第38話 OLサツキ、腹が減らない
頬をペチペチと叩かれ、サツキはハッと目を覚ました。ウルスラが切羽詰まった表情でサツキを見ている。
「あ、ごめん、匂いにやられて……」
あれ? とサツキは自分の腕を見ると、いつの間にかリアムの姿に戻っている。ゴルガーラ
「よかったサツキ! 気絶した途端イルミナの魔法が解けちゃって、お腹にズボンが食い込んでるし臭いし吐くしで大変だったのよ!」
「気絶すると、解けちゃうんだ……」
ウルスラが真剣な表情で頷いた。
「ここは女人禁制なのよ! 何とか誤魔化してニーナ達が来ない様に食い止めてるけどもう時間の問題だったし、焦ったああ!」
知らない間に苦労をかけたらしい。
「あ、じゃあイルミナをまたかけようか」
「イルミナは一日一回しか使えないのよ!」
「え……じゃあ」
「フルールアレで私の部屋に今すぐ飛んで!」
「わ、分かった! フルールアレ! ウルスラの部屋へ!」
気絶していても握っていた杖の先端が光ると、二人は先程後にしたウルスラの部屋へと飛んだ。
ウルスラは立ち上がると、急ぎドアを閉め鍵をかけた。ずるずる、とドアにもたれかかりようやく肩の力を抜いた。
「ふう、間に合った〜」
「な、何かごめんなさい」
サツキが謝ると、ウルスラがひらひらと手を振って笑った。
「ろくに説明もしなかったし、こっちこそごめん」
ウルスラは優しいな、サツキもほっとして笑うと。
「ウルスラ!? 何でまた部屋に戻ってるの!? ちょっとどうなったのか話を……」
「げ! ニーナだ!」
「えっわっ私どうしよう!?」
サツキは立ち上がるとアワアワする。
「服を持って帰ったらここには暫く用はないから、そうね……あれを着て死んだふりをしてて!」
ウルスラがビシッと指差した先には、例のどぎついカラーのイエティの毛皮。
あれを着るのか? というか、臭うって言ってなかった?
ひく、と顔を引き攣らせると、サツキは一歩後ろへと下がる。
「ほら! 私と一緒がいいんでしょ!」
「はっ! そうよ! 頼んだのは私なのに!」
「じゃあ早く着る!」
「ウルスラー? どうしたのー?」
「今着替えてるのよ!」
「早めにね! 寮長がイライラしてるのよ!」
「ったくあのクソババア……ほら! 早く!」
「はい!」
サツキは急ぎハンガーから薄紫に赤の水玉の毒を持ってそうな毛皮を剥ぎ取ると、足を突っ込んだ。途端、モワンと舞い上がるなんとも言えない悪臭。
「……おえっ」
もう今日は、何も食べれないかもしれない。
サツキは半泣きになりながら頭まで毛皮を着ると、クローゼットの中に寝転び死んだふりを始めた。
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