第3話
〇道
雨の中、俯きながら帰っている純平。その表情は暗い。
清子の声「純平」
驚いて顔をあげる純平。
そこには清子が立っている。
純平、焦るような戸惑った顔で
純平「清ちゃん……」
清子「なにそのやばい奴に会っちゃった、みたいな顔」
純平「いや、だって帰りはいつも遠藤さんとかと帰るから……なんでかなぁて」
沈黙する、純平と清子。
清子「帰ろうよ」
純平「……うん」
並んで歩いている純平と清子。沈黙が続いている。
清子「やめておきなよ」
純平「え?」
清子、前を向きながら淡々と
清子「どうせ学校サボって遠足の真似事する気でしょ。場所は、稲田自然公園とかじゃない」
純平、脚を止めて驚愕している。
純平「なんで場所まで……」
清子、純平より少し先を進んでから振り返るようにして純平を見る。
清子「高橋とかが考えそうなことだよ。というか男子が単純なだけか。場所はお金を使わずにそれなりに遠くて雨でも遊べる場所って言ったらあそこくらいでしょ」
純平、声を失っている。
清子「すぐにバレるよ。怒られる割にはそんなに楽しくないと思うし。純平は多分、罪悪感の方が勝っちゃうと思うから」
純平、俯きながら
純平「でも、行きたいんだ」
清子「……昔から外で男の子と遊ぶより私と人形遊びする方が多かったじゃない。屋外は好きじゃないでしょ」
純平「このこと、他の人には言ってないよね」
清子「言ってないよ」
純平、拳を握り締めて俯いている。
清子、それを見て独り言のように
清子「男の子なんだ。意外と」
純平「え?」
清子、純平を鋭い目線で見て
清子「また、明日ね」
去って行く清子。
純平、清子の背中をじっと見つめている。
〇マンション・藤矢家の部屋・中(朝)
リビング。出かける準備をしている佐恵。朝ご飯を食べている純平。
佐恵「今日、残念だったわね。遠足」
純平「……うん」
窓の外を見る、純平。外は変わらずに雨が降っている。てるてる坊主の数が昨日よ
りも増えて五つになっている。
佐恵「梅雨の時期は仕方ないかもね。今度、清ちゃんの家族とお出掛けしましょうか」
純平「……うん」
佐恵、純平を気遣いながら
佐恵「清ちゃん、もうすぐ来ると思うから、その前には準備しておくのよ」
純平「わかってる」
佐恵「じゃあ行ってくるわね」
リビングを出ていく佐恵。
純平、急いで朝食を食べ終わると立ち上がる。自室からランドセルではなく リ
ュックを持って出てくる純平。
純平「行くんだ……」
リュックを見つめて力強く握っている純平。だが、その顔はどこか不安そう。
純平、ふと時計を見ると時刻は七時五十分。
純平「やばい。もう出ないと間に合わな」
はっとする、純平。
玄関の方を見るが、誰かが来る様子はない。
純平「清ちゃん」
純平、決心したようにリュックを背負う
〇マンション前(朝)
雨の中、マンションから出て来る清子。一度、マンションを振り返るもため息をつ
いてまた歩き出す。
〇道(朝)
リュックを背負い、楽しげに走っている純平。
遠目に亮人と賢太の姿を見つけて手を振る。手を振り返している亮人と賢太。
天気は雨。だが雲の切れ間から僅かに日の明かりが差し込み、純平の進む道を照ら
している。
純平、一度空を見上げて笑いながらジャンプする。
きみの冒険者(短編) KH @haruhira
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