第56話 王都決戦
宣戦布告後、スゥインスタの国境軍はクロエの一騎打ちを断りマリの【
その後散発的な戦闘は行われたがスゥインスタ軍は簡単に王都近郊までの進軍を許した。
進軍中はむしろ軍より義勇兵的な冒険者と思われる者達で構成された遊撃部隊の方が厄介だったのでギルティスに対応するように命じると見事に捕縛してみせた。
母上の方も上手くエンハイム軍を王都に抑え込むことに成功し動き出したファーレン家の軍を迎え撃つ準備を整えているとの連絡が入った。
「はぁ、幾らグラシャス軍が精強とはいえどちらも一国の軍なのに情けないのう」
ナナがスゥインスタの王都目前でそのような嘆嗟のため息をこぼす。
「そんな事を言ってると思わぬ事態を招くぞ」
と僕が言ってるそばからスゥインスタ王都城門付近の地中が盛り上がると地面から巨体な魔物が八体ばかり這い出してくる。
反応するようにプラチナドラゴンの姿の甕星が咆哮を上げる。
「どうやら同類のようてすね。相手が魔物なら私達で行きますが」
反応を見ていたアリアから声が掛けられる。
「クロエどうだ?」
「はっ。私を含めた星十字には各一体ずつを相手してもらい残りを我が隊とギルティス隊で対処します。というわけで指揮は任せるが良いなモカ」
「はいはい、こっちは任せて姉様は遠慮なく暴れてきていいですよ、いままでの相手が弱すぎて欲求不満でしょう」
クロエとよく似た姿の双子の妹ティエリモカが冷静に告げる。
「ハッハッハッ、さすがわたくしの妹だよく分かってるな」
軍装に身を包みメイドの時が嘘のように凛としているクロエが笑って答える。
「兄様……私にも機会を今度こそあの魔獣を屠ってやります」
クラリスの気持ちも分からなくはないが今の実力ではまだあの魔物には及ばないだろう。
だから条件をひとつ付ける
「ハッキリ言えばクラリスでは実力不足だ……だから甕星と共に戦うのであれば認めよう」
「なっ、兄様本気なのですか、元はあの女なのですよそれを信用しろと?」
「ラボでも調べさせたが記憶は失われ僕の命令にも従順だ問題ない」
「……分かりました」
クラリスは僕の隣で控えている甕星を見詰める。
甕星もクラリスの方を見やる。
「以前の貴方とは分かり合うことは出来ませんでしたが……今は私の為ではなく兄様の為に共に戦ってください」
「………」
言葉が通じているのかは疑問だが心なしか甕星が頷いたように見えた。
地に伏せて背に僕以外が騎乗することを許しクラリスが跨る。
「では、星十字とクラリスは各一体ずつキメラブロブを殲滅せよ」
「「Yes,Your Grace」」
皆の声が重なり一斉に散る。
「ではメビウス閣下。我が隊にも下知を、姉様に負けぬ槍働きをご覧下さい」
「ああ、俺も負けてられんな。防御は任せて安心して攻撃に集中してくれ」
モカとギルティスが僕の合図を待つ。
「それでは第三、第四師団残りの魔物を蹂躪し我がグラシャス軍の威光を示せ」
僕の合図と共に第三師団が先陣をきり後詰めで第四師団が続く。
本陣には数名の近衛とナナが僕と共に残る。
「本陣がガラガラじゃな、これが並の将なら正に狙い時なのじゃが」
「ナナ、そう言うこと言うと……」
遠巻きに僕達の様子をうかがっていた者たちが動いてこちらに姿を現した。
「言うとなんじゃ。知っておるぞ『ふらぐ』と言って、本当にこやつらの様な大将首を狙う暗殺部隊が姿を現すのじゃろう」
マリから前世の知識も色々取り入れているようでナナにおかしな言葉遣いが増えてきていた。
「まあ、そうなのだが」
「ふふ、哀れな奴らじゃ、妾は並みの将ならと言うたのだが聞こえたなかったようじゃのう」
「…………」
無言のまま僕らとの間を詰めてくる黒装束の集団。近衛が間に入ろうとするが手で制する。
「聞け……ここで引けば命は取らぬ、但しあと一歩でも踏み込めば容赦はせん」
無言の集団はそれでも警告を無視して一歩前に踏み出す。
「はぁ、警告したのだがな」
僕は右手をかざし【
「愚かだな、本陣がなぜ手薄なのか理由を考えれば迂闊に手出しは出来ぬのにな」
目の前で首を飛ばしたのだが気にする様子もなくナナが淡々と告げる。
周囲の戦局を確認するために視点を空に飛ばし確認する。
アリアは巨大な龍の姿に変わったキメラブロブを再生不能にまで切り刻み倒していた。
マリは金色に輝くメタルゴーレムの姿などお構いなしに【
クロエは次々に変わるキメラブロブの姿に合わせて武器を変え的確に止めを刺していき変わる姿がなくなった液体をリオ先輩から渡されたと思われるカプセルに回収していた。
ミィは前回同様絶え間ない連撃を浴びせ続けて再生不能まで追い込むと新しく覚えた【極大闘波】で跡形もなく消し飛ばした。
一番心配だったクラリスの方は思った以上に連携が取れておりクラリスが相手を弱らせた所を甕星が相手の情報を吸収してとり込んでいくパターンで倒しきっていた。
モカとギルティスの部隊は三つに別れ、モカを主力とした部隊で攻撃を行い残りの二部隊はギルティスの支援を受けつつ揺動にあたる。
そうして主力部隊で各個撃破していき全てのキメラブロブを倒し切る。
恐らく最大の戦力であったキメラブロブと暗殺部隊を潰されたスゥインスタ側には反撃する気力はなかったようであっけなく降伏勧告を受け入れた。
しかし今回の黒幕のひとりと思われる前世での義母で現スゥインスタ王妃、メリアーナ・ニナ・スゥインスタは既に王宮から姿を消していた。
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