白雪姫に甘噛み

「あ……タカ、くん」


 リビングのソファーに座りながら、隆史は姫乃の胸で慰めてもらっている。


 胸で慰めているからか、姫乃は甘い声を出した。


 先ほどまでいた麻里佳の影響で少し辛くなってしまい、慰めてもらいたくなったのだ。


 告白を断ったにも関わらずスキンシップが激しいため、一緒にいると辛い気持ちがある。


 だからこうして姫乃に慰めてもらう。


 ちなみに麻里佳は両親に呼び出されて自分の家に帰っていった。


 どうやら久しぶりに家族団欒で昼ご飯を食べたいとのことだ。


 いつもこの家でご飯を食べているし、たまにはいいのかもしれない。


「私と利害が一致する共存みたいな関係なので、いつでもこうしてください」


 胸に顔を埋めている状態で姫乃に頭を撫でられると、辛さが軽減される。


 胸に顔を埋めながら頭を撫でられるの好きかも、と思いながら姫乃にひたすら甘え、辛い気持ちを失くしていく。


「タカくんは甘えん坊ですね。式部さんがお姉ちゃんぶりたくなるの分かる気がします」

「そうかな?」

「はい。少し童顔なとこもあるかもしれませんが、こう雰囲気が……他の人にされたら嫌でも、タカくんなら大抵のことは許せそうです」


 ずっとこうしてていいですよ、と言ってきた姫乃は、本当にされてもいいかのような口ぶりだった。


 胸に顔を埋めているかは顔は見えないが、恥ずかしくて頬を赤くはしているだろう。


 照れてる姫乃を見てみたい気持ちはあるものの、胸に顔を埋めていたい複雑な気持ちだ。


 なので今は姫乃の胸を堪能して癒やされることにした。


 男からしたら女性の胸から離れることが出来ないのだから。


「本当にずっとこうされていたい……式部さんじゃなくて私に……」

「ん? 何が言った?」


 至近距離でも上手く聞き取れないほどに小声だった。


「いえ、な、何でもありませんよ」


 何か言ったのだから何でもないわけではないのだろうが、特に気にせず隆史は「そうか」と頷く。


 今はそんなことより自分が癒やされるのが優先であり、あまり気にしている場合ではない。


 この柔らかい胸がたまらないのだから。


☆ ☆ ☆


「ありがとう。助かった」


 しばらく慰めてもらった後、隆史は姫乃から離れた。


 何故か離れる際に「あ……」と寂しそうな声が聞こえた気がするが、長時間胸に顔を埋められるのも嫌だろう。


 こちらとしてはもっと癒やされたい気持ちはあるものの、胸に顔を埋めているのは恥ずかしさもあるから止めた。


 あくまで辛さがなくなったら慰め合いは一時終わり、というのが理想だろう。


 それに三十分以上のあいだ胸に顔を埋められていたからか、姫乃の顔は恥ずかしさで真っ赤になっている。


 でも、何故かどこか寂しげで、もう少ししててもいい、も思っていそうな雰囲気もあった。


「その……もっとタカくんに、甘えてほしい、です」


 髪の隙間から見える耳まで真っ赤にして瞼を閉じながら言ってきた姫乃は、もしかしたら母性本能が刺激されたのかもしれない。


 麻里佳の気持ちが分かるようなことを言っていたし、沢山甘えてほしくなったのだろう。


「でも……」


 甘えるのはやぶさかではないが、既にご飯を作ってもらったり沢山甘えさせてもらっている。


 共存関係といえど、これ以上甘えていいものか? と隆史は思う。


 お互いに辛い時に慰め合う関係なため、必要以上に甘えるべきではない。


 それにあまり甘えすぎると依存してしまう可能性があるし、しすぎるもの問題だ。


 あくまで隆史は麻里佳を諦めるために慰めさせてもらっている部分もあるので、甘えるのに依存することは望んでいない。


「私は大丈夫、ですから」


 頬を真っ赤に染めている姫乃は、恥ずかしさはあれど凄い甘えてほしいようだ。


「分かった」


 甘えてくれないと泣いちゃいます、みたいな悲しそうな顔をされたので、隆史は頷くだけしか出来なかった。


 姉のような幼馴染みがいたから甘えるのは嫌いじゃないが、出来ることなら甘えすぎるのは勘弁願いたい。


 そこそこ、の関係の方がお互いにとって都合が良いはずなのだから。


「じゃあ甘えるから」

「はい。え? ひゃあ……」


 甘えるのは胸に顔を埋めるだけじゃない、と教えるために、隆史は姫乃をソファーに押し倒す。


 付き合ってもいない女の子を押し倒すのは最低の行為かもしれないが、あまり慰め合い過ぎるのも問題だというのを教えなければならない。


 こうやって押し倒すのは初めてで物凄く恥ずかしいものの、男に心を許しすぎるのも危険と知らしめないといけないから仕方ないだろう。


 もちろんこのまま襲うわけではない。


「ひゃん……」


 いきなり押し倒されて服が若干乱れている姫乃の赤くなっている耳に甘噛みすると、彼女の口から甘い声が漏れた。


 心臓が張り裂けそうなくらい恥ずかしいが、隆史が甘噛みを止めること決してはない。


 もちろん本気で嫌がってきたら止めるつもりではあるものの、恥ずかしさを我慢しながら甘噛みを続ける。


 これまでしてことがない甘噛みも甘い声に理性がゴリゴリ、と削られていくが、何とか理性で抑え込む。


「タカ、くん……」


 もっとしてきてもいいかのように、姫乃は隆史の背中に腕を回してきたのだった。

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