第22話 過去とトラウマ


セーラside


私は物心つく前から研究所の地下で監禁されていた。

そこは全部が黒い壁で、光なんて一切なく、まさに檻のような場所だった。

たまに来るのは研究員と一番偉そうな金髪の男だけだった。どの人も、とても気持ち悪い、身の毛もよだつようなそんな笑みを浮かべていた。

私は先天性の異常種らしく、珍しいタイプだったらしい。

私のこの能力は夢魔化、所謂、サキュバスと呼ばれる、悪魔の能力だと知ったのは、割とすぐだ。

私は制御が出来ず、皆を魅了してしまい、それが原因で殺し合いに発展したこともある。

私の身体目当てに近づいてきた人も少なからずいた。

躾という名の暴力、耐久力を測るためにひたすら拷問される日々。

頼れる人は誰もいない、私は奴隷のような、生活を送っていた。

希望も自由もないそんな生活が当たり前になり、汚い大人達に囲まれ、もう何もかもを諦めていた。


しかし、そんな生活は突如、終わりを告げた。

階段を降りる足音を聞き、いつもの足音じゃないことに気づいた。そして、顔を上げると…。


??「気配がするのかと思ったら、ここにもいたのか。大丈夫か?」

私は目を見開いた、その人は黒フードで顔を隠していたけど、目がとても綺麗な紅色をしていた。

暗い場所なのか、その血のような紅色が更に際立って、つい。


幼セーラ「綺麗な紅色…。」

そう呟いた。それが聞こえたのか、その人は。

??「ふふ、ありがとうな。さぁ、ここから出よう。」

と、言った、でも…。

幼セーラ「…私は出れないんです。能力が暴走してしまって、皆を不幸にしてしまうから…。」

そう言いながら、私は顔を下に向けた。

そうすると、、その人は私を急に抱きしめてきた。


幼セーラ「だ、だめです!私の能力であなたまで狂ってしまう!離して!」

私は慌てて、離そうとその人に言った、しかし…。


??「俺には効かねえから安心しな。」

そう言って、更に私を強く抱き締めてきた。

幼セーラ「…本当に?効いてない?私、出ていいの?」

??「あぁ、効いてないし、お前は今から幸せになる為に、出ていいんだ。」

その言葉は、私が望んでいた言葉だった。

今まで溜めていたものを吐き出すかのように、目から涙が溢れてくる。

??「それじゃ、出よっか。このまま抱っこしててやっから。離すなよ?」

幼セーラ「う゛ん!」

温かい…。そう思わせるほどその人は温かかった。

そして、外に出ると、私は初めて見た月の光に感動して、もっと泣いてしまった。

??「もう大丈夫だ。」

そう言って、背中をポンポンと叩いてくれて、

その温もりから、私は心地よい気持ちと共に意識を落とした…。


それから、気づいたら、施設のベッドで目が覚めて、あの人を探そうとしたけど、なんの力もない私は、あまりにもできることが少なすぎた。私はまず力を付けていこうと決心したのだ。


何年かの月日が流れ、新任の先生が来るなんて話を聞いた。

最初はどうせ同じだろうと思ったけど、戦った時のあの言葉。あの人だ!ようやく会えた!と喜んだ。


しかし、そんな喜びもあのグリドールという男が来た時から変わった。

あの研究所に来ていた金髪の男と、とてもよく似ていたのだ。

恐らく親族だろう、だけど、心臓を握りつぶされるようなそんな状態で生きた心地がしなかった。


私は凛怜先生に話した。

そして、一通り話すと凛怜先生は真剣に考えてくれていた。

そして、携帯の通知が鳴り、一旦外に出ると行ったきり、帰ってこない凛怜先生の様子を見に行こうと扉をあけた時、2名の知らない人達が私に。


「お前がセーラ=ストライドだな?一緒に来てもらおうか。」

と、言って、私を捕らえようと手を伸ばしてくる。

セーラ「あ、あ、い、嫌!」

私はパニックになり、能力を発動させてしまった。

「」ドサッ

「」ドサッ

2人の男達が私の能力で眠ってしまった事を見て、凛怜先生もやばいのかもしれないと思い、駆け出した。そして、見つけたのが凛怜先生の携帯だった。


私は助けを呼ぼうと、走った。向かうところは理事長室。そこなら絶対にいると信じて。

そして、着くと、ノックもせずには扉を開ける。

予想通り、紅葉先生と理事長、何故か分からないけど、セツナがそこにはいた。


セーラ「」ハァハァ

エリス「ど、どうしたの?そんなに慌てて。」

セーラ「り、りらせん…せいが連れ…て…行かれ…ました。助けてください!」

と、泣きながら懇願する私に。

エリス「そう…。本当に来たのね。紅葉、いつまでそうしているの?」

セーラ「なんで、そんなに冷静なんですか!」

セツナ「落ち着きなよ、セーラ。これが冷静だと思うかい?」

と、セツナは紅葉先生に視線を向けている、私も視線を向けると。


紅いオーラを纏った、紅葉先生がそこにはいた。

セツナ「少し前からこんな感じでね。まぁ無理もないけど、私も少し頭にきてるんだ。」

1番冷静だと思っていた、セツナもとても怒っている事が分かる。

紅葉先生が携帯を取り。どこかに連絡をし始め、終わると。


紅葉「行ってくるわ。」

と、言って部屋を出ていった。

私も慌てて、追いかけようとすると。

エリス「やめておきなさい。ここからは、紅葉達のひいては、私の領域よ。…と言っても、どうせあなたは行くんでしょ?これを持っていきなさいな。」


そう言って私に渡したのは携帯だった。

エリス「これで、凛怜の居場所は分かるわ。くれぐれも気をつけてね、ちゃんとケリを付けてきなさい。」


よく見ている人だと思った。

セーラ「すみません。」


私はそう一言告げて、私は走った、凛怜先生待っててください。と、そう思いながら。




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