第41話 魔術師リアム、揶揄われる
祐介はリアムの手を引き、ド派手な赤に黄色の文字がでかでかと書かれた店へと入っていった。カウンターで、やけににこやかな笑顔の同じ服を着た人間がこちらを一斉に見た。
「いらっしゃいませー!!」
「ゆ、祐介、ここは」
圧が怖い。思わず一歩退いたリアムを見てクスリと笑った祐介は、耳元で囁いた。
「怖くないよ、あれ皆店員さんだから。まあちょっと笑顔は作り物っぽいけど」
耳と首筋に温かい息がかかり、こそばゆい。ぶる、と震え、祐介と距離を置こうとして、失敗した。腕を組まれ逃げ出せない様にされている。どうした祐介よ、お前もこやつらの仲間なのか。
「えーと、これとこれ下さい。サツキちゃん、飲み物は何がいい?」
そう言ってメニューを見せられたが、何が何だか分からない。余程追い詰められた顔をしていたのだろう、祐介が可笑しそうに笑うと「コーラで」と店員に言った。
祐介が自身の財布を尻ポケットから取り出すと、支払いをする。昨日のラーメンの際はあまりにも状況が見えておらず気付かなかったが、この国には紙幣と貨幣両方が存在するらしい。貨幣だけだと確かに重いとは思っていたが、まさかそれを紙で代用するとは。
支払いを済ますと、横にずれろと指示をされたので祐介にずるずると半ば引きずられる様に横に移動する。時折胸が祐介の腕に触れている感覚があるが、まさか気付かぬ訳はなかろう。ちらりと見上げると、にっこりと笑われた。そうじゃない。
暫くすると、トレイに袋に包まれた食料らしき物を渡され、祐介はそれを片手でひょいと持つと、リアムの手を繋ぎ引っ張って二階へと
ラーメン屋と似たようなカウンターに導かれ、座らされ、一つひとつ説明をされた。
「これがエッグマックマフィンっていってパンの間にベーコンと目玉焼きが挟まってるやつ。僕はこれが一番好きかな。で、これがハッシュポテト。芋を揚げたやつ。で、この飲み物がコーラ」
「始めの二つは意味が分かるが、コーラとは一体」
「まあまあ、飲んでみてよ」
ニコニコと勧められる。植物でこのストローと同じ様な物がある。あれは蜜が出てほんのり甘く美味いのだ。まあ祐介の言うことだし大丈夫だろう、そう思ったのが間違いだった。
「ふっふおっっ何だこれは! 口の中が痛い!」
「やっぱり炭酸は知らないか」
「祐介! わざとだな! これは一体何なのだ!」
リアムが怒り出すと、祐介は自分の方に置いてあった飲み物を差し出した。
「交換する?」
「……そちらもこの様な物ではないのか」
「これは紅茶だよ」
「疑わしい」
リアムが睨むと、祐介はストローに口をつけて飲み、嚥下してみせた。
「ほら大丈夫」
ストローを向けられたので、恐る恐る飲んでみる。
「茶だな」
嘘ではなかった。祐介はにこにこしたままコーラを取るとストローを口に含み、ぷはっと飲んだのだった。
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