誕生日デート ショッピング編
「映画面白かったな」
「そうですね」
映画を見終わった後、隆史と姫乃は駅前にあるショッピングモールを訪れていた。
恋愛映画もバカに出来なく、結局最後まで集中して見てしまった。
泣いてる人もいたため、かなり感動的な映画だ。
「しても何か俺たちと似てたな」
主人公は初恋の女の子にフラれ、ヒロインは虐めにあって落ち込んでいたところから慰め合って一緒にいるようになり、そこから恋に発展していく映画だった。
今の隆史たちの関係に似ていて、見ていてハッピーエンドを迎えられたらいいな、と思ったのは心に秘めておく。
「それを狙ってこの映画にしました、もん……意識してもらうために」
「ん?」
「いえ、何でもありません」
顔を真っ赤にさせているから何かあるのだろうが、話したくないようなことかもしれないので、問い詰めることはしない。
好きな人のことならもっと知りたい気持ちはあるものの、何でも聞くと嫌われてしまう恐れがあるからだ。
嫌われるのだけは絶対嫌なので、問い詰めることだけはしない。
「あの、行きたい所があるんですけど、いいですか?」
「もちろん」
☆ ☆ ☆
「ここは……」
姫乃に連れられて来た場所は、ショッピングモール内にあるアクセサリーショップだった。
アニメが好きな隆史には、こういったリア充が来そうな場所には縁がない。
客は明らかにカップルが多く、彼女が彼氏に指輪などをねだっているようだ。
もしかしたらアクセサリーショップに姫乃が欲しいと思っている物があるのかもしれない。
「その……甘えられればいいって言いましたけど、プレゼントをおねだりしても、いいですか?」
手を繋いでいる姫乃からの上目遣いのおねだりだ。
「何がいいの?」
誕生日プレゼントをおねだりされたら断るわけにはいかない。
それに元からプレゼントをあげる気でいたし、アクセサリーが欲しいならプレゼントする。
「タカくんとお揃いの、ペアリングが欲しい、です」
「はいぃぃぃ?」
今度は頬を真っ赤にした姫乃からのおねだり。
(ペアリングとは恋人同士が付けると噂されてるアレですかいにゃ?)
心の中で思った言葉の語尾がおかしくなってしまうくらいに動揺した。
ペアリングとは普通恋人同士で付ける物であって、慰め合う関係の隆史たちが付けるような代物ではない。
「わ、私たちは周りから付き合っていると思われているので、ペアリングは付けた方がいいと思いまして……」
「確かに」
クラスメイトからバカップルと言われまくっているため、ペアリングを付けた方がいいだろう。
それにバカップルの認知度が増せば姫乃を諦める男子がさらに増えるだろうし、そうなれば彼女を虐める女子は完全にいなくなる。
元々はプレゼントをねだるつもりはなかったのだろうが、映画で主人公がヒロインに指輪をプレゼントするシーンがあったから欲しくなったのかもしれない。
学校ではほぼ一緒にいるようにしているので、虐めはもうないのだが。
「だからおねだりしても、いいですか? 一緒の指輪を付けたい、です」
「分かった」
一緒の指輪を付けたら間違いなくさらにバカップルと言われて恥ずかしいものの、ペアリングを付けたい気持ちが強かった。
好きな人とのペアリングなんて最高に幸せだ。
「どれがいいんだろうか?」
指輪が売っているコーナーに行き、どんな物があるのか見た。
沢山の種類があり、同じ指輪でも男性向け、女子向けで微妙に色や形が違う。
「どれがいいの?」
姫乃の方を見て尋ねる。
誕生日と聞いてコンビニでお金を降ろしてきたから多少高くても大丈夫だ。
「タカくんに選んでほしいです」
「俺が? いいの?」
「はい。タカくんが選んだのが、欲しいので」
頬を赤らめて頷いた姫乃は本当に可愛く、いつまでも見ていたい。
ただ、今は指輪選びに集中しないといけないため、姫乃を見ずに売っている指輪を見る。
ペアリングを選ぶなんて初めてのことだから分からないが、好きな人のために良い物を選ばなければならない。
(そういえば昔お姉ちゃんに指輪買ったっけな)
姫乃の指輪を選んでいるのにも関わらず、以前に姉である香菜に指輪を買ったことを思い出す。
当時は小学生だったからここにあるような安くても数千円する指輪なんて買えなかったが、百円で買える指輪をプレゼントした。
今でも嬉しそうに受け取って付けてくれたのを鮮明に思い出す。
昔は本気で結婚したいと思っていたから婚約指輪のつもりだったが、香菜からしてみたら男避けの意味もあって付けていたのだろう。
既に高校一年生だった香菜に姉弟で結婚出来ないのは分かっていたはずだし、絹のような綺麗な長い黒髪に青い瞳、整った容姿のための相当モテたらしく、プレゼントされた指輪は男避けとして役にたっただろう。
日本人なのに青い瞳は東北出身の母親の遺伝で、東北の血があると稀に瞳が青くなるらしい。
隆史は父親と同じで茶色い瞳だが。
「どうしました?」
「いや、何でもないよ」
姉のことを思い出したなんて言うわけにもいかず、隆史は再び指輪選びに集中する。
「これなんてどうかな?」
一つのシルバーリングを指した。
安直かもしれないが、銀髪の姫乃にはやはりシルバーリングが似合うだろう。
「じゃあこれにします」
「いいの?」
「タカくんの選んでくれた物なので」
えへへ、と笑みを浮かべた姫乃は、店員に話しかけて指輪を試しに付けれるかお願いした。
「似合い、ますか?」
少し頬を赤くした姫乃は右手の薬指にシルバーリングを付けて聞いてくる。
「に、似合ってるよ」
薬指に付けられると勘違いしそうになるじゃん、と思いながらも答える。
基本的に恋人が付けるシルバーリングは薬指になるため、惚れられてるんじゃないかと勘違いしそうだ。
「ありがとう、ございます」
頬を真っ赤にさせた姫乃に指輪を買い、隆史も自分用に買った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。