第523話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略二日目の映画
主人公の女性はいずこかの国の姫の様で、退廃した国土で細々と生き抜く民族を雄々しく導く長の娘だそうだ。始め大きな
そしてあの白髭の剣士の強いことといったら
あの無鉄砲な若者はアールの猪突猛進さを思い起こさせたが、まだアールよりは頭が良さそうである。だが心根は真っ直ぐの様で好感が持てた。いずれ大人となった時、人々を正しく導く名君と成りうる存在であろうことは想像がついた。
やはり寝ていた。
祐介は体温が高い。そして、寝入ると身体の表面がほかほかしてきて汗ばむ。道理で先程からくっついている部分がべたべたすると思ったら、すっかり眠ってしまっていた訳だ。
映画は巨神兵なるものがあちこちを焼き払っている。気になるが、祐介も起こしたい。リアムは画面を気にしつつ、祐介の頬をぺちぺち叩いた。
「祐介、起きろ。毎度毎度何故映画を観ると寝るのだ」
「……んー……もうちょっと」
まだ眠りは浅いらしい。これなら起きそうである。
「ほら起きろ、これからがいいところの様だぞ」
更にぺちぺちと叩くが、煩そうに顔を顰めるだけで目は開かない。そうこうしている間に、主人公の女が蟲に撥ねられて死んでしまったではないか。
「祐介、ほら起きるのだ」
両頬を摘んで引っ張る。変な顔が出来上がってしまい、思わずリアムはぷっと吹き出してしまった。映画も面白いが、こちらも面白い。今度は両頬を手のひらに包んでむにむにとしてみる。祐介の頬はすっきりしていて若干硬めだが、それでももっちりとしているのは若さ所以であろう。
「祐介! こら起きろ!」
頬を思い切り押すと、唇がむにっと出て来た。祐介の唇は若干薄めだ。先日思い切りキスされまくった時、混乱しながらも薄いが柔らかいなと思ったのを思い出してしまった。
少しだけ、触ってみても起きないだろうか。
リアムはそうっと片手で頬を挟み、出ている上唇に人差し指の腹でゆっくりと押してみた。おお、柔らかい。下唇はどうだろうか。そちらの方がぷっくりしているから、きっともっと柔らかいに違いない。リアムは思い切ってぷにぷにしてみた。おお、こちらの方がやはり柔らかい。そして祐介はまだ寝ている。よく寝る奴だ。
リアムがそっと頬から手を外すと、祐介の頭がガクッと前に落ち、リアムの胸にボン! と乗り、祐介はゆっくりと顔を上げた。目は殆ど閉じていて、顔を思い切り顰めている。
「……キス一回分」
「は?」
「キスした」
リアムは慌てて否定した。
「していないぞ! 指で触って遊んでいただけだ!」
「……何で遊んでたの」
祐介の目が段々と開いてくる。目が合ってしまった。悪戯がばれてしまい、リアムは大いに焦り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます