第374話 OLサツキの上級編、メルトの呪文の続き

 リュシカを再び訪ねるというユラの提案は、なかなかいいと思った。なので、サツキは賛同した。


「うん。もう少しだけでも詳しく知りたいもんね」

「後はメルトの呪文だよな。俺が読んだことがある文献にはなかったから、もしかしたら未発行の文献かもしれないな」

「未発行? そんなのあるの?」


 ユラが真剣な眼差しで頷いた。


「マグノリアはあっちこっち手を出してたらしくて、亡くなった時も書きかけが山の様にあったってリアムが言ってたんだ。それを何処かにまとめて、その内一冊にまとめようと思っているけど時間がないって」


 サツキが一通り見た所、この家にそういった書付の様なものはなかった。


「この家のどっかにはあるんだろうけどなあ。まあ、これも帰ったら家探ししようぜ。天井裏もまだ発見してないし」

「そうだね。そうしよっか」


 サツキもうんうん頷くと、ユラが腰に回そうとしていた手で後ろからサツキの頬を掴んだ。


「ユラ、何してんの」


 またもや顔が近付いてくる。サツキは逃げようとしたが、勿論逃げられる訳もなく。


「だってさ、さすがにあの二人の前で堂々とやるのは気が引けるし、今の内にやり溜めしておこうかと」

「言い方」

「言い方なんて何でもいいんだよ」


 そう言うと、ユラはまたサツキの唇を奪った。一日にどれだけするんだろう、そして自分はどれだけやられ放題なのかと思うと情けなくなったが、これも安定させる為という理由があるにはあるらしいので、それに正直ユラが好きだしこうされるのは悪くないというか、うん。


 ユラが口を少し離して囁く。


「サツキも少しは応えてよ」

「いや無理」

「胸、触っていい?」

「こ、応える、頑張る」

「何で片言?」


 ユラが絡めてくる舌に、一体どう応えりゃ納得してくれるんだと思いつつ、サツキは少し努力してみた。ものっっすごい恥ずかしくて脳みそが蒸発しそうだったけど、まあ、ユラが喜ぶなら。


「はは、堪んねえ」


 ユラが熱い吐息を吐きつつ、笑った。ユラがサツキの目をじっと見つめてくる。熱っぽいその視線に、サツキはもう目を合わせることが出来なくなった。もう嫌だ、布団被って寝たい。


 そう思った時。


 身体がむくむく、と大きくなり、胸がなくなった。メタモラの効力が切れたのだ。


「も、戻ったから」


 さすがにリアムにこんなキスはしないだろうし。サツキがほっと一安心してそう言ったところ、ユラが何故かサツキの膝の上に座ってきた。


「何してんの」


 至極当然の質問だろう。すると、ユラが当然の様に首に手を回してきて、言った。


「高さを合わせてるんだ」

「え? は?」

「ほら、続き続き」

「え? いや、だってほらリアムになったしそろそろギルドへ」


 ユラが理解出来ない。サツキは完全に混乱した。すると興奮した様な艶然とした表情を浮かべたユラが、リアムに戻ったサツキにキスし始めた。


 いや、今男だしおっさんなんですけど私。


 喉から出かかった台詞は、ユラの止まない熱烈なキスによって外に発せられることがないまま、消えた。

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