第456話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンの火竜草の花探索
肉が焼けると、アールが半分寝ているウルスラの口に小さく切った肉を少しずつ入れていった。アールの目も大分すわってはいるが、食事を取って少しはしゃっきりしたらしい。もぐもぐしながらアールの膝の上で寝てしまったウルスラの頭を撫でながら、ユラに依頼した。
「ユラ、ウルスラを寝かせるからベッドを出してもらえるか?」
「はいよ」
結局食べ切れなかったサツキの分の肉を口に放り込みつつ、ユラが立ち上がり、ログハウスの中へと入って行った。
サツキは、その隙にアールにこそっと尋ねてみた。
「ねえアール」
「うん? どうしたサツキ」
「あのお、アールってウルスラのこと……?」
すると、アールがあははと笑って頭を掻いた。
「俺、やっぱり分かり易い?」
「……うん」
ああ、やっぱり。サツキはユラのことを思うと、何も言えなくなってしまった。そして同時に、アールとウルスラがうまくいったらユラの気持ちはどこか他へ向くのではないか、というあの狡い考えがちらりと浮かんだ。駄目だ、だからってそれがサツキになる訳もない。ユラはもてるらしいから、きっと他の今度は女の子と上手くやるに違いないんだから。
サツキは頭を横にぶんぶん振った。
その様子を少し不思議そうに眺めていたアールが、ウルスラの頭を撫でながら続けた。
「でも、ウルスラはぜーんぜんその気がなさそうでさ」
まあ元々相当馬鹿にはしていた。実際アールは大分馬鹿そうではある。それは本人も認めていた。
「今回のダンジョンで、もっと俺に目を向けて欲しいなと思ってるんだ」
「……そっか」
「ま、そっと見守っておいてくれよ」
「うん」
頑張れ、とは言えなかった。それを口にした途端、ユラを裏切ることになってしまいそうだったから。口ではアールのことが好きなんでしょとユラに聞いておいて、影でアールとウルスラが上手くいくことを応援するなど、最低の人間のやることだと思った。
でも、そう出来たならどれだけ楽だったか。
それ以上は会話もなくなり、サツキがちびちびと酒を飲んでいると。
「ベッド、四隅に置いておいたから」
ユラが戻ってきた。アールが片手を上げた。
「ありがとな、ユラ」
「おう」
「じゃ、とりあえずウルスラを寝かせてくるかー!」
アールが赤い顔をしつつ伸びをすると、ひょいっと軽々ウルスラを抱き上げた。さすが腐っても剣士だ。須藤さんがアールの後ろに続く。
「じゃあ俺達は火竜草の花を探して見るから」
「あ、そうだったな。忘れてた!」
「そんなことだと思ったよ。前はどの辺で見た?」
「温泉のへりとかにあった様な」
「はいよ。あ、ラムはここの見張りをしててくれ」
ユラは軽く手を振ると、サツキに手を差し伸べた。サツキはそれを掴むと、立ち上がる。
「……どうした?」
「別に」
また顔に出てしまったのだろうか。サツキはポーカーフェイスのつもりだが、どうもユラにはすぐに見破られてしまう。勤勉で集中力の高いユラのことだから、観察力も人よりあるのかもしれなかった。
サツキは話題を変えることにした。
「火竜草ってどんな形をしてるの?」
「高さは膝位までの比較的小さな草だ。その花が火竜の頭に見えるっていうんで火竜草って呼ばれてる」
「へえー」
「見つけても触るなよ」
ユラはそう言うと、サツキの手を強く握った。
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