第21話 頼み事



凛怜side


なんとか土下座で渋々ではあるが、許して貰えた…。


瑠衣「…。」ジトー

一葉「…。」ジトー

愛凛「…。」ジトー

ま、まぁ1部の目線はまだ厳しいものだが…。


凛怜「…それで?ここに来た理由は?」

ラミ「理由って、ただ会いに来ただけだよ?」

おチャラけた様子でそういうラミだが。


凛怜「お前達がわざわざこんな所に来るわけないだろ。俺の前で下手な嘘をつくことが出来ねえのは分かってるはずだ。」

ラミ「本当に会いに来ただけだよ。」


ラミがそう言うと、俺はラミの目の前まで移動し、ラミの目を見ながら、言った。

凛怜「本当だな?」

ラミ「…うん、本当だよ。」

そう口では言っているが、俺の勘が何かあると言っている、能力は絶対だ、これが外れた事は無い。


凛怜「…。」

ラミ「…。」

しばらく無言で見つめ合う。


ラミ「…凛怜、情熱的だね。またキスしたいの?」

しかし、ラミは気まづくなったのか、そう俺に言ってくる、この時のラミは大体、何かを誤魔化そうとする。


凛怜「俺はかまわないぞ?」

けど、それを俺は許さない。


ラミ「え?」

杏華「ちょ!?」

2人は俺の答えに動揺していたが。


紅・瑠・愛・一「「「「…。」」」」(呆れ)


俺の意図を理解しているのか、紅葉達は何も言わずに見守っている、というか呆れている。


凛怜「目をつぶるか?それとも目をつぶらないでも、俺は構わんぞ?」

ラミ「え、あ、えーと…本当にするの?」

凛怜「あぁ、ラミはしたくないのか?」

ラミ「わ、私は…その、別にいい…けど?その、他に見てる人がいるんだよ…?」

凛怜「…そうだな、だが、俺は今したいな。」

ラミ「で、でも…。」

このままじゃ、拉致があかないな…。

ラミには悪いが、強行突破をさせてもらうか。


凛怜「ラミ。」

俺はラミの名前を呼びながら、唇をラミの唇へと近づける。

杏華「あー!もう話すわよ!今すぐ離れなさい変態!」ベチンッ!

凛怜「」グハッ

寸止めするつもりではいたが、その前に杏華からのビンタを貰ってしまった。



杏華「ほ、本当にキスしようとするバカがいるか!ラミも何も言わずに何流されてるのよ!」

ラミ「え?あ、うん…。」


ん?なんでラミはそんな残念そうなんだ?

わからんが、まぁともかくだ。

凛怜「…それで話す気になったか?」イテテ


杏華「はぁ、えぇ、話すわよ。ただ、これはクローバファミリーのボスとしてではなくて、【紅銀の鬼】と呼ばれる、あなた個人への依頼よ、まぁ、私達と協力してた時のようにするなら【銀髪の冷血姫ぎんぱつのれいけつひめ】の方がいいのかしらね?」


凛怜「…その呼び方は絶対やめろ。」


愛凛「…その2つ名は初めて聞くが、何なんだ?」

凛怜「…出来れば、聞かないでくれ。」


紅葉「嫌いだものね…その呼ばれ方。」


凛怜「あぁ…それで?頼み事って何だ?」

俺は、話を戻そうと、杏華に聞いた。


杏華「とあるファミリーのボスのご息女の警護をして欲しいの。本人は、あなたの事を知っていたわ、それであなたになら警護して欲しいという事なの。」

俺との関わりがあるって事か…?


凛怜「…どこのファミリーだ?」

ラミ「グローリーファミリーだよ。」


グローリーファミリーってたしか…。


一葉「そこは、大規模ファミリーの一角だね。

そして、穏便派で有名なところでもある。

うちは関わった事はないけど、歴史があって、今のボスは人情に厚いって評判の所だよ。」

凛怜「なるほどな、そんな所が、一個人に護衛を依頼するっておかしくないか?」


歴史があり、大規模ともなれば、護衛なんてすぐに見つかるはずだ。


杏華「それがね、そこのご息女が極度の男性嫌いであり、護衛嫌いなの…。」

凛怜「…は?」


苦い顔で、そういう杏華に、俺は素っ頓狂な声をあげた。


凛怜「なら、俺は男だから、そもそも受けられないんじゃないか?それ。」

杏華「そうなのだけれど、私達としては受けて欲しいのよ。」

凛怜「護衛を付ける人がいなくなるからか?それならお前らがやればいいんじゃねえの?」

ラミ「そうなんだけどね、護衛嫌いの彼女が君が付かないと、絶対護衛を付けないと聞かないんだ。」

凛怜「いやにしてもな、俺は男だぞ?」

ラミ「もしやるとしたら、女装して貰うよ。」

凛怜「うげぇ…。」

杏華「それは当然よ、彼女の男嫌いは筋金入りと言えるわ。」

凛怜「…もしバレたら?」

ラミ「…その首が飛ぶね。それか、グローリーファミリーがそちらのファミリーの敵に回る…かな?」


それはとてつもなく面倒臭い…。

色々気になる事がある、別に俺と繋がりがある訳じゃないし…。


凛怜「…なるほどな、少し考えさせてくれ。返事の期限は?」

杏華「大体、1週間と言った所ね。」

凛怜「分かった。一葉。」

一葉「…了解、調べるんだね?」

凛怜「話が早くて助かるよ。お前ら時間は大丈夫か?」

ラミ「大丈夫だよ。」

杏華「私もよ。」

凛怜「なら、滞在していくといい、紅葉達と喋っててくれ。」

紅葉「…凛怜は?」

凛怜「俺は一葉と、調べ物だ。」

紅葉「わかったわ。」


凛怜「それじゃ、一葉、行くぞ。まぁゆっくりしてってな。」

一葉「了解。」

ラミ「わかったよ、ありがとうね。」

杏華「とっとと行きなさい。」

凛怜「はいはい。」


俺は一葉と一緒に部屋を出たのだった。





紅葉side


凛怜達が出て、少し気まづい空気が流れる。


しかし、沈黙を破ったのは瑠衣だった。


瑠衣「あの、少し聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」

杏華「何かしら?」

瑠衣「凛怜の2つ名の事なんだけど…。」

愛凛「あぁ、私も聞きたい、あの2つ名は初めて聞くものだ。」

杏華「あー、これって言っていいのかしら?」

ラミ「んー、どうなんだろう。」


2人は話していいものか悩んでいるようね。

まぁ本当に本人は嫌ってるからね…。


紅葉「いいんじゃないかしら?別にダメって言われてないわ。」

この子達になら、別に知っても問題はないと思い、そう助け舟を出す。



ラミ「そうだね、あの2つ名はね、凛怜が辞めてから、ぱったり聞かなくなったものでね。たしかに覚えてる人もいるけど、もう覚えているのはMIOの中でも少数なんじゃないかなぁ。」

愛凛「なるほどな、しかし、なんでそんな2つ名が?」



ラミ「そうだね、じゃあ説明しようか、あれは凛怜と紅葉ちゃんが入って、しばらく経った頃だよ。」


ラミは懐かしそうに話し始めた。


ラミ「あの頃の凛怜と紅葉ちゃんは、まったくと言っていいほど、人と話す事は無かったんだ。いつも無表情で何を考えてるかも分からない。話しかけても、命令以外は聞かない、ただ与えられた任務を忠実にこなすだけのマシンのようなものだったよ。私達も少し不気味だと感じていたんだ。」


あの頃は、一部を除いて、誰も信用してなかったからね。


ラミ「当時から、凛怜の強さは特務部隊の中でも抜きん出ていた、正に圧倒的という言葉が似合うくらいには…ね。これは紅葉も同じだったね。」


紅葉「そうね、凛怜程、とはいかなかったけどね。でも、当時からあなた達も強いじゃない?」

杏華「当時から、あなた達に勝った覚えないわよ!」

ラミ「あはは、そうだね。」

紅葉「そうだったかしら?」


ラミ「話を戻すよ、圧倒的強さに加えて、あの綺麗な容姿だ。当然、お近づきになりたい人達もいた。その人達を無視するものだから、ちょっかいをかける連中も出てきていたんだ。まぁ、それでも凛怜は無視し続けていたけどね、本当、当時から紅葉ちゃんしか見えてなかったんだろうねぇ。それでね、凛怜達がいる生活が慣れ始めた頃、MIO内で大きな事件が起きた。」

瑠衣「事件?」


ラミ「MIO内で、何者かが特務部隊の情報を横領しようとしたことが判明したんだ。それを私達が掴んで、秘密裏に始末しようとしたんだけど、私がヘマをしちゃってね?

私と一緒にいた杏華が捕らえられてしまったんだ。

しかも、捕まった相手は当時、最悪と言われていた過激派のファミリーの一つである、クロリデルファミリーという所でね、人の数も200人以上、流石の私達も死を覚悟したよ。」

それは私も知っている。

というか、私が1番悔しい思いをした事件の1つだ。


ラミ「でも、私達は死ななかった。多分察してはいると思うけど、凛怜が単独で私たちを助けに来たんだ。」

そう、その時、私は置いていかれた、本人からすれば危ないからだという理由だろうけど、それでも悔しかった。


ラミ「単独でファミリーの本拠地へ乗り込んで、ファミリーの全員を顔色一つ変えずに惨殺し、血に染まりながらも、殺し続けた。その結果、クロリデルファミリーは一夜にして、凛怜1人によって崩壊した。その光景を目の当たりにしたMIO職員が凛怜は血が通っていない冷徹な人だ、と言い出してね、最終的に銀髪の冷血姫なんていう2つ名が出来上がった訳。」


愛凛「なるほど、そんなことが…。」

杏華「あいつが、どうであれ、私達は命を救われたわ。本人はただの任務だと思っていたようだけどね。」


杏華はそう言っているが、私はある秘密を知っている。

凛怜は2人が捕まったと知った時、命令も聞かずに助けに行ったのだ。

当時の凛怜は凛怜なりに、2人の事を大切にしていた証拠だろう。


これは、私しか知らない事だけど、あの2人に言うつもりは毛頭ない。


凛怜に口止めされてはいないけど、ただえさえ、ライバルが多いのに、これ以上増やしたくもないからだ。


はぁ、本当にあなたって人は昔から困った人だわ…ほんと。



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