第254話 OLサツキの中級編三日目の風呂

 ユラが真っ赤な顔をしてお風呂から上がってくると、サツキにも風呂を勧めた。


「その間に、酒買ってくるからさ、酒盛りしようぜ酒盛り」


 ユラはどう見ても興奮状態にある。何かいいことがお風呂であったに違いない。きっと今日はこの後はずっとマグノリアの話になるのだろう。勿論知識としてサツキも是非知りたかったが、それ以上に子供の様にはしゃぐユラの姿をもうちょっと見ていたくて、サツキは素直に言われた通りにお風呂に入ることにした。


「獅子丸、さっきのお兄さんに何してあげたの?」


 獅子丸がにたりと笑った。すると獅子丸の口から出てきたのは。


「うぎゃああああああ!!」


 日頃は絶対出ない声が出た。しかもリアムの声だから野太い。


 緑色のこのねっとりねばねばしたこの液体は、間違いなく。


「緑スライムじゃないのおおお!!」


 生暖かいスライム状の液体がバスタブに怒涛の勢いで流れ込んでくる。その生温かさの中に香るミントの様な爽やかな香り。


「ユラのばかああああああ!!」


 思わず叫んだ。すると、ドタドタと走ってくる音がする。しまった、まだ出掛けていなかったのか。サツキは身体を隠そうとし、ふと我に返った。


 いや、リアム男だし。


 男が男に上半身裸を見られても別に、である。


「サツキ!? どうした!?」


 風呂場のドアの先でユラが呼びかけるので、サツキは腰にタオルを巻きドアを開けた。


「ユラ! 獅子丸になんてもの出させてんのよ!」

「うおお! お前はなんてものを出してんだよ!」

「は!?」

「……あ、いや、何でもねえ」


 ユラは口元を押さえながら、サツキの胸あたりをチラチラと見ている。こいつまさか男にも欲情するんだろうか? アール限定だと思っていたけど。でもサツキの女の姿の時にキスしてたからやっぱり女も好きなんだろうし。


 にしても、まずは言いたいことは言わせてもらう。


「何でスライムなの?」


 ユラが思い切り目を逸らした。サツキは一歩詰め寄る。ほらみろ、獅子丸が咳き込んでいるじゃないか。あ、ぶって鼻から出た。


「獅子丸、止めていいよ」


 すると、獅子丸はホッとした様にニヤリと笑うと、スライムを止めた。時折ごほっと鼻からスライムの残り滓が出てくるので、きちんと撫でて元栓を閉めなければならないだろう。


「で、あれ何?」

「ていうか何でサツキがあれを知ってんだよ」

「それは、ユラが入ったお風呂がどんなだったのかを聞いたらこうなって」


 するとユラがニヤリとした。


「ふうん? 俺の入った風呂が気になったって?」


 本当に性格が悪い。だが今のサツキはリアムの身体で、それに獅子丸が辛そうだったので少し怒っていた。


「獅子丸に酷いことをさせないで頂戴!」


 ビシッと指差した瞬間、腰に巻いていたタオルがふぁさっと落ちていった。


「わお」


 ユラが言った。

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