白雪姫と混浴露天風呂

「まさか一緒に温泉に入ることになるとは……」


 豪華な晩ご飯を食べてしばらくした後、隆史は姫乃と一緒に露天風呂に入ることになった。


 本来、温泉などで身体にタオルを巻くのはマナー違反とされているが、他に人が来ることはないから問題ないだろう。


「私たちは新婚旅行に来ているんです。一緒に入るのは自然な事ですよ」


 当たり前のように言ってくる姫乃も恥ずかしいらしく、頬を赤くして「あう……」という声を漏らしている。


 確かに新婚旅行であれば一緒にお風呂に入るのは当たり前だが、あくまで体だし付き合ってもいないから少しは自重してほしい。


 この旅行で付き合うのは確定しているものの、エロいことに免疫があまりない隆史には刺激が強いのだ。


 恐らくはこれから付き合うことになって将来結婚するだろうから、姫乃としてはある程度慣れてほしいのだろう。


 結婚して子供を作るとなれば、必ずエロいことをしなければならないのだから。


 エロい視線を向けられるのが嫌いそうな姫乃は、好きな人にはそういった視線で見られても大丈夫らしい。


 話すようになって間もない頃に下着姿の姫乃を抱きしめたことはあっても、それはあくまで濡れて冷えた身体を温めるため。


 でも、今はさらに異性として意識してほしいがために、こうやって一緒にお風呂に入りたいのだろう。


「恐らくこの後にタカくんが自分の気持ちを伝えてくれると思うので、今日のは慰めてくれたお礼、ではありません。一緒に入るのは……私なりの覚悟、です」

「覚悟?」

「はい。旦那様は理性的で優しい方ですけど、一つだけ欠点があります」


 頬を赤くしながらも真面目な表情だ。


「その鋼のような理性で本能を抑えているせいで、一緒にいる私に魅力がないのかと思ってしまいます」


 確かに好きな人には魅力的に見られたいのだろう。


 鋼のような理性に安心を覚えていたかもしれないが、今となっては少し邪魔なようだ。


「いや、魅力はあるよ」

「そんなことは分かっています。でも、キスはしてくれても、それ以上のことはしてくれません。せっかくの新婚旅行、なのに……」


 姫乃の顔が少し悲しくなる。


 彼女の言う覚悟とは初めてを捧げる覚悟なのかもしれない。


 女性の初めては相当痛いと聞くし、好きな人相手でも覚悟がいるのだろう。


 肌を重ねるシーンを少し想像しただけでも身体が熱くなるのを感じる。


 まだ未経験なのだから当たり前だ。


「確かに旦那様の理性的なとこは魅力があります。女の子が安心して一緒にいれますから」


 確かに姫乃も安心してる部分があるから一緒にいたのだろう。


 でも、今はそれが不満でもあるようだ。


「だからって理性的過ぎるのもどうかと思いますよ」


 バスタオル姿の姫乃にギュっと抱きしめられた。


「とりあえず一緒に温泉入りましょう」

「あ、うん」


 軽く身体をお湯で流した後、隆史は姫乃に抱きしめられながら温泉に浸かる。


 白く濁った温泉は肩こりなどに効果がありそうだが、凄く密着されては気持ち良く温泉に浸かっている余裕はない。


「今日は旦那様の本能を出して差しあげますからね」


 理性が抑え込まれ、本当に本能が駆り出されそうなくらいの甘い声が耳元で聞こえた。


「私たちの関係はこの旅行で変化します。でも、旦那様は答えが分かっててもヘタレる時があるので、これは保険です」


 一ヶ月以上のも間、毎日一緒にいるからか、姫乃は隆史の性格がだいぶ分かっているらしい。


 いくらバスタオル越しとはいえ、こうも密着するのは恥ずかしいだろうが、それでも姫乃はどうしても変化が欲しいようだ。


 この変化は隆史にとっても嬉しいのは分かりきっているものの、やはり初めて好きと言うのは恥ずかしい。


 だけど、一度言ってしまえば次回からはその恥ずかしさは無くなる気がする。


 何度も何度も言えば特別感は無くなってしまうが、それでも一日一回は言ってあげたい。


「温泉上がったら、期待してますからね」


 そう言われてしまったため、恥ずかしさでせっかくの温泉をあまり満喫出来なかった。

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