稲荷紺のツリーダイアグラム

 狐と呼ばれた優男の異能運命の世界樹ツリーダイアグラムとは、枝分かれしている運命を枝線図として認識し、任意の運命を選択しある程度操ることができる能力である。運命の分岐点までの過程を端折る事ができる。そして、時間をかければかけるほど運命の解像度は上がり、選択できる運命も増えていく。また、この能力の最大の利点は運命選択をやり直す事ができることだ。

 今、運命が巻き戻る。


◆◆◆◆◆◆


 僕はエンプティの懐へと入る。額に当てられた銃口を外し頭突きをくらわせる。

「ハハハハハ!!流石!やるな、狐さん」

 一旦離れて口元を左手で抑えながらエンプティは嗤う。右手に握られた拳銃は僕に向けられたままだ。

「狐さんは俺が守るって言っただろうがっっ!!!」

 神ひなさんは両手を前に出して力を入れる。カチャッ、と撃鉄が鳴る。しかし、銃声は響かなかった。

「さて問題です。最初に時間旅行にいった銃弾は何処にあるでしょうか」

 神ひなさんがそう告げると同時に、何処からともなく現れた銃弾がエンプティを貫いた。

「三下は倒せたけど、まだまだ敵はやってくるの?」

「そうだよ、狐さん。とりあえず何か食べようか」

 と、神ひなさんは言った。それに促されるように僕は付いて行った。

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