第46話 功山寺決起 2
そこで俊輔が長府に戻ると、遊撃隊の隊長・石川小五郎が喜んで俊輔を迎えた。
「今夜、高杉が挙兵する。みんな高杉に同意するだろう。君も力士隊を率いているだろうから一緒にやろう!」
「ああ、やろう!」
俊輔と石川は盛り上がった。
石川は長州藩士で、俊輔が連れている力士隊と同じくかつて来島又兵衛が連れていた遊撃隊を率いていた。
そして、高杉が奇兵隊を中心とした諸隊の者たちを集め、
「今こそ、俗論党を討つ! ここで決起しなければ長州が滅んでしまう」
表向きは幕府派である俗論党の上層部は諸隊を
しかし、実際にはどうなるかわからない。
徐々に解散させられ、討幕派は力を失ってしまうかもしれない。
だからこそ、今こそ戦いの時だと高杉は思っていた。
「全ての部隊で一気に
高杉は諸隊の者たちを
「……」
高杉が作った奇兵隊は、その
赤禰は再び藩の上層部と交渉に行っており、今、総督のすぐ下の地位にある軍監の山縣が動くと言えば、奇兵隊は動いた。
まず奇兵隊が賛同してくれると高杉は期待したかもしれないが、山縣は高杉の目を見ず、ぼそぼそと言った。
「赤根さんが藩の上層部と交渉をして、うまくまとまりかけてるんです。どうなるかわからない内に決起などをするのは時期が早すぎるかと……」
山縣は出来ませんとは言わなかった。
だが、遠回しに協力したくない雰囲気を出した。
このあたりは山縣らしい言い方で、ハッキリとは言わない。
山縣は高杉に比べると、身分が低く、幕府に危険とまではみなされていなかった。
高杉はそれとは逆に長州藩の代表とも入れる目立つ存在で、その命さえも危険な状況だった。
長州藩の中でも、藩が幕府・反幕府どちらかに傾くと、反対勢力の目立つ人物は切腹させられたり、政治から追い出されていた。
今の高杉は、藩政府に捕まったら、首を斬られて、その首を幕府にお詫びとして差し出される可能性があった。
しかし、山縣はそうではない。
このまま赤禰の藩上層部との交渉がうまくいけば、せっかく手に入れた奇兵隊軍監という地位も失わずに済む。
積極的に高杉に死んでほしいわけではないが、さりとて自分の命と地位をかけてまで、高杉の決起に乗ろうとはしなかった。
俊輔はそんな山縣の態度に静かに怒っていた。
(こんなときに
日和見とは状況のなりゆきを見守って自分がどうするかを決めないことである。
このまま決起しなければ高杉は殺されるかもしれない。
藩政府と話がまとまれば、確かに山縣や俊輔のような身分の低い者は見逃してもらえるだろう。
俊輔は今や小さいながらも力士隊という隊を率いる隊長であり、その小さな地位も保てるかもしれない。
でも、俊輔はそれを望まなかった。
小さな地位を保つために、これまで引き立ててくれた高杉を裏切る気持ちにはなれなかった。
「高杉さん!」
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