白雪姫との朝は幸せだ
「んん……」
カーテンの隙間から漏れ出る朝日、鳥の鳴き声で隆史は目を覚ました。
自分の腕の中には最愛の人である姫乃が寝息をたてており、気持ちよさそうに寝ている。
有り得ないほどに整った顔に見惚れてしまい、恐らくは惚れてしまった補正もかかっているのだろう。
補正がかかっていなくても美少女なのには間違いないが、好きになってからさらに可愛い。
永遠に離れたくないほどに。
「幸せだな」
こうやって一緒に朝を迎えられるのは本当に幸せだし、いつまでも続いて欲しいと思う。
ただ、慰め合う関係がいつまで続くかが問題であり、姫乃から関係を終わりにしたいと言われたら終わる。
バカップルだと思われないといけないからすぐに終わるわけではないが、それでもいつかは終わりを迎えるだろう。
出来ることなら避けたいものの、仮染めの関係で終わりたくはない。
いつかはきちんと告白し、本当の彼氏彼女の関係になりたいからだ。
本物の恋人同士になる前提として一番避けなければならないのは、姫乃に好きな人が出来ることだろう。
もし、他の誰かを好きになってしまえば、その人に彼氏役を頼む可能性があるからだ。
一番信用していると言っていたので、可能性としては低いだろうが、それでも絶対に避けなければならない。
「タカくんは、私といれて幸せ、なのですか?」
「……え?」
どうやら目を覚ましたらしく、青い瞳がこちらを向く。
幸せ、というのを聞かれたため、隆史は恥ずかしさで身体が熱くなる。
一緒にいれて幸せ……つまりは告白のようなものだからだ。
「いつから起きて……」
「少し前ですよ」
聞かれた恥ずかしさで、隆史は「アガガガ……」と奇声を上げてしまう。
好きだから一緒にいれて幸せ、と言えればいいのだが、残念なことにそんな度胸はない。
もし、そんなのがあるのであれば、前に行った遊園地の観覧車で告白している。
「私といれて幸せなのですか? 知りたいです」
向けられている瞳には真剣さを感じたため、本当に知りたいようだ。
「幸せ、だよ。辛さがなくなっていくし」
これが答えられる精一杯だった。
告白なんて恥ずかしすぎるし、してもフラれるのがオチだからだ。
最初は慰め合うだけだったのに、今や一緒にいるのが当たり前になって幸せを感じている。
だから嘘ではない。
「嬉しい、です」
えへへ、と頬を少し赤らめて言ってくる姫乃は本当に可愛く、さらに抱きしめたくなる。
「でも、タカくんはまだ式部さんのことを……」
ボソボソ、と少し寂しそうな顔で何か呟いているが、小さくて聞こえなかった。
式部、という言葉はかろうじて聞き取れたので、もしかしたら麻里佳のことで何か思っているのかもしれない。
「タカくんが私といれて幸せを感じているのであれば、いつでも来てください。タカくんなら大歓迎ですから」
男心をくすぐるような台詞に押し倒したい衝動がでるも、流石にするわけにはいかなかった。
せっかく信用してくているのだし、襲いかかったら全て水の泡だ。
恥ずかしい気持ちはまだあるが、いつ理性が崩壊してもおかしくないのだし、嫌われないように我慢する。
襲われない信頼があるからこうして一緒にいてくれてるのだから。
「毎日一緒にいるかもよ?」
「構いません。むしろ嬉しい、です」
頬を赤くしながらそんなことを言われると惚れられてると勘違いしそうになるため、なるべく言わないでほしい。
言われて嬉しいが。
「もっとぎゅーってしてほしいです。私を安心させてください」
「わ、分かった」
最愛の人のおねだりで、さらに力を入れて抱きつく。
柔らかい感触に理性が一気に削られていくものの、好きな人からのおねだりだから止めない。
少しでも安心させてあげるのが隆史の役目なのだから。
「ありがとうございます。お礼、です。……んちゅ」
本当に幸せな朝だった。
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