きみの冒険者(短編)

KH

第1話

〇高層マンション・外観(朝)

 薄暗い空模様。大雨が降っている。


〇同・藤矢家の部屋・中(朝)

 リビング。バルコニーへ出るガラス戸の前でしかめっ面で、雨降る空を睨んでいる 

 藤矢順平(12)。ガラス度のカーテンレールには三つのてるてる坊主が吊されて

 いる。


純平「なんで……」


 リビングに入ってくる、スーツ姿の藤矢佐恵(37)。


佐恵「空睨んでも晴れないわよ、純平。早く学校の準備しなさい」

  

 部屋の掛け時計を見る佐恵。時間は七時四十五分。

 インターホンが鳴る音。


佐恵「ほら、来たわよ」


 佐恵、室内インターホンのスピーカーまで行き


佐恵「どうぞ」

   

 ぶすっとしたままの純平。

 そこへリビングにやってくるランドセルを背負った佐久間清子(12)


清子「お邪魔します」


佐恵「ごめんね、清子ちゃん。純平まだ準備できてなくて。先に行ってくれていいわよ」


清子「いえ。そうだろうとは思ったので」


 清子、純平を見て呆れた表情。


佐恵「いつもごめんね。じゃあちょっと遅刻気味だから、おばさんもう出るわ。純平っ、いい加減にしなさいよ」


 リビングを出ていく佐恵。

 恨めしそうにガラス戸越しに空を見ている純平。

 清子、純平に歩み寄って


清子「まだ中止って決まったわけじゃないでしょ」


純平「天気予報じゃもうずっと雨だよ」


清子「いずれにせよ、明日の話。私も遅刻するから早く準備して」


 純平、重い腰を上げて自室へ向かう。

 清子、その背中を見ながら壁に張ってあったカレンダーを見る。

 六月のカレンダー。25日は丸が付けられ、遠足と大きく書かれている。


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