマーズ休むわ。おやすみなさ・・・」


ガルルルルルルルルル

シュケルは唸った。唸りは基本的に脅えた時に本能で唸るが、ウルフ族の唸りは、ほぼ威嚇である。

「健太!今日と言う今日は許さんぞ!」


「ハワワワワ、ごめん!起きる、起きます!!」


「だったら早くリョウと掃除をせんか!!」

健太はそこからは何も言わず、ひたすら準備、ひたすら掃除の段取りを行う。


そんな毎日を過ごす健太。しかし、4年経っている事は、猫族のシエルが迎えに来ると言う事でもある。





「シエル様?4年経ちましたが、あの人間を迎えに行くのですか?」


 ラマ国にある飲み屋"うるおい屋"にて、仕事を終えたメルーは、シエルに問いかけた。


「うむ、明日朝、ピカトーレンに出向く。必ず我が研究員にするのだ・・・」

4年経っていたが、シエルは諦めても、忘れてもいない様子。


「でもシエル様?あの人間、素直に来てくれるのでしょうか・・・」


「奴は・・・おそらく古代文明からダークルカンに連れ去られた人間。元の時代に帰ろうとするならば、必ずラマに来てくれる筈だ、ニャハハ、シュケルめ、あの健太こぞうは連れて行くぞ!」


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