第25話 セーラの叫び


凛怜side


たく、アイツらも来てたのか。


凛怜「…紅葉。」ジトー

紅葉「な、何よ。勝手に付いてきたんだから、しょうがないでしょ?」


凛怜「凛と怜は、まぁ100歩譲って良いとして、エリス、お前はダメだろ…。」

エリス「何よ、贔屓?」


凛怜「ちげえよ、お前に何かあったら、どうすんだばか。」

不貞腐れるエリスにそう言うと。

エリス「あ、その、ごめんなさい…。」

急にしおらしくなる、調子狂うな。


凛怜「ま、まぁそのなんだ、それでも助けに来てくれてありがとうな。」

エリス「え、えぇ別に…。」


な、なんだか気まづい…。


紅葉「凛怜?私達もいる事、忘れてない?」

凛「凛怜にぃ?お礼言うの、理事長さんだけなの?」

怜「兄さん、最低…。」


な、なんだか、酷い言われようだな…。


凛怜「忘れてないから、お前らもありがとうな。」


紅葉「分かればいいのよ。」

凛「当然!」

怜「助けるの当たり前。」

3人とも、嬉しそうにそう返事を返す。


凛怜「セーラも、ありがとうな。」

セーラ「うん、でもまだ、あいつらが残ってる。」

凛怜「そうだな。」


俺たちは視線を震えているグリドールと教頭に視線を向けた。


凛怜「とりあえず、教頭さん。」

教頭「な、なんだ?」

凛怜「お前、俺と紅葉の生徒達の事を、私の学園には必要ないって言ってたようだが…。」

教頭「それがどうした!事実だろう!」

凛怜「なぜ、お前はそんなにも目の敵にする?」


教頭「簡単な話だ、化け物だからさ!存在価値も無い、暴れるだけの野蛮人!いや人ですらない!道具だ!そこのガキも同じだ!私たち人間様の言う事を聞いておけばいいんだ!それでしか価値を見い出せないお前たちなんぞ、くz「もう黙れ!」」ガハッズドーン



凛怜「てめえは生きてる価値すらねえ…。このクズが!」

この聞くに絶えない妄言に、俺は耐えきれなかった…。

セーラ「先生…。」


セーラside


教頭が言ってることに、私は聞くだけしかできなかった、私たちは学園に来る前まで、ずっとそんな環境で育ってきたのだから。

ずっと、大人にそう言われ続けてきた。

だから、何を言われても、ここは耐えるしかないと思ってた。

でも、凛怜先生は…。


凛怜「てめえは生きてる価値すらねえ…。このクズが!」

と、教頭を殴り飛ばし、その教頭は意識を失っていた。死んだのかどうかは分からないけれど、その時の凛怜先生の表情は怒りに満ち溢れていて、本気で私たちの事を思ってくれていると改めて、認識できるものだった。それが何よりも嬉しくて、さらに私の決意は堅くなった。


セーラ「先生、ここからは私にやらせてください。」

凛怜「…いいんだな?」

セーラ「はい、私がケリを付けたいんです。」

凛怜「…分かった。ただ、危なくなったら、俺が入るからな?」

セーラ「ありがとうございます。」


私の顔を見て、凛怜先生はすぐに納得してくれた、やはりいい先生だ。


凛怜「お前らも手を出すなよ。こっからはセーラのだ。」

紅葉「はいはい。」

エリス「はぁ、分かったわよ。」

凛「しょうがないね。」

怜「…分かった。」


皆もありがとうと、心の中で言い、私はグリドールの方へ身体を向ける。

そして…。


セーラ「夢魔化サキュバス。」

能力を発動させた。


セーラ「グリドール=アンセット!この姿に見覚えはあるか!」

グリ「な、なんだ貴様!」

セーラ「私は10年前、ワルムン研究所の地下で過ごしていた!」

グリ「10年前といえば父上に聞いた事があるだけだ!こっちは高い額を融資したが、使えないガキ共ばかりだったってな!地下にいたって事はさらに使えない失敗作だ、とも聞いた。それは貴様の事だったんだな、いい事を教えてやろう、貴様らはただの道具で、化け物だ!貴様らは誰にも受け入れられない存在なんだ!黙って、道具として役に立ち、そして死んだ方が世のためなんだよ!」


失敗作?私が…?

道具として死ぬ?こいつは…こいつは!

セーラ「うああぁぁぁぁぁぁ。」

グリ「」ゲボッ

私は頭に血が上り、グリドールを殴り続けた。

セーラ「お前たちのせいで!お前たちのせいで!」


私は泣きながら、感情のままに思いを吐き出した。

セーラ「勝手に攫っておいて、勝手に実験して私たちの身体をこんなにしておいて!道具だと?!私たちが何をした!あの暗い牢屋のような場所で絶望しか無かった場所でお前たちは何をした!」

グリ「や、やめ…」グフッ

セーラ「ゆるさない!ゆるさない!」

グリ「こんひゃこひょひて、ゆるひゃれると…(こんなことして、ゆるされると…)」ガハッ

セーラ「うるさい!うるさい!お前はころしてやる!」

私は一切攻撃を緩めなかった、緩めたくなかった、頭がどうにかなりそうだった。

グリ「ひ、ひぃぃぃ、た、たすけ…。」

セーラ「お前はそうやって言ってきた者たちをどう扱ってきた!私達のような人間を、ゴミのように捨て去ろうとするお前を許しはしない!しねぇぇぇぇぇぇぇ。」


そして私がおおきく振りかぶり、渾身の一撃をグリドールの顔に叩きつけようとした瞬間。


凛怜「もういいだろ、その手を汚すのは早い。」

凛怜先生が、私の振りかぶった腕を掴み止めさせたのだ。

セーラ「せん…せ…い。わたし…わたし…。」ウワァァァァァァァァァン

私は凛怜先生に抱きつき、泣いた。

凛怜「あぁ、良くやった、あとは任せろ。」

その言葉を聞き、更に泣いた。

それは悔しさからなのか、安堵からなのか分からなかったが、涙が溢れて止まらなかった。


グリ「…ふ、ふざけるな!この僕を殴っておいて、はいおわりですだと?貴様らは僕が殺してやる!」


そしてグリドールは懐から、瓶のようなものを取りだし、その中身を飲み込んだ…。












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