服が乾くまで抱きしめて白雪姫の身体を温める
「身体は大丈夫ですけど、服が乾いてませんね」
身体を拭き終えた姫乃は、床に置いてある服を見る。
全身びしょ濡れになったためにもちろん服も濡れており、今びしょ濡れの服を着たらせっかく拭いたのに体温を下げてしまうだろう。
今日は春の暖かな日差しが差しているからしばらくすれば乾くが、それまで姫乃は服を着れないということになる。
ただ、いくら春の暖かな日差しがあるといえど、一度下がった体温を上げるには足りない。
その証拠に濡れていた時よりマシになっているとはいえ、未だに姫乃は身体を少し震えさせていた。
流石に下着姿の姫乃を直視は出来ないが、背中をピッタリとくっつけているから身体の震えが分かる。
「どうする? ジャージは鞄に入ってなかったしな」
今持っている鞄とは別のにジャージが入っているようで、それは教室にあるとのこと。
出来ることなら取りに行ってあげたいが、授業中の今教室に行ったら先生に何か言われるだろうし、そもそも姫乃の持ち物を持って行こうとしたら今後犯罪者のように扱われてしまうだろう。
「タカくんの、身体で、温めて、ください」
「はいぃぃぃぃ?」
背中をピッタリとくっつけながら手を繋いできた姫乃の言葉に、隆史はつい奇声をあげてしまった。
昨日のようにアルコール入りチョコを食べて酔った時に抱きしめてしまったのとは訳が違うし、今の姫乃は素肌がさらされているため、身体で温めるのは相当勇気がいることだ。
服を着ていようと勇気がいるのだが。
「タカくんには仲の良い幼馴染みがいますよね?」
「そうだな」
一応、面識というかお互いに名前と顔は分かっているようだが、クラスは一緒になったことがないから話したことないらしい。
「私に特定の男子がいると女子たちに思わせるには、タカくんが式部さん以上に、私と仲良くする必要があると思うんです」
「うっ……確かに」
姫乃の一言に反論出来なかった。
麻里佳は弟のように見ている隆史に手を繋いでくるし、それ以上仲良くしないと姫乃に特定の男子がいると思わせることが出来ないだろう。
付け入る隙がないと男子たちに思わせないと、一緒にいる意味がないのだから。
そうすることで女子たちの嫉妬を失くす作戦なのだ。
「その……イチャイチャする練習を兼ねて、私の身体を、温めてくれませんか?」
ただ、いくら身体を温める、イチャイチャする練習だといえど、姫乃にとっては相当恥ずかしいことだろう。
「今の私は、タカくんがいないと、多分学校に行けない、です……」
女子たちに虐められた姫乃は相当恐怖を覚えたらしく、声が若干震えていた。
恐らく青い瞳には怖くて涙が貯まっているだろう。
虐めによって不登校になる生徒がいたり、最悪自殺してしまう人がいるとたまにニュースで見る。
一人暮らししている姫乃には両親に頼ることが出来ないだろうし、近くにいる人が彼女を助けてあげる必要があるだろう。
今の姫乃は隆史に助けを求めている状態だ。
「分かった」
虐めを放っておくことは出来ないし、何より隆史自身は姫乃に助けられた。
素肌を晒している女の子を抱きしめるのは相当勇気がいるが、何より助けを求めている姫乃の想いを汲み取ってあげなければ男が廃る。
スーハー、と深呼吸をしてから百八十度回転すると、姫乃の白い背中が目に入った。
勝手に脳内で姫乃の下着姿が再生されてしまい鼻血が出そうな感覚に陥るも、何とか我慢をする。
「お、お願い、します」
くるり、とこちらを向いた姫乃の正面を見た隆史は、「ぐはぁ……」と精神的ダメージを負ってしまう。
アニメではお色気シーンとしてヒロインが裸に近いシーンがあったりすれど、現実で見たのは初めてだから恥ずかしさでダメージを負った。
流石にアニメの主人公みたいに鼻血が出ることはないが、美少女の下着姿は破壊力がある。
「じゃあ、抱きしめるね」
「は、はい」
髪の隙間から見える耳まで真っ赤にしている姫乃を優しくゆっくりと抱きしめた。
ワイシャツ越しに伝わってくる素肌の感触は華奢な体躯からは考えられないほど柔らかく、これが女の子の身体なんだな、と実感せずにはいられない。
「もっと強くじゃないと、身体が温まらない、です」
「もっと強くですと?」
今でも充分に刺激が強くて理性が削られているのに、これ以上はどうなってしまうか分からない。
流石に襲いかかるようなことは出来ないが、押し倒したい衝動に襲われる可能性はある。
「タカくんになら、大丈夫ですから。もっと強くお願い、します」
「うう……分かった」
彼女の言うように隆史は姫乃を強く抱きしめた。
普段だったら間違いなく断るが、今の姫乃は助けを求めている状態だから理性で本能を抑えて彼女の言う通りにする。
(ヤバい……)
強く抱きしめたことにより胸の感触がダイレクトに伝わってきて、思っていた以上に理性が削られていく。
恐らく姫乃はタカくんになら抱きしめられても襲われることはない、と思っているため、それを裏切るわけにはいかない。
せっかくの信用をぶち壊したら一緒にいれなくなるのだから。
そうなってしまえば姫乃は再び女子たちに虐められるだろう。
それだけは何としても避けなければいけないことだった。
「タカくんの身体、温かいです」
さらに体温を求めてくるかのように、姫乃は隆史の背中に自分の手を回してくる。
端から見たら下着姿の彼女が彼氏に甘えているように見えるかもしれないが、実際はそうではない。
恐怖に襲われている姫乃を慰める、身体を温めているのだから。
「タカくん、ありがとうございます」
お礼を言ってきた姫乃を、隆史は予鈴が鳴っても抱きしめていた。
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