第319話 魔術師リアムの中級編五日目の朝食開始
例の笑顔に圧がある店に入ると、今回も祐介が注文をしてくれた。
「コーラ頼む?」
「頼まない」
「だよね。じゃあアイスコーヒー?」
「そうだな、こうも暑いとさすがにもうホットコーヒーはきついものがある」
「はいはい」
祐介がにこやかに注文を終わらせると、横に避けて暫し待機する。しかしそろそろ注文も自分で出来る様にならねばと思うのだが、四六時中祐介といるので皆祐介がやってしまう。あまりにも甘やかされている気がして仕方ないが、かといって羽田の件が片付くまでは祐介とは離れられないし離れる気もない。今や危険はリアムにだけではなく、祐介にも迫っていた。
食べ物が乗せられたトレーを受け取ると、リアムを先頭に階段を登って行く。二階を見回すと、いた。にこやかな笑顔の木佐ちゃんと同じくにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべた潮崎が四人掛けの席に隣り合わせに座っていた。
「お待たせしました」
祐介が二人に挨拶をすると、潮崎が笑顔で応えた。
「全然大丈夫だよ、まだ来たばかりだったし。逆にごめんね、何か急かしちゃったみたいで。血を落とすのって大変だったんじゃない?」
潮崎はそう言うと、向かいに座った祐介の顔をまじまじと見た。
「あ、でも特に痕は残ってないみたいだね。凄い出血量だったからびっくりしたけど」
「そうですね、僕も血でびっくりしましたけど、思ったよりも平気です」
リアムが見た時は、鼻は青く腫れていた。もしかしたら折れていたかもしれないが、二回のヒールライトで鼻に関してはしっかりと治った様だ。頭もかなり強く打っていた様だが、一回目のヒールライトで回復した感じを見るとあれは軽い脳震盪だったのだと思う。
「あ、食べて食べて。僕達はもう食べ終わったから、僕が勝手に喋ってるから」
「分かりました、すみません。じゃあいただきますね」
「いただきます」
リアムも付け足す様に言ってみた。食べ始めると、身体に力が湧いてくるのが分かった。
潮崎が今回のことを話し始めた。
「野原さん、君はこんなことを聞くとショックを受けちゃうかもしれないけど、羽田さんは君を社長に充てがうつもりだったみたいだね。あの人さっきはっきりとそう言ってたよね?」
リアムはしっかりと頷いた。
「私については心配いらないから大丈夫だ。羽田は確かにそう言っていた。その為に私を犯すつもりだったのもあれではっきりとした」
ゴホッと木佐ちゃんがむせた。顔が赤くなっている。祐介が耳打ちをした。
「サツキちゃん、表現が直接的すぎ」
成程、確かにあまり
「写真を撮ったり、映像を撮るとも言っていたな。それを使って脅すと」
「酷いね……」
潮崎が顔を顰めた。リアムは更に続ける。
「だがそれが何の脅しになるのだ? その写真や映像をばら撒いた時点で、あいつの犯罪が証明されるだけではないか」
リアムがそう言うと、潮崎が驚いた顔をした。
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