第4話 悩ませる矛盾

「アリシア!」


 エドはアリシアの家のドアをこじ開け、アリシアのいる部屋に入り込んだ。アリシア同様にエド自身も額に汗を垂らしていた。すでに気づいていたのだ。アリシアが【モルポーション】を使用していたことに。家に入る前に感づいたエドは【嗅覚Ⅱ】を使ったのだ。そして、いやな予感は的中した。


「え、エド・・・?」


 地べたには大量のモルポーションの空瓶。その上にアリシアは座り、モルポーションを摂取していた。


「飲んじゃダメだ!」


 エドは声を荒げ、アリシアの持っていた飲みかけの瓶をはたき、地面へとたたきつけた。しかし、アリシアは転がった瓶を震える手で再びつかみ、そして、こぼれた液体に舌を伸ばした。


【醜い】


 エドはそう思った。そして、【矛盾】が生じたのだ。


 アリシアは美しい。


 アリシアは醜い行為を行っている。


 混乱した。そして、液体を飲むアリシアを見て、その矛盾についての回答を得た。


「僕が変えてしまったのか」


「何を言ってるの・・・?」


 アリシアの瞳を見ると焦点があっていなかった。完全なる中毒者だった。エドは再び矛盾に襲われた。


 自身の作った物は完璧だった。


 自身の作った物は完璧なものではなかった。


 様々な感情がエドを襲った。しかし、それを整理できるほどその魂は完全なものではなかった。


 失敗した。その一言だった。




「最低!」


「こんなものの上で村が成り立っていたと思うと寒気がするわ!」


「悪魔よ!この男!」


 村の犯罪者が収容される場所にエドはいた。犯罪者として捕まっているのだ。その中で自身に対して放たれた言葉がエドを襲い続けた。


「私たちは何を作っているかなんて知らなかった!」


「わ、私もただの薬かと・・・」


 グリスにも裏切られ村の標的はエドたった一人だった。そして、エド自身一番悩まされたのはマールの言葉だった。


「私は悪魔の子を産んでしまった」


様々な感情、矛盾。抱えきれないこの何とも言えない重み。エドはある言葉に似ていると考えた。


【痛み】


 その言葉だった。肉体的な感覚ではない。精神的な感覚だ。まるで体の中心部がえぐられるような感覚。



 その後、エドは村の収容所にて人生を送った。しかし、寿命を全うすることはなかった。


死因は飢餓だった。



【矛盾】



 死に際に再びエドを襲ったものだ。優しさだけでは生きていけない。しかし、狡猾になればなるほど周りからさげすまされる。


「なら、どうすればいい」


 エドには正解が分からなかった。


 村に収入は亡くなり、のちに大規模な飢餓に襲われたのだ。そして、歴史からその村は消えた。


 人間は複雑だ。そして、脆い。


 いや、私が無知なだけかもしれない


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輪廻転生~その魂、下界を巡る~ @watanukimakoto

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