第100話 OLサツキ、初級編二日目午後の特訓はまだまだ続く
次のフロアからは飛ぶモンスターが多くなった。
相変わらず前衛はサツキとアールで、後ろからのんびりとついてくるウルスラとユラは呑気に最近はまった食べ物の話をしていた。
「ねえアール、二つ名ってどうやったら貰えるの?」
二つ名の意味は多分分かる。リアムは魔術師だから、例えば炎の魔術師とかそういったちょっと厨ニ系の名前が頭に付くやつのことだろう。
「うん、それはだね!」
アールが先生然として教えてくれる。アールは、サツキを狙わなければ普通にいい人だった。根本が単純だからかもしれない。イケメンという武器がなければ、この人は一体どうなっていたのだろうか。少なくともイケメン採用だったこのパーティーには入れず、ドラゴンスレイヤーの称号は手に出来なかったに違いない。
「俺らが持っているドラゴンスレイヤーとか、ダンジョン攻略とか、戦闘勝利数とか、色々と称号が世の中には存在する」
「うんうん」
サツキは真剣に聞く。
「ねえ、あのアールが説明してるわよ」
「大丈夫なのかね? 間違ってたら笑ってやろうよ」
「そこは教えてあげないの?」
「だってその方が面白いじゃん」
後ろからの声が耳に入り、アールが憐れになった。アールは聞こえないのか、全く気にした様子はない。
「ある程度称号が積み上がると、鑑定士から二つ名が貰えるんだ」
「へえー。それで、リアムはもうすぐ貰えそうだったってこと?」
「うん。ドラゴン討伐前だったから、ドラゴンスレイヤーの称号が追加されたから、今鑑定してもらえば何か二つ名が貰える可能性は高いんじゃない?」
「へえー! 面白そう!」
「じゃあ、先生がダンジョンを出たら連れて行ってあげよう」
「やった!」
えっへん、とアールがふんぞり返る姿が何だか可愛らしかった。かわ……可愛らしい? いや、待てサツキ。貴方は男になる決意をしたばかりだったんじゃないのか。いけない、どうも先程からアールのことを、転生前に好きだったアイドルに対するものと同じ応援目線で見てしまっているらしい。だって可愛い顔してるからな、この人。
「ぼ、僕、リアムの二つ名を名乗ってもいいのかな?」
「ウホオオオッ」
後ろからウルスラの奇声が聞こえた。
アールが首をひねる。
「どういうこと?」
「だって、リアムが貰える二つ名って、皆本当のリアムが頑張った結果でしょ? わた……僕は何もまだ貢献してないのに、名乗ってもいいのかなって」
「サツキ」
ユラが声を掛けてきた。サツキが振り返ると、物凄く真剣な顔付きだ。こういう顔をしてるとこの人も相当なイケメンなのに。
「二つ名を貰うと、幸運度が一割増える」
「幸運度?」
ユラが深く頷いた。
「そう。バトルでのクリティカルヒット発生率、いい宝物を持っているモンスターとの総合率、後は落ちているお金を拾える確率だって増える。いいこと尽くしだ」
正に幸運度だ。
「ついでに武器、防具、道具が全品一割引きになる」
「ここを出たらすぐに行こう。な?」
アールが提案した。
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