第33話 特務隊の秘密
ステラside
凛怜さんが去ったあの日、涙を初めて流した日。
私は、より一層強くなると決めた。
なぜ、私達に何も言わずに行ってしまったのか、それは私がまだ弱かったから、そう考えたからだ。
まぁ、後はヤケクソにも近かったのかもしれない。何かにのめり込んでいないと駄目になりそうだったから。
だから、いつも以上に任務を遂行し、特訓をし、力を付けていった。
あれから10年が経過して、再会した凛怜さんは、何と言うか綺麗だった。
最初は目を疑ったし、凛怜さんは男だという事は知っていたので、ますます混乱した。
任務の為とはいえ、女装をしていたし、口調も変えて、私よりも大きい2つの山もあった、でも漂う優しさは変わっていないようだった。綺麗だと思った、白銀の髪も紅い瞳はそのままだ。
ただ、なんというかあの諦めたような目をしていなかった、何も映していないような瞳が、今ははっきりと何かを映している。大切な人が出来たのか、その隣の綺麗な女の人がそうなのかもしれない。アイリ=フィオーリだったか、私が苦しい思いをしたのに、自分は新しい人に乗り換えたのか、なんて変な想像をしてしまうくらいには、頭がどうかしていた。
裏切り者なんて、1部の凛怜さんに対して妬みがある奴らが言ってるようなことだ。
それをあえて言ったのは、私が勝負をしたかったから、この10年で私は強くなった。それを見て欲しかったから。
そして、あの時、感じたことをこの人にぶつけたかったから。身勝手な理由なのは分かってる、でも向こうも身勝手だ。こっちだって言いたい事はある。
だから、ぶつける、そして、ぶつけて欲しいのだ。
でも、攻撃すらしてくれない、何を言っても、黙って、私の攻撃を避ける事しかしていない。
何がダメなんだろう、分からない…。
最早、ヤケクソ気味に言った。
ステラ「どうしたら、認めてくれるのか分かりません。私にはこれしかないのです。またあんな思いをする位なら、私は死んだ方がマシです!」ハァハァ
リール『…どうやら、曲げる事は無いのだろうな。』チャキッ
私の言葉が届いたのか、武器をかまえ、ようやく私を見てくれたのだった。
リール『ステラ、お前の今の全力を見せてみろ。能力を使いたければ使え、俺も少し本気を出す。』ギロッ
そう言った、凛怜さんから、今まで味わった事の無い程の威圧感、そして濃密な殺気が私に襲いかかる。
これでも、少し本気を出す程度なんて、末恐ろしい。
リール『アイリ、よく見ておけ。今からやるのは、お前には教えていない俺の技だ。来い!ステラ!』
そう、アイリ=フィオーリに告げると、刀を鞘に入れ、居合の構えを取る。真っ向勝負のつもりなのでしょう。
ステラ「…ようやくですか…ふぅ、これが私の全力です!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!流星崩し《シューティング・スター》!!」
私は、高く跳ぶと全身に重力操作を行い、上から、刀を突き出しながら、速く鋭い、突きを凛怜さんに繰り出した。
これが私の全力だ、紛うことなき全力。
リール『居合・瞬刃の舞…三連!』
凛怜さんと私の技がぶつかり合った瞬間。
気づけば、私は…。
ステラ「…ハッ!」
リール『大丈夫かしら?ステラ?』
凛怜さんに膝枕をされていた…。
リールside
ステラの思いは生半可なものでは無いのは分かっていた。
俺が裏切り者と呼ばれるのは覚悟の上だった、何も言わずに出ていったのは、当時なりに情が湧いてしまった俺が、もし行かないでと言われたら、行きたくなくなると思ったから。
まぁ、それを言われたかは分からないが、万が一にも、言われないようにするためだった。
戦いの最中、必死に訴えかけるステラに、俺はどうすればいいか分からなかった。
でも、死んだ方がマシと言わせるのはいけない事だと言うのは理解している。
俺は不器用だ、言葉に出来ない事ばかり、だから、お前と向き合って戦う。
リール『ステラ、お前の今の全力を見せてみろ。能力を使いたければ使え、俺も少し本気を出す。』ギロッ
少し強めの殺気と威圧感を込める。
俺は、あえて能力は使わない、お前の思い全てを受け止めよう。
リール『アイリ、よく見ておけ。今からやるのは、お前には教えていない俺の技だ。来い!ステラ!』
そう、アイリに告げると、刀を鞘に入れ、居合の構えを取る。
ステラ「…ようやくですか…ふぅ、これが私の全力です!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!流星崩し《シューティング・スター》!!」
ステラは、高く跳び、上から、刀を突き出しながら、速く鋭い、流れ星のように俺に迫ってくる。
それを俺は…。
リール『居合・瞬刃の舞…三連!』
それに対抗するように、技を繰り出した。
アイリside
技がぶつかり合り、気付けば、ステラ=サーテライトが気絶していた。
グラ「勝者、リール=フィオーリ!」
リール『…。』
ラミ「な、何が起こったんだい?」
アイリ「私も目で追うのが大変だったが、恐らく、ステラ=サーテライトの突きを一撃目で完全に殺し、身体を回転させ、その遠心力で二撃目、そしてそのまま、三撃目を加えて気絶させたって所だろう、それも、もの凄い速さで。」
ラミ「口では簡単に言ってくれるけど、人間離れしすぎてない?」
杏華「あいつの規格外さなんて、今更でしょ。」
これを私にしか見えないギリギリの速度でやったと考えると、こういう戦い方もあると教えてくれたのだと思う。
居合…か、私の剣術は、凛怜の剣術を真似たものを私なりに改良し、私用に昇華させたもの。
まだまだ、遠いな、凛怜は…。
グラ「ステラさんを早く医務室へ。」
リール『その心配はないわよ、グラレス。』
グラ「??」
リール『峰打ちにしてたし、少し怪我はしてるけど、青あざが出来るくらいまでには加減しといたわ。まぁ、たしかにこんなとこに寝かせる訳にもいかないか…。』
そう言うと、ステラの頭を持ち上げ、自らの膝へその頭を乗せt!?
ひ、膝枕…だと。
グラ「えーと、リール君?あの、流石にそれは…ね?」
リール『え?だめだった?』
むぅ、ダメに決まっているだろう!
アイリ「リール、なぜ、それをしているのだ?」
リール『このままの状態だと、首を痛めるでしょ?すぐに目は覚ますと思うけど、可哀想じゃない?』
アイリ「いや、まぁ、んー、次は私だからな!」
グラ「いや、アイリ君、なんだか支離滅裂になってるよ?」
う、うるさい!だって、羨ましいだろ!
アイリ「…隊長殿も、羨ましそうに見ているのではないか?」
グラ「…そんな訳ないじゃないか。」
いや、その顔は羨ましそうにしてる顔だ!分かるぞ!
リール『…グラレスもやって欲しいの?』
グラ「ち、違うよ。それよりステラ君は、いつ目が覚めるんだい?」
リール『もう少ししたら覚めるわよ。』
そう言って、慈愛の目を向けながら、頭を撫で続ける様はまるで…。
ラミ「なんだか、お母さんみたいだね、リール?」
武美「そうでござるな、私としても少し羨ましいでござる。リール殿、ぜひ私にもして欲しいでござる。」
ラルク「…。」ジー
リール『武美、あなたはブレないわね…。ラル、あなたもして欲しいの?』
ラルク「…別に。」フイッ
これは、お母さんモードと言う奴か?
凛怜は実は男性ではなく、女性だったのか?
そう錯覚させる程、慈愛に満ちている。
杏華「リールがどうしてもと言うなら、私にもしていいのよ?」
ラミ「いや、杏華、して欲しいなら、素直に言えばいいじゃん。」
杏華「う、うっさいわね!」
はぁ、なんで凛怜はいつもこうなのだ、何人落とすつもりなんだ?
私達だけで充分じゃないのか?紅葉姉さんに報告だな。
アイリ「…疑問なのだが、ここにいるメンバーは皆、異常種なのか?」
話を変えようと、疑問に思っていた事を聞いてみた。
グラ「…これは機密事項だ、他言無用だよ?」
アイリ「あぁ。」
隊長殿曰く、特務部隊は全員何かしらの過去があるらしく、その際に異常種になってしまったのだという、私が殺気を込めながら質問した時にすんなり許してくれたのは同じ異常種だからなのだろうと思った。
グラ「ここにいる中で、ラミ君と杏華君は、レギンス総督が、ステラ君、武美君、ラルク君は凛怜君が引き入れようと提案したんだよ。」
武美「そうだったでござるか!?」
ラルク「っ!?」
2人は知らなかったようだ。
リール『…皆、レギンス総督が引き入れたのよ。』
グラ「レギンス総督から直接聞いてるから、その嘘は通用しないよ。それだけじゃない、ステラ君のサーテライトだって、ラルク君のランバードだって、名付け親は凛怜君なんでしょ?」
その言葉にその場にいる全員が、リールに視線を向ける。
リール『…ちっ、あのじじい、ペラペラしゃべりやがって…。』((ボソッ
リール?凛怜が出てるぞ?
武美「それが事実だとして…私だけ、付けてもらってないでござる!」
グラ「その代わり、簪を貰ったでしょ?」
武美は綺麗な黒髪を後ろに縛っていて、ポニーテールのようにしているのだが、そこに1つの綺麗な花の模様が装飾された簪が挿さっていた。
武美「昔にレギンス総督に貰ったものなら、何時でもつけているでござる。これが何の…まさか?!」
グラ「それ、本当は凛怜君が贈ったものだよ?武美君の出身の所を調べて贈ったんだって。」
リール『グラレス、口が軽すぎじゃねえか?はぁ…。』
くっ、いくら昔とはいえ、嫉妬してしまう…。
アイリ「むぅ、凛怜!」
リール『あ、はい!』
アイリ「私も凛怜から贈られたものがあるからな!」
リール『お、おう手作りで贈ったな。』
アイリ「うむ!」
ラミ「へー、私達には何も無いんだー?」
杏華「…最低。」
リール『あー、まぁなんというか…勘弁して貰えないか?』
凛怜は困ったように、ラミ達をなだめる。
そうしている内に。
ステラ「…ハッ!」
リール『…大丈夫かしら?ステラ?』
ステラ=サーテライトが目を覚ましたようだ。
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