第464話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十階の混浴
温泉の周りをぐるっと探してみたが、やはり草一本生えておらず、火竜草は見つからなかった。
サツキとユラが炊事場まで戻ると、ラムがぴょんぴょん寄ってきてサツキの腰に抱きついた。サツキはラムのすべすべの頭を撫でる。ずっとここで一人で見張りをしていたのだ。折角なら連れて行けばよかった。まだ暫くは一緒にいてあげられないから。
「ラムちゃん、ごめん。今度はこれからお風呂に入ってくるんだ」
途端、ラムの頬がぷくっと膨れてしまった。ああ、可愛い。
「ごめんね! 戻ったら一緒に寝ようね!」
「俺も一緒に寝ようかな」
間髪入れず、ユラが言った。すると、にゅにゅにゅ、とラムの手がハンマーの形に変わった。ユラが一歩下がってラムと距離を置く。
「邪魔するなだって」
サツキがラムの意図を通訳すると、今度はユラが膨れた。どうしてこうこの二人はすぐに張り合おうとするのか。
「俺だって人肌が恋しいんだよ」
「そういう問題じゃないでしょ。それにラムちゃんは、お食事もあるんだろうし。ね?」
ラムの食料はサツキの魔力だ。どうもよくくっついてくるところを見ると、接触することで魔力を摂取している様に思えた。ラムはサツキの言葉ににこにこと頷くと、またぎゅっと腰にしがみついた。
「俺もその辺りにしがみつきてえ」
ユラが不貞腐れ顔のまま何かを言っていたが、無視することにした。下手に何か言った途端、うまく言いくるめられて腰にしがみつかれかねない。話術は圧倒的にユラの方が上だから、始めから危険そうな事柄には触れないのが一番だ。君子危うきに近寄らずって言うし。
「サツキも大分俺のあしらいが上手くなってきたよなー」
互いに鞄から夜着とタオルを取り出していると、ユラがそんなことを言った。あしらわれている自覚はあったらしい。
「傾向と対策」
サツキが短く言うと、ユラが黙った。いや、ボソボソと何か言っている。もう少し優しさが欲しいとか言っている。セクハラ発言をしなければいいのに、と思うが、この世界にそもそもセクハラという概念があるかどうかも正直不明だ。
「まあいいや。サツキと風呂だもんな!」
滅多に見せない満面の笑みを見せ、ユラがサツキの肩を掴んだ。まだ腰周りにいたラムに、ビシッと言う。
「留守番、しっかり頼むぞ!」
ラムは嫌そうに頷いた。反対にユラは非常に嬉しそうだ。
ユラに背中を押されつつ混浴露天風呂の一つ、岩風呂の前まで来ると、ユラがサツキに指示をした。
「サツキ、ここから風呂の上に向けて、線を描く感じで
要はブラインドの黒煙で目隠しの柵を作れと言っているらしい。確かにそれなら心置きなく脱げそうだ。魔法にはイメージが重要らしいので、サツキは頭の中でその光景を十分想像してから、唱えた。
「ブラインド!」
すると、杖から出た黒煙が、サツキのイメージ通りに岩風呂の上に這う様に境界線を作った。
「お! サツキも大分上手くなったな!」
「えへ! 何となくコツが分かってきたかも!」
「まあメタモラは基本裸だけどな、はは」
「特訓します……」
ユラがその場でバッと服を脱ぎ始めた。
「ちょっとユラ! 目隠しの方で脱いでよ!」
「ちっ」
ユラが舌打ちをしつつ、ブラインドの魔法の奥に消えていった。そんなに見せたいのか。サツキは自分の顔が赤くなるのを抑えることが出来なかった。
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