第40話 加護と生産職
《鍛冶師クエスト「鏃の大量発注」を達成したのです。
レベルが上がったのです。
レベルが26になったのです。
ミッドレンジブラックスミスキットを入手したのです。
ミッドレンジクラフターグローブを入手したのです。
30,000リーネを入手したのです》
ヨセフが全ての鏃に目をとおすと、クエスト達成のアナウンスをナビちゃんが告げた。
直前まで鍛冶師のレベルは21だったと思うから、一気に5つも上がったことになるね。これも、冒険者のピアスのおかげなんだけど……こんなに楽にレベルが上がっていいものなのかな。
まあ、若いうちの苦労は買ってでもしろ……なんて言葉もあるから、苦労してレベル上げしたいのなら冒険者のピアスを外せばいいだけなんだけど、そう思ってしまうと今度は外せないんだよね。
「嬢ちゃんはコークスを使ったスチールの扱いをマスターしたようだ。まあ、腕前はまだまだだが、更に腕を磨くとなるとこの町では難しい。だが、王都に行けば金や銀、聖銀などの新たな素材に挑戦することができる」
クエスト報酬を受け取ると、ヨセフが話しかけてきた。
「だから、レベル25になったら、王都の鍛冶師ギルドに行くといい」
「と、いうことは……グラーノの鍛冶師ギルドは卒業?」
「嬢ちゃんは面白いことを言うなあ。まあ、レベルに応じた課題を出すことがなくなるだけで、学校のように卒業するってことはないぞ。鍛冶師への依頼はいくらでもあるし、鍛冶の道は修行の道だ。そのためにここの設備が必要なら自由に使えばいい」
「はい、ありがとうございます」
ギャザラー系の職業はグラーノの町でクエストが受けられるのはレベル20までだったし、クラフター系の職業も同じくレベル20に設定されているんだろうね。
それにしても、耳慣れない言葉があったよね。
「鍛冶師への依頼って、どうやって受けるんですか?」
「なんだ、嬢ちゃんは依頼は受けてこなかったのか……そこに、掲示板があるだろう?」
ヨセフは、並ぶ
石炭などで舞いあがった灰が付着して少し煤けた感じの掲示板があり、そこに薄汚れた紙がピンで留められているのが見える。
「あそこの紙に書いてあるのが常設依頼だ。各種のインゴット作成や武器、防具、道具などの製作依頼がある。じゅうぶん採算が取れるだけの依頼報酬が得られるようになっているはずだ」
「へえ、そうなんですね。ありがとうございます」
こんな大事なこと、ナビちゃんから教わってないんだけど……。
(ナビちゃん?)
《ア、アオイは次々とクエストを受けていたので、説明するタイミングがなかったのです》
(そ、それは仕方ないか……)
ナビちゃんは唇を尖らせ、視線を泳がせながら答えてくれた。
でも、確かにナビちゃんの言うとおりで、最初に鍛冶師のクエストを受けてからずっと連続してクエストばかりやってきた。まあ、戦狼の牙刀を修理するのとか、ディアホーンダガーを作ったけれど、これは必要に駆られてやっただけだもんね。
(もうレベルも26になったし、グラーノがレベル20を目安にしているなら適正な依頼はないかな……)
《経験値としては期待できないものばかりなのです。素材を大量に確保していれば小銭稼ぎになはるのですよ》
(地道な生産活動ってやつね)
《それが働くということなのです》
ナビちゃんの言うとおり、実際にゲームの中で生活しているのなら日銭を稼ぐというのは非常にたいせつで、採算がとれる以上、掲示板の依頼をこなしていくのはとても大切なんだろうね。
実際に掲示板のところに移動すると、そこには様々な依頼が貼り付けてあった。
(青銅のインゴットを5本、ブロンズチェインメイルを1着、アイアンホブロンを1つ……いろんなものを作れるのは楽しそうだね)
《モノづくりは楽しいのです》
(うん、だから鍛冶屋のロールプレイをする人なんかもいるんだよね)
《そのとおりなのです》
依頼を眺めていると、ふと目にとまったものがあった。
(スチールスミスハンマーって、鍛冶師用のハンマーだよね。作ったほうがいい?)
《レベル20の報酬として受け取ったミッドレンジブラックスミスキットに入っているのですよ》
(そういえば、石炭や鉄鉱石には一般品質と、高品質の二種類があるんだよね。高品質な素材を使うと、成功率が上がるんだっけ?)
《生産職の道具の場合は器用さを表す値が補正されることがあるのです。武器、防具はボーナス補正がつくことがあるのですよ》
私が着ているビギナークラフターセットは器用さを表すDEX値を上昇させる効果がついていて、道具類にはその効果がない感じなんだね。今のところ種族特性や服についた補正のおかげで不便を感じないから、なにも新たに高品質の素材を使って打ち直す必要はないかな。
ハーフリングは火精霊と風精霊の加護があるけど、土や水属性が要求されるような職業に就く時は、道具で補正が必要になるのかな。
(ナビちゃん、火精霊と風精霊の加護の恩恵が受けられない職業ってなにかな?)
《木工師なのです》
(じゃあ、その2つの職業で扱う道具だけ補正がつくようにすればいいかな)
《参考までに、属性と職業の関係をまとめるとこうなるのです》
ナビちゃんがその手のサイズにあわない大きな紙を持って見せてくれる。
土精霊と火精霊:鍛冶師、錬金術師
火精霊と風精霊:彫金師、魔道具師
風精霊と土精霊:裁縫師
水精霊と土精霊:木工師
火精霊と水精霊:調理師
土精霊と風精霊:革細工師
火を扱う職業が多いというのもあるけど、火精霊と土精霊の加護があれば全てのクラフター職に適正があることになっちゃうよね。
該当する種族はドワーフ……さすが、モノづくりといえばドワーフってことなのかな。
とりあえず、どの精霊がついていても最低6つの職業に適正があることになるし、獣人族やヒト族は加護さえないのでたいへんだね。あっ、そのためにビギナークラフターセットSのような補正がついた装備があるのかもしれない。
そういえば、ビギナークラフターセットSを貰えるチェーンクエストをヒト族のノア君に教えたけど、どうなってるかな。教えてから時間が経っていることだし、もう手に入れてるかな。たしか、生産ギルドにくるときに、鍛冶屋にフレンドがいることがマップに表示されていたんだっけ。探せば見つけることができるかな?
視界に表示されている全体マップをタップすると、拡大表示される。
今、私がいる鍛冶師ギルドに黄色い点が光っている。それをタップすると漫画の吹き出しのようなものが表示されて、名前が表示された。
あ、やはりノア君だね。
*⑅୨୧┈┈┈┈┈ あとがき ┈┈┈┈┈୨୧⑅*
ギャザラー装備は更新されたのに、クラフター装備の更新がクエスト報酬にないのがおかしいと思ったので、第38話「鏃の大量発注」の中で、クエスト報酬に「ミッドレンジクラフターグローブ」を追加しました。
また、前回更新時に「中級鍛冶セット」を追加しましたが、アオイが鍛冶師になったときに「ビギナーブラックスミスキット」を受けとっているので、「ミッドレンジブラックスミスキット」に名称変更しました。
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